ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日~金曜日15時30分~17時)、5月29日の放送に小説家の真山仁が登場。5月22日に発売された新刊『当確師 正義の御旗』について語った。

鈴木敏夫(文化放送解説委員)「小説(『当確師 正義の御旗』)のテーマがズバリ、総裁選挙なんですよね。“民自党”という政党が舞台となります。総裁の座を狙う人たちの群像劇。主人公は派閥が瓦解してスキャンダルにまみれた永田町の中で唯一、先行きをちゃんと読んでいける男、“当確師”の聖達磨(ひじり たつま)。しかし物語は聖の目線だけではないんです。総裁を狙う人たち、支える人たち、検察官、新聞社のベテラン記者、若手記者……いろんな人たちの目に映る景色を描いていくという、おもしろい壮大な物語となっています」

長野智子「番組の前に伺って『えっ!?』と思ったんですけど、書き直されたんですね?」

真山仁「そうです。連載を始めたのが2年前の7月なんですよ。そのころ派閥もありましたし、自民党が割と盤石の状態でした。去年の春で連載が終わったんですけど、いろいろと単行本を出す順番があって、1年待っていただいて。秋ぐらいから『出そうかな』と思ったときから自民党が瓦解し始めて……」

長野「そう(笑)」

真山「最初は大きな派閥同士の駆け引き、でよかったんですよ。ところがこのタイミングで出して派閥で戦っても仕方ない。もともと1.5倍ぐらいのボリュームがあって、不要なところを削りながら、派閥の話を全部抜いて。派閥がなくなった中でどうなるか。やや未来予想図的なことを小説でやったほうがいいので、4割ぐらいは書き直しが入っています」

長野「これから読む人のために、あまり言ってはいけないと思うけど、ド頭から『いま』じゃない? 背景が」

鈴木「そうなんですよ(笑)」

長野「だから『いつお書きになったの?』って」

鈴木「読んでいて書きおろしのイメージですよ」

長野「派閥がなくなっちゃって、っていう。真山さんも派閥がなくなるとは……」

真山「まったく思っていなかったです。逆に書いている側がいいのは『こんなことあり得ない』と誰も言えないこと。あり得ないことが起きているから、『これはひとつの可能性ですよ』と言えることはよかった。でもなんで人がせっかくつくったものが全部なしになって、いちからやり直すんだ、というところは相当きつかったです」

長野「でもこの時代に骨太の、政治をテーマにしたものを取り上げて、書こうと思われた。何かきっかけは?」

真山「もともとエンタメで政治小説をやりたい、というのがずっとあって。いろんなパターン、たとえば東京地検特捜部の検事を主人公にして政治の腐敗をやる場合もあれば、政治家の視点にして、政治とは何が大事か、というのをやっていた。でも結局、民主主義を守ろう、と若い人が言うなら、選挙をもっと意識してもらわないといけない。日本人の選挙って選挙速報の日だけなんですよ。なんなら投票にも行っていないのに速報を見て『また負けちゃったよ』と言っているのって、あまりにもイベント的なものすぎる」

鈴木「ええ……」

真山「政治を変えたければデモするより投票に行こう、ということに意識づけしてほしかった。選挙をエンタメにできたらいいな、というのがもともとのきっかけです」