高木豊の助っ人通信簿 パ・リーグ編

(セ・リーグ編;「◎」「×」と評価されたチームは?>>)

 高木豊氏に聞く助っ人通信簿のパ・リーグ編。セ・リーグ編と同じく、外国人選手の評価をチームごとに4段階【◎、〇、△、×】で評価した。

(※)成績は6月16日時点。一軍での出場がない選手、出場試合数が少ない選手に対してのコメントは省略(成績のみ掲載)しているが、評価の対象。育成選手は評価の対象外。


高木氏が働きを高く評価したオリックスのマチャド photo by Sankei Visual

◆ソフトバンク【野手×/投手◎】

「巨人からトレードで加入した野手の(アダム・)ウォーカーは、オープン戦は◎でしたが、パ・リーグのピッチャーの攻め方やタイプなどに戸惑ったのかもしれません。打つ専門のDHで長打を期待されていながら、66打席で1本塁打は期待外れです。オープン戦の出来から考えると、もう少しやると思いましたけどね。

 先発の(カーター・)スチュワートは投げているボールはすごくいいのですが、コントロールが難点。防御率も2.09といいのですが、なかなか打線とかみ合わずにいまだ1勝と苦しいですね。今季から先発に転向した(リバン・)モイネロも、もっと勝っていてもおかしくない(4勝2敗)。球種が多彩で緩急も使えますし、毎試合安定的に7回は投げてくれますから、先発としての役割は十分に果たしています。ただ、モイネロの時も打線があまり打てていない印象です。

 抑えの(ロベルト・)オスナはシーズン序盤に失敗が多かったですが、最近はセーブ成功が続いていて、本来の調子が戻ってきている印象です。ただ、今季のオスナは三振が取れていないので、相手バッターからするとつけ入る隙があるのかなと。信頼できる抑えであることは間違いないですけどね。

 中継ぎの(ダーウィンゾン・)ヘルナンデスは6月2日の広島戦で初失点を喫しましたが、毎回いいピッチングをしているので責められません。球の力がありますし、サイドハンドからのクロスファイヤーがかなり効いています。今やソフトバンクのリリーフに欠かせない存在ですね」

<評価対象となった助っ人の成績>

(野)ウォーカー 20試合 打率.169 1本塁打 3打点 出塁率.182 OPS.443

(投)モイネロ 11試合 4勝2敗 防御率1.54 QS率90.9

(投)スチュワート 7試合 1勝2敗 防御率2.09 QS率42.9

(投)オスナ 26試合 0勝2敗 4ホールド18セーブ 防御率2.49

(投)ヘルナンデス 17試合 2勝0敗 5ホールド0セーブ 防御率2.12

◆日本ハム【野手△/投手△】

「野手の(アリエル・)マルティネスは春先は状態が悪かったですが、劇的な一打を打つことも多いですよね。打率はそこまで高くないのですが、ここぞという時の一打に期待して4番での起用が続いているんでしょう。昨季よりも打席での迫力というか、怖さみたいなものも感じますし、これから調子は上がっていくと思います。

(アンドリュー・)スティーブンソンは、真面目で日本の野球を素直に受け入れようとする気持ちを感じていましたし、ファームでは打ちまくっていたので期待していましたが......苦労していますね。(フランミル・)レイエスはパワーはすさまじいのですが、欠点を露呈しています。速い球に苦労するようでは、助っ人として魅力を感じません。ヤクルトなどで活躍した(ウラディミール・)バレンティンみたいになる要素もあるのかなと思いましたが、柔軟性が違いますね。

 リリーフの(パトリック・)マーフィーは安定しています。今季の日本ハムの躍進の理由としてリリーフの安定感も欠かせませんが、河野竜生や杉浦稔大、田中正義らとともにブルペンを支えてくれています。カーブが武器でバッターに対して意識づけができていますよね。

(アニュラス・)ザバラは160kmの真っすぐが魅力ですが、少々荒れ球なのが気がかりです。ただ、守護神の田中もシーズンを通してみれば不調な時期はありますし、抑えを何人かで回すのであれば有力な候補でしょうね」

<評価対象となった助っ人の成績>

(野)マルティネス 61試合 打率.262 7本塁打 32打点 出塁率.335
OPS.792

(New/野)レイエス 28試合 打率.203 2本塁打 3打点 出塁率.284 OPS.601

(New/野)スティーブンソン 20試合 打率.169 0本塁打 0打点 出塁率.183 OPS.383

(投)マーフィー 25試合 1勝1敗 9ホールド0セーブ 防御率1.80

(投)ロドリゲス 10試合 1勝1敗 3ホールド0セーブ 防御率2.08

(投)ザバラ 7試合 0勝0敗 1ホールド1セーブ 防御率0.00

(投)バーヘイゲン 現段階で一軍での出場なし

◆ロッテ【野手〇/投手〇】

「(ネフタリ・)ソトは打率こそ高くないものの、一日一善という感じで勝負どころで打点を稼いでいます。彼にしてみればホームランがまだ少ないですが、慣れないパ・リーグのピッチャー相手によくやっていると思います。今後慣れてくれば、もっと打てるはずです。

 一方の(グレゴリー・)ポランコは物足りない。昨季のホームラン王ですし、期待値が高いだけにもう少し打ってくれないと困りますね。主軸としては打点が少ないですし、今は湿っている花火のような感じ。ただ、過去のシーズンでも、調子がいい時は打ち続ける傾向があるので、今後にホームランと打点が増えるといいですね。

 投げるほうでは、先発の(C.C.)メルセデスが◎です。11試合に先発して防御率はリーグトップの1.43。昨季よりも制球がいいですし、ストライクを取るのに苦労していません。ただ、この成績で2勝しかできていないのはつらいですね。勝ちをつけていってあげないと、「今日も打ってくれないのか」と気持ちが持たなくなって崩れてしまうかもしれません。

 今季から加入した(ジェームス・)ダイクストラは、コントロールが少々不安ですが球に力がありますし、スライダーもなかなかいい。ただ、まだ起用法がはっきりしていない感じですね」

<評価対象となった助っ人の成績>

(野)ソト 59試合 打率.257 6本塁打 36打点 出塁率.311 OPS.705

(野)ポランコ 55試合 打率.246 7本塁打 19打点 出塁率.317 OPS.727

(New/投)ダイクストラ 3試合 1勝0敗 防御率1.64 QS率0.0

(投)メルセデス 11試合 2勝2敗 防御率1.43 QS率81.8

(New/投)フェルナンデス 現段階で一軍での出場なし

(New/投)コルデロ 現段階で一軍での出場なし

◆楽天【野手×/投手△】

「野手の(マイケル・)フランコはファームにいる期間が長かったですね。一軍に上がってからはクリーンナップで起用されていますが、やはり長打に期待しているからだと思います。(6月12日の)巨人戦では初回の3ランで期待に応えましたね。左バッターの多い楽天では貴重な右バッターですし、当たりが出始めれば大きい。昨季の経験で日本のピッチャーに多少なりとも慣れている部分はあると思いますし、今後に期待です。

 先発の(コディ・)ポンセは、チームが苦しい時に長いイニングを投げて助けたりもするのですが、やられる時があっさりしている。あと、今季は大量失点が目立ちます。力のある真っすぐで三振を量産する時もあるんですけどね。バッテリーとしての攻め方なのか、コンディションなのか、何かが変われば抑えられるピッチャーだと思います。

(ニック・)ターリーは戦列に復帰してから安定しています。広島時代に実績がありますし、中継ぎにターリーがいるのは心強い。楽天は交流戦で初優勝しましたが、ターリーら中継ぎ陣が踏ん張っていることも大きいです。宋家豪は、チームで一番投げていますし(26登板)、防御率も1点台(1.48)。リリーフ陣で一番頼りになる存在ですよね。経験値は十分で安心して任せられます」

<評価対象となった助っ人の成績>

(野)フランコ 19試合 打率.246 2本塁打 7打点 出塁率.270 OPS.647

(投)ポンセ 10試合 3勝4敗 防御率6.50 QS率40.0

(投)宋家豪 26試合 1勝2敗 16ホールド0セーブ 防御率1.48

(投)ターリー 7試合 0勝1敗 2ホールド0セーブ 防御率3.86

◆オリックス【野手△/投手◎】

「昨年に加入した野手の(マーウィン・)ゴンザレスは日本の野球に慣れてきて、今季は特に打撃面で期待していたのですが、いまひとつですね。スイッチヒッターではありますが、左打席の打率がよくないので、右ピッチャーでも右打席に入っていいんじゃないかと。複数ポジションが守れるなど守備力は高いので、いてくれると有難いプレーヤーなんですけどね......。

(レアンドロ・)セデーニョは一発が魅力ですし出だしはよかったのですが、まったく打てなくなりましたね。それとファーストの守備が不安です。ただ、今季から加入した(アンダーソン・)エスピノーザとは母国が同じベネズエラで、いろいろと面倒を見ているようなので、表に出ない部分での貢献もあるかなと。ファームで調子を上げているようなので、今後は打線の起爆剤として期待したいところです。

 先発のエスピノーザは6月12日の阪神戦が久しぶりの勝利でしたが、防御率もいいですし及第点です。ピッチャーの生命線であるコントロールがいいですし、低めに丁寧に投げるピッチャー。セデーニョがチームに溶け込みやすい雰囲気を作ってくれたのもプラスになったはずです。チームが苦しかった春先にふたりが頑張っていた印象があります。

 先発では(ルイス・)カスティーヨも及第点です。手足が長いですし、サイド気味から投げてくる横の変化は厄介ですよね。打線が打てずに勝ち星に恵まれていませんが、打線もつながるようになってきましたし、復帰後は白星が先行していけばなと。

 リリーフでは、6月16日のヤクルト戦こそ3失点で負け投手になったものの、(アンドレス・)マチャドがいいですね。最初からなぜ抑えで使わなかったのか疑問だったのですが、ここ最近は抑えで起用されてチームも勝てています。平野佳寿は実績十分ですが、昨季から不安定でしたし、抑えは平野にこだわらなくてもいいと思います。ソフトバンクのオスナに匹敵する抑えだと思います」

<評価対象となった助っ人の成績>

(野)セデーニョ 42試合 打率.234 7本塁打 19打点 出塁率.316  OPS.735

(野)ゴンザレス 20試合 打率.145 1本塁打 2打点 出塁率.190 OPS.390

(New/野)トーマス 現段階で一軍での出場なし

(New/投)エスピノーザ 10試合 5勝3敗 防御率1.98 QS率80.0

(投)カスティーヨ 8試合 1勝3敗 防御率3.04 QS率75.0

(New/投)マチャド 25試合 2勝2敗 11ホールド7セーブ 防御率2.45

◆西武【野手×/投手△】

「野手の(ヘスス・)アギラーは調子が一時的によかった時期もありますが、結局はダメでしたね。アジャストしてきた部分もあるでしょうが、彼に軽打の右打ちは求めていません。チームとしてはホームランを打ってほしいですから、2本塁打では物足らないでしょう。(フランチー・)コルデロもハマればすごい当たりを打つのですが、なかなかボールに当たりませんし穴が多い。あれでは日本の一軍のピッチャー相手に打つのは厳しいです。

 先発のボー・タカハシは、球の力はあるのですが、球数が増えて疲れが出てくると打たれる傾向があります。あまり長いイニングを投げられるイメージがありません。チーム事情で先発なのかもしれませんが、昨季はリリーフでしたし、再度リリーフで試してもいいのかなと。

 中継ぎの(ジェフリー・)ヤンはスライダーがよくて奪三振率も高いですし、もっと活躍できると思います。今はチームがこういう状況ですが、勝ちパターンの展開や火消しの役目を任せても面白いかもしれません。

 守護神でも起用される(アルバート・)アブレイユは、自分の気持ちが乗っている時はいいのですが、そうでない時はピッチングに表われるんです。マウンドでイライラしている時はいい結果が出ていない気がします。球に力がありますし、もう少し三振を取れるかなと見ていましたが、日本のバッターはなかなか空振りしませんし、苦労していますね」

<評価対象となった助っ人の成績>

(New/野)アギラー 30試合 打率.204 2本塁打 10打点 出塁率.274 OPS.575

(New/野)コルデロ 20試合 打率.141 1本塁打 4打点 出塁率.164 OPS.383

(投)ボー・タカハシ 7試合 1勝5敗 防御率3.55 QS率14.3

(New/投)アブレイユ 25試合 1勝4敗 6ホールド11セーブ 防御率3.22

(New/投)ヤン 15試合 0勝0敗 0ホールド0セーブ 防御率5.25

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。