EU加盟27か国で実施された欧州議会選でEUに懐疑的な右翼政党などの会派が躍進する見通しとなった。6月11日の「くにまる食堂(文化放送)」では、関西学院大学教授の村尾信尚が現在、ヨーロッパで“右翼”と呼ばれる人たちはどんな存在なのか解説した。

邦丸「欧州議会で極右政党、いわゆる右寄りの政党が力を伸ばしているそうですが、これはなぜなんですか?」

村尾「右寄りであるとか、左寄りっていうのとちょっと違うのかなと僕は思っていて…」

邦丸「違和感?」

村尾「違和感がありますね。右寄りと称する人たちが何を叫んでいるのかといいますと、大きく2つあると思います。1つは“反移民”。これはアフリカだとか中近東だとか、色んなところから難民の皆さんがヨーロッパに流れてきている。そういう人たちを排除しようという考え方を持つ人。もう1つは地球温暖化、気候変動とか言ったって、やっぱり私たちの暮らしが大事なんだ。ガソリンだってたくさん使いたい。言ってみれば“反環境”ですね。だから“反移民”“反環境”“反地球温暖化”、そういう人たちが右翼と呼ばれる人たちの大きな主張になってるんですね」

邦丸「はい、はい、はい、はい」

村尾「面白い分け方があってイギリスの学者の方が書いた本で、今、ヨーロッパで起きている現象は2つのグループの対立だと考えた方がいいと言ってます。1つが“anywhere”「どこでも」という意味です。ある程度の学歴があって自分の生まれた故郷だけではなくて海外でも活躍できる、いわゆるエリート層。もう1つが“somewhere”「ある特定の場所」。自分の生まれた街に住み、ここの地域が大切だと思っていて、そこで一生を終えていく人。この2つの対立がある。先ほど言った右翼と呼ばれる人たちは“somewhere”を代表してる人々」

邦丸「自分のエリアを大事だと思っている人」

村尾「だから地球環境もわかるんだけど、やっぱり自分の今の暮らしが大事。他の地域で困っている人がヨーロッパに来るのはわかるけど、やっぱり我々の文化だとか地域の暮らしが大事なんだ。こういう人たちが“反EU”なんですよ。どんどん大きなまとまりになるんじゃなくて『イタリアのこの暮らしを守ろう』『スペインのこの暮らしを守ろう』っていう人たちが、いわゆる右翼っていうことになってるんです」