小倉智昭「余命1年半」宣告。膀胱がん転移で絶望し、闘う現在の姿とは

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国立がん研究センターの統計によると、日本における膀胱がんの罹患率は10万人あたり18.5人とほかのがんに比べてそれほど多くはありません。そのため、膀胱がんとその治療について知っている人も少ないのではないでしょうか。ただし、年間約2万3000人が新たに膀胱がんを発症しており、その数は年々増加傾向にあります。特に男性は女性の約3倍発症率が高く、喫煙によりその発症率が4倍にもなるため注意が必要だと言われています。そこで今回は、実際に膀胱がんを経験した小倉智昭さんと泌尿器科専門医である堀祐太郎先生に膀胱がんとその転移について対談していただきます。

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インタビュー:
小倉智昭(タレント)

東京12チャンネル(現 テレビ東京)アナウンサー出身。局アナとして活動後、1976年からはフリーアナウンサーへと転身。さまざまな番組のナレーターやラジオパーソナリティ、テレビキャスターなど、多岐にわたり活動。2021年までの22年間は「とくダネ!」のメインキャスターをつとめる。プライベートではゴルフ、読書、オーディオ機器、競馬、クレー射撃、カメラなど多彩な趣味を持つ。


監修医師:
堀祐太郎(日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・医学博士)

2011年日本大学医学部附属板橋病院 泌尿器科に入局し、10年以上泌尿器科で研鑽を積む。2021年には東京都豊島区の要町駅前に「要町駅前クリニック」を開業し、“患者さんが通いやすいクリニック”を目指し日々の診療に励んでいる。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・医学博士。



堀先生

現在の状況について聞かせてください。

小倉さん

私はこれまで9年間がんと付き合ってきました。最初は膀胱がんが発覚して肺の転移も経験し、最近では腎盂がんも見つかり去年の12月に左の腎臓を摘出しています。

堀先生

長い間がんと向き合ってきたのですね。

小倉さん

はい。腎臓を摘出し検査した結果、進行する可能性が高く「余命は1年半、3年生きる確率は8%」だと言われました。

堀先生

ショックですよね。現在はどのような治療をされていますか?

小倉さん

免疫チェックポイント阻害薬を投与しながら経過を見ています。

堀先生

治療による副作用はありましたか?

小倉さん

4回目の投与あたりから腎臓の数値が急激に下がり、一昨年には命が危ない状況も経験しました。

堀先生

腎臓の機能が低下したのですね。

小倉さん

はい。今は右の腎臓しか残っておらず、人工透析も覚悟するよう言われています。

堀先生

膀胱がんが最初に見つかったきっかけについて教えてください。

小倉さん

尿に赤い唐辛子みたいなものが浮いているのを発見したことがきっかけです。それをホームドクターに相談し細胞診をした結果、膀胱がんの可能性が高いと言われました。

堀先生

どんな心境でしたか?

小倉さん

番組でがんの特集などもやってきて、2人に1人はがんになる時代なので、そんなにショックは受けませんでした。

堀先生

治療はどうされたのでしょうか?

小倉さん

膀胱の摘出を勧められましたが、すぐには摘出せず、診断を受けた病院とは別のクリニックで海外から輸入した点滴での治療を始めました。

堀先生

その後の経過についても教えてください。

小倉さん

ある日、当時出演していた番組の開始直前に便器を真っ赤にするくらいの血尿がありました。さすがに手術を決意しました。

堀先生

すぐに膀胱を摘出しなかった理由はありますか?

小倉さん

男としての未練がありましたね。膀胱を摘出する際に前立腺や精嚢も取ることで性機能が低下することを知っていたので、それを温存したいと思ったからです。

堀先生

そういう方は多いですね。

小倉さん

膀胱がんは肺がんなどと比べて書籍での情報も少ないので、SNSやネットの情報を信じて2年半もの間、摘出手術を先延ばししたことが大きな間違いでした。

堀先生

やはり人間なので良い方向に考えたくなると思います。ただ、その際にしっかり情報の良し悪しを相談できる人がいたら良かったのかもしれませんね。

小倉さん

そう思います。膀胱がんの初期症状についても教えてください。

堀先生

初期症状は、残尿感と血尿です。好発年齢は60歳以上で、喫煙によってそのリスクは2~5倍になると言われています。

小倉さん

痛みで気づくこともありますか?

堀先生

基本的にはありません。

小倉さん

がんは、よほどタチが悪くないと症状もありませんよね。それが発見を遅らせる原因になると感じます。膀胱がんの治療法についてはいかがですか?

堀先生

最初にがんの診断と治療を兼ねて手術をします。その際にがんの深さの確認を行います。膀胱は薄い組織なので、がんが組織の深い場所である筋層に達していると、今後広がる可能性が高く、膀胱の摘出を提案する場合がほとんどです。がんが膀胱表面の粘膜でとどまっている場合は、見える範囲のがんを取り除いたあと、抗がん剤を膀胱内に注入する治療を実施することがあります。

小倉さん

私は最終的に膀胱を全て摘出し、代用膀胱を作りました。60cmくらいに切った小腸が膀胱の代わりとしてお腹に入っています。

堀先生

膀胱全摘後の尿路の再建には、腹部に尿を貯める用の袋を貼る方法もあるのですが、どのようにその方法を選択されましたか?

小倉さん

ゴルフでお風呂に入ることもあるので、見た目も考えて自然に排尿できる方法を選びました。

堀先生

容姿は非常に大事なことですよね。代用膀胱を使用するうえで、何か苦労はありますか?

小倉さん

尿意を感じないことや尿漏れで悩んでいます。初めのうちは椅子から立ち上がった時やゴルフのショットをした時に、気付いたらズボンが濡れていることもありました。

堀先生

そうですよね。相談できずに悩んでいる人も多いと思います。

小倉さん

男性用トイレにはサニタリーボックスがなく、オムツの捨て場所にも苦労します。それを番組や新聞で伝えてもらった結果なのか、サニタリーボックスのある男性用トイレが増えてきて「やったぜ」と思いました。

堀先生

すばらしいですね。

小倉さん

当事者が積極的に発信することは大切だと思います。治療についても最終的には患者が決めるわけなので、理解を深めていくことが大切ですよね。

堀先生

がんを治療することと患者さんの生活の質(QOL)を高めることのどちらを優先すべきか正解は人それぞれですので、納得して治療に向き合っていただきたいと思います。

小倉さん

正しい知識を身につけることが大切ですね。





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