度付き眼鏡のオンラインブランドであるアイバイダイレクト(Eyebuydirect)が、実店舗小売に乗り出した。

同社はカリフォルニア州オレンジカウンティにあるショッピングモール「ザ・ショップス・アット・ミッション・ビエホ(The Shops at Mission Viejo)」に140平方フィート(約13.0平方メートル)のキオスク型店舗を4月中旬にオープンした。これは2006年にオンライン販売を開始した同社にとって、初の公式実店舗となる。アイバイダイレクトは眼鏡メーカーであるエシロールルックスオティカ(EssilorLuxottica)の子会社で、度付き眼鏡フレームを6ドル(約930円)から販売している。同社ではレイバン(Ray-Ban)やオークリー(Oakley)のような高級ブランドの眼鏡も販売しているが、店舗内で売られるのはすべてホワイトラベルのフレームだ。同社によると、この店舗形態で実店舗小売を試すとともに、どのような戦術が対面での買い物客に受け入れられるのかをテストできるという。

アイバイダイレクトのシニアブランドマネージャーを務めるブランデン・マース氏は、「過去に何度かイベントを開催し、最近はさらに多く開催している。そして、我々は商品やそのデザインについて常に高い評価を受け取ってきた」と米モダンリテールに語った。たとえば、同社は期間限定のブランドアクティベーションやポップアップを実施しており、最近では昨年夏にロサンゼルスで開催された。

小規模な売り場から最適解を見極める



実店舗の試みは1年ほど前から取り組まれていたもので、アイバイダイレクトの将来の小売販売計画のテストになるとマース氏は言う。この取り組みは「チーム全員にとって初挑戦だ」と同氏は話す。しかし、同社は過去に実施したポップアップの経験を通じて、処方箋で注文をする前に商品を実際に触って具合をたしかめられることが顧客に好評だったことに勇気づけられたという。

キオスク型店舗は小規模で、展示できる商品の数は限られていた。買い物客は400ほどのなかから選ぶことができるが、同社のサイトには3000以上の商品バリエーションが用意されている。

「我々はオンラインデータに基づいて、顧客が何を好むかを調べ、それと自社が売り込みたいと思っている商品とのバランスをとった」とマース氏は言う。同社は最終的に、新商品と今までのトップセラー商品、そしてアピールしたいいくつかのエコフレンドリーなモデルを取り揃えることにした。この売り場には、約6ドル(約930円)から約70ドル(約1万900円)前後の価格範囲の商品を展示した。「これにより、最適な価格帯はどのあたりなのかを数カ月のうちに見極められるだろう」。

実店舗の利点



小売への初進出にあたり、アイバイダイレクトは自社のオンラインサービス、特にバーチャル試着サービスをオフラインでも提供することに注力している。「実店舗にない眼鏡も顧客が選べることを保証したい」とマース氏は語った。訪問者はiPadでほかのアイバイダイレクトの商品も探すことができ、店員の助けを借りることでバーチャルで試すこともできる。注文後は顧客の自宅まで度付き眼鏡が配達され、一部の商品に関しては2日以内に受け取ることも可能だ。

オレンジカウンティに店舗を構えることにより、「近隣の大学や家族連れなど、非常に幅広い層の人々を顧客にすることができる」と同氏は言う。同社の顧客の約65%は18歳から35歳であることを考えれば、これは特に重要だ。同氏はまた、南カリフォルニアには多様な年齢層の人々が存在することにも言及した。さらに実店舗をオープンさせたミッション・ビエホというモールは、アイバイダイレクトの視力検査パートナーであるレンズクラフターズ(LensCrafters)の店舗の近くにある。

実店舗のマーケティングについては、店舗体験が円滑になったことをしっかりと確認してからキャンペーンを開始させたいとマース氏は話す。ただしこの取り組みは、まずプレスや現地のマイクロインフルエンサーとのパートナーシップからスタートする予定だという。

実店舗への投資を増やしつつあるオンラインD2Cブランド



これまでアイバイダイレクトはオンラインチャネルを通じて、ワービーパーカー(Warby Parker)やゼニ(Zenni)などほかのD2Cブランドと競合してきた。これらのオンラインブランドの多くは、眼鏡販売の大半は依然として実店舗で発生していることから、実店舗への投資を増やしつつある。たとえばワービーパーカーは、店舗開設と店舗内での視力検査の体制を整えるために多額の投資を行っており、2024年には新たに40店舗をオープンさせる計画だ。

グローバルデータ(GlobalData)で小売部門マネージングディレクターを務めるニール・サンダース氏は、オンラインブランドによる実店舗開設には主に2つの目的があると語った。「まず第一に、そしてもっとも重要な目的として、実店舗はブランドの宣伝になり、より多くの消費者が眼鏡を必要とするときにアイバイダイレクトを検討することを助長させる」と同氏は話す。さらに人々は実際に眼鏡を手に取って確認できるようになり、これは多くの場合に購入プロセスにおいて重要な要素になるという。「これらはすべてアイバイダイレクトにとってプラスに働く」。

サンダース氏はまた、キオスク型店舗は小規模であるため初期投資をそれほど必要としないと付け加えた。「その点アイバイダイレクトは、ワービーパーカーが提案する体験的で面白みに溢れた店舗よりは不利な立場にあるが、価格の安さによりこの欠点を克服できるだろう」。

20年近くにわたって度付き眼鏡をオンラインで販売してきたアイバイダイレクトは、少しずつに対面での小売販売への進出を進めているとマース氏は語る。現在のところは、さらに店舗をオープンさせる予定はない。「この実店舗とデジタルを融合させた店舗を構えることは、当社にとってどのような小売の機会があるのかを把握するための興味深い方法だ」。

[原文:Eyebuydirect opens first physical retail location]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:都築成果)
Image via EyeBuyDirect