「骨肉腫」とは?症状・原因・治療についても解説【医師が監修】

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日本人がかかりやすい病気として知られるがんは、幼い子どもも発症するリスクを抱えています。子どもが罹患する悪性腫瘍の総称が小児がんです。

大切な子どもが病気で苦しむのを見過ごさないためには、ご家族が病気の症状・種類を知っておくことが大切です。

この記事では小児がんの末期症状を解説します。子どももご家族も前向きに療養するためのポイントも取り上げているので、参考にしてみてください。

≫「白血病の初期症状」はご存知ですか?大人・子供それぞれの初期症状も医師が解説!

監修医師:
山田 克彦(佐世保中央病院)

大分医科大学(現・大分大学)医学部卒業。現在は「佐世保中央病院」勤務。専門は小児科一般、小児循環器、小児肥満、小児内分泌、動機づけ面接。日本小児科学会専門医・指導医、日本循環器学会専門医。

小児がんとは?

小児がんとは、0~14歳までの小児期にあたる子どもが罹患するがん(悪性腫瘍)の総称です。
毎年、小児期の人口約1,400~1,500万人のうち2,000人以上が小児がんと診断されています。
成人がんの1%程度と極めて稀ですが、1歳以上の小児死亡原因として不慮の事故に次いで多く、軽視できない疾患です。
小児がんは、細胞から個体への発生過程で偶然起こる異常に起因しています。一般的に進行が早く、早期から転移しやすいのが特徴です。
環境・生活習慣に起因する成人がんとは異なり、どの子どもも突然発症する可能性があります。

小児がんの末期症状

小児がんの症状には目立つものが少なく、初期は無症状か風邪に似た症状であるケースが多い傾向にあります。
その後は腫瘍の発生臓器・部位によっても異なりますが、固形腫瘍の場合は何らかの違和感を覚えたり、腫瘍そのものや圧迫による疼痛を訴えたりするでしょう。
腫瘍が大きくなると場所によっては触ると硬いしこりを感じ、胃腸が圧迫されて嘔吐を繰り返します。
多くの悪性腫瘍では体重が減少し、顔色が悪くなりやすいです。末期まで進行するとひどい痛みや食欲不振・疲労感・息切れなどが顕著になり、げっそりと消耗してしまいます。
どの症状も初期は単なる体調不良に思えるため、見過ごされやすく末期まで放置されてしまうこともしばしばあります。
体調不良が治らず悪化していると感じたら、医師の診察を受けましょう。
稀ではあっても小児がんを患っている可能性がありますし、小児がん以外にもいろいろと重い病気はあるためです。
手遅れになる前に治療を始めるために子どもの訴えにしっかりと耳を傾け、なるべく早く医療機関を受診してください。

小児がんの主な種類

小児がんにはさまざまながんが含まれるため、それぞれの疾患で特徴が異なります。
小児がんを正しく理解するために、代表的な6種類の疾患をご紹介します。

白血病

小児がん患者さんの約3分の1を占めるのが白血病です。白血病とは造血細胞が異常に増殖してがん化し、正常な血中細胞が造られなくなる血液のがんを指します。
白血病はリンパ性と骨髄性に分類されますが、小児全体で急性リンパ性白血病の発症率が高いです。
一方、急性骨髄性白血病は小児期では乳児期に特に多く、その後減少するものの10歳を境に再び増加していきます。

脳腫瘍

白血病に次いで多いのが脳腫瘍です。小児では脳幹・小脳・第四脳室など、後頭蓋窩に多く発生するのが特徴です。
腫瘍が脳組織に影響を与え、術前・術後に限らず意識障害・認知機能の低下などがみられます。
それまでの健康診断では異常がないのに、突然発達遅滞が生じたり退行現象がみられたりしたことから発覚するケースもあります。

リンパ腫

リンパ腫は身体の免疫機能を担うリンパ組織から発生するがんです。
リンパ腫は主にホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫の2つに分けられますが、小児期では非ホジキンリンパ腫が多くを占めています。
初発部位として頸部をはじめとするリンパ節のほか、縦隔・腹部の発生頻度が高いです。
また、小児の悪性リンパ腫は特に発育が早く全身転移を起こしやすいです。

神経芽腫

神経芽腫は神経組織にできるがんであり、腎臓の上にある副腎あるいは背骨周辺にある交感神経節に多く発症します。
出生時から幼児期にかけて罹患し、加齢とともに罹患率が減少していきます。なお、疾患名に芽腫とつく腫瘍は小児特有のもので、成人では発症しません。
神経芽腫の症例は多岐にわたり、無治療で経過観察が可能なものから遠隔転移をきたすものまでさまざまです。

胚細胞腫瘍

胚細胞腫瘍とは、胎児期の原始胚細胞(原始生殖細胞)が胚細胞に成長するまでの間に発生する腫瘍の総称です。
精巣・卵巣などの性腺由来のものか、性腺外由来のものに分類されます。
性腺外由来で多くみられる仙尾部奇形腫はほとんどが良性腫瘍ですが、悪性転化するリスクもあります。
また、晩期合併症として排便・排尿障害または下肢の運動障害が起こりやすいため、注意が必要です。

骨肉腫

骨肉腫は10代に好発する骨の悪性腫瘍です。骨を形成する骨芽細胞が悪性変化した腫瘍であり、腫瘍内部に骨を形成する特徴があります。
好発部位は、主に大腿骨下端・脛骨上端など膝関節周辺の骨です。初期症状は運動時の疼痛で、筋肉痛と誤解されて放置されやすい疾患です。

小児がんの療養について

治療成績の飛躍的向上により、近年では小児がん患者さんの約70%が長期生存し治癒が望めるようになっています。
そのため、患者さんとそのご家族のQOL(生活の質)を維持・向上させることを目的とした、包括的な療養が重要です。
患者さんをサポートするご家族に知っておいてほしいポイントを、4つの分野から解説します。

本人への伝え方

病気の治療で重要なのは、患者さん本人が治したいという自覚を持つことです。
幼少の患者さんに伝える場合、具体的な病名は告げないとしても起こっている病態をはっきりと説明すれば、治療の意味が理解しやすくなるでしょう。
また、小学校高学年以降の患者さんにはまず病態の説明を行い、経過中に本人が知りたい素振りを見せた場合に告知を行う方法が取られます。
過度に不安を煽ったり楽観視させようとしたりするなら、子どもを混乱させてしまいます。
正直に伝えるようにしましょう。いつどのように伝えるかに関しては、ご家族・医療チームとの間でよくコミュニケーションを取って決定します。

関わり方

子どもが病気になると特別扱いをしたくなるのは当然の傾向です。しかし、なるべく普段通りに接するように心がけましょう。
小児がんになってこれまでと生活が一変することで、子どもは心身ともに余裕がなくなると考えられます。
そうした状況で家族が普段通りに接してくれると安心できます。そして子どもの気持ちを大切にし、よく話を聞いてあげてください。

入院生活

入院中も着替え・身の回りの整理整頓など、子どもが自分でできることは自分で行ってもらいましょう。
薬物療法・放射線治療は大人でも身体への負担が大きく、思い通りに身体を動かせないことがあります。
できることまで奪ってしまうと、やる気を失わせかねません。子どもの主体性を尊重しつつ、無理のない範囲で行動できるよう助けましょう。
また、身体に負担とならない程度に遊んでリフレッシュできるようにしてあげることも重要です。

緩和ケア

緩和ケアは患者さんが病気・治療によって感じる身体的または精神的苦痛を和らげ、QOLを向上させるために行われます。
特に重視されるのは疼痛管理です。子どもの場合、年齢・発達段階で痛みに対する認知の仕方が異なるため、患者さんが抱えている痛みの程度をよく把握する必要があります。
そして薬物療法を行うか、もしくはマッサージをしたり温めたりする非薬物療法を取り入れてケアしていきます。

小児がんの末期症状についてよくある質問

ここまで小児がんの末期症状・種類・療養などを紹介しました。ここでは「小児がんの末期症状」に関するよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

小児がんをなるべく早く発見するポイントを教えてください。

山田 克彦 医師

小児がん患者さんのほとんどは、何らかの症状があり病院を受診された際に診断されています。つまり、子どもの体調変化に敏感であることが重要です。例えば発熱が続いている、身体を触るとしこりを感じる、痛み・吐き気を訴えることが多いなどの症状がみられる場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。いつもと違うという気付きが早期発見のポイントです。

小児がんのなかには末期にならないと症状が出にくいものもありますか?

山田 克彦 医師

小児がんは発症する部位が多岐にわたるため、部位によっては末期になってようやく症状が明確になることもあります。そのなかでも神経芽腫は、初期段階ではほぼ無症状の疾患です。周囲の組織を圧迫するまでに腫瘍が大きくならないと症状は出にくく、発見が遅れやすいといえます。

編集部まとめ

この記事では小児がんの末期症状をはじめ、疾患の種類・療養のポイントを解説しました。小児がんに対処するには、ご家族のサポートが欠かせません。

異変にすぐ気付けるように、日頃から子どもと接する時間を十分に取ることが大切です。療養中も子どもがリラックスして治療に臨める雰囲気を作りましょう。

また、異変を感じたときにすぐ相談できるかかりつけ医の存在は助けになります。医師とよいコミュニケーションを取りながら、家族で治療に取り組んでください。

小児がんと関連する病気

「小児がん」と関連する病気は6個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

白血病脳腫瘍

リンパ腫

神経芽腫

胚細胞腫瘍

骨肉腫

小児がんには上記のような疾患が含まれます。どれもがん細胞の増殖スピードが速く、気付いたときには、すでに末期というケースも少なくありません。ご自身の子どもも発症リスクがあることを念頭に置いておきましょう。

小児がんと関連する症状

「小児がん」と関連する症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

発熱

しこり

疼痛

吐き気・嘔吐

体重減少

初期段階ではこれらの症状が出たとしてもとても軽度であり、一時的な体調不良と思われがちです。症状が長引いている、または異変を感じる場合は早めの受診を心がけてください。

参考文献

小児がんの患者数(がん統計)(国立がん研究センター)

リンパ腫〈小児〉について(国立がん研究センター)