プレミアリーグベストイレブン 林陵平が選んだ「お値段以上」「全盛期を上回った」選手は?
林陵平のフットボールゼミ
人気解説者の林陵平氏が「最高に面白かった」と語る、2023−24シーズンのイングランド・プレミアリーグ。そのなかから「輝きを放っていた」というベストイレブンを選んでもらった。
プレミアリーグで今季得点ランク2位のパーマー(左)と4位のフォーデン(右) photo by Getty Images
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――では、まずベストイレブンのGKからお願いします。
GKはトッテナムのグリエルモ・ヴィカーリオです。今シーズン、セリエA(エンポリ)からプレミアリーグという違った環境にやってきて難しかったと思うんですけど、スパーズの最初の躍進を支えたGKです。
終盤では少し調子を落とすところもありましたけど、シーズンを通してビッグセーブが多かった。チームが勝つために「耐え時だな」というところで、見事なシュートストップが多かった印象です。反応が速いですし、手足の長さも特長ですよね。
――GKの次はDFラインです。何名選ばれましたか?
DFラインは3名です。
――では、ひとり目は?
アーセナルのガブリエウ・マガリャンイスです。いや、とにかく本当にすごかったですね。
アーセナルはシーズン最初は失点が多かったんですけど、そこからチームを支えました。対人能力、ラインコントロール、気迫、すべてがすばらしかったです。
――続きまして、DFふたり目は?
リバプールのフィルジル・ファン・ダイクですね。今シーズンは全盛期を上回るような、インパクトのあるゲームがありました。チームのなかで輝きを放っていたひとりだと思います。
――DFライン3人目は?
アーセナルのウィリアン・サリバです。アーセナルは結局リーグ最少失点で、サリバとガブリエウのふたりのコンビネーションもよかった。また、サリバはプレミアリーグだけではなく、世界を見渡しても今シーズンのベストDFではないかと思うぐらいです。
対人能力の強さ、ビルドアップの能力も高くて、自分で前に運んで前線に縦パスを配球できる。攻守において、すごく目立っていたシーズンだったと思います。
――ガブリエウとの関係はいいですね。
お互いに信頼しあってますし、アーセナルはハイプレスを仕掛けるので、特に後ろはどうしても数的不利になるんですけど、その状況でも対人能力の高さがあるので、どんどん前から行って潰せるハイラインにできる。そして、背後を取られてもスピードで戻れる。それが彼の魅力でもありますね。
【チームに与える影響が大きかった4選手】――次に中盤です。何名になりますでしょうか?
中盤は4名です。
――では、ひとり目をお願いします。
アーセナルのデクラン・ライスです。とにかくもう「お値段以上ライス」でしたね。高い金額でウェストハムからアーセナルに来て、すぐ順応できるのかと心配されましたが、早速チームにフィットして年間を通してすばらしい活躍をしました。
守備の部分は、アンカーでもインサイドハーフでも、前に潰しにいった時に奪いきる能力、インターセプトの能力が高いです。そして、奪ったあとに自分でボールを持ち運べるのも強みで、中盤にひとり置いておくと、2人、3人分の働きをしてくれます。
メンタリティの部分もすばらしい選手ですし、チームに与える影響も大きいですね。
――続きまして、中盤のふたり目は?
マンチェスター・シティのロドリです。
――これは文句なしという感じですかね?
そうですね。僕はこのベストイレブンのなかでも、彼を最優秀選手に選出します。彼がいることによって、チームはゲーム全体をコントロールできますし、彼がいるかいないかで、マンチェスター・シティはまったく別のチームになります。負けた試合はロドリがいなかった。ボールの配球、守備時の全体のオーガナイズもすばらしいです。
また、ゲームをコントロールする能力に加えて、大事な場面でのゴールも多かったです。ミドルシュートも含めて、本当にすばらしい活躍でした。
――では、中盤の3人目は?
マンチェスター・ユナイテッドの、ブルーノ・フェルナンデスです。今季、マンチェスター・ユナイテッドは少し苦しいシーズンでしたが、そのなかでも彼はずっとピッチに立ち続けて、チャンスをクリエイトしました。ボールロストしないですし、前線にいいボールを配球してアシストも多かったです。
――中盤4人目、最後は誰でしょうか?
アーセナルのマルティン・ウーデゴールです。今シーズンのキャプテンでした。とにかく、エレガントなプレーをする選手です。アイデアが豊富で、それを具現化する能力があります。彼の左足から出されるパスがすばらしく、シュートもたくさん決めて、チームの精神的支柱でもありました。
また、エレガントでありながら、泥臭いプレーもできるのが彼の魅力です。
【フォーデンは最優秀選手候補】――ではFWにいきます。3名になりますね。ひとり目をお願いします。
チェルシーのコール・パーマーです。今シーズン、マンチェスター・シティから移籍してきて、ほどなくしてピッチに立ち始めましたが、爆発的な活躍を見せました。チームに馴染むのには時間がかかるものですが、加入して早速自分のパフォーマンスでチームの中心選手となりましね。
何でもできる選手で、2ライン間(MF、DF)でボールを引き受けることもでき、サッカーIQの高さもあります。ドリブルでかわすこともでき、アシストやゴールも奪えるすばらしい選手です。
――FWのふたり目は?
アストン・ビラのオリー・ワトキンスですね。今年のアストン・ビラはサプライズで、強さを発揮したシーズンでした。ワトキンスのゴール数やアシスト数も多く、ポストプレーやボックス内での仕事もできる選手です。左右両足でのフィニッシュの形も豊富で、プレーの幅が広いです。
ウナイ・エメリ監督が、選手のすばらしいパフォーマンスを引き出しました。4−4−2のコンパクトなラインを作り、可変して3−4−2−1などいろいろな形を採用しています。
――では、FWの3人目は?
マンチェスター・シティのフィル・フォーデンですね。今年はフォーデンのゴールが目立ったシーズンでした。ロドリを最優秀選手に選びましたが、フォーデンも候補でした。
シーズン最初は、ケビン・デ・ブライネやアーリング・ハーランドがいて出られない時間帯もありましたが、彼らがケガをしてからは自分の力を見せつけました。攻撃のクオリティが高く、特に2ライン間でのターンがうまいです。ゴール数も増え、自信にもなったと思います。
――この11人を率いる監督を選ぶとしたら、誰でしょうか?
マンチェスター・シティの4連覇を達成させた、ジョゼップ・グアルディオラ監督です。毎年すごいですが、今年は特に探求心があり、偽サイドバックや偽センターバックなど、状況に応じて立ち位置を自在に変えるゲームプランを作り込める監督です。選手に自由を残しつつ、構造をしっかり作るのが、今年のグアルディオラのよさでした。
【どのゲームも面白かった】――今シーズンのプレミアリーグを振り返っていかがでしたか?
最後の最後まで優勝争いがあり、マンチェスター・シティ、アーセナル、リバプールの3強が争ったのは面白かったです。また、プレミアリーグの面白さは、下位チームも上位チームも関係なく、どのゲームでも面白いところですね。僕もプレミアリーグ全節の解説を担当しましたが、本当にいい試合ばかりでした。
――11人選ぶのは大変だったんじゃないですか?
すごく大変でした。クリスタル・パレスの中盤のアダム・ウォートンや、ニューカッスルのアレクサンデル・イサクなど、たくさんの選手が候補に挙がりましたが、このメンバーに決めました。
来季のプレミアリーグも楽しみですね。移籍市場が動くと思うので、どのチームも選手を獲っていくと思います。特にビッグクラブは動きがありそうです。