「悪玉コレステロール」を減らす方法・下げる食べ物はご存知ですか?医師が解説!
悪玉コレステロールとは?Medical DOC監修医がLDLコレステロールを減らす方法や基準値、数値が高い人の病気のリスクなどを解説します。
≫「心筋梗塞の前兆となる3つの初期症状」はご存知ですか?医師が徹底解説!監修医師:
伊藤 陽子(医師)
浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
悪玉コレステロールが多い時に考えられる原因と対処法
悪玉コレステロールが増えすぎると、動脈硬化を招いて心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気を引き起こす可能性があります。そのため、悪玉コレステロールが多い場合は基準値まで減らすことが大切です。
悪玉コレステロールとは?
悪玉コレステロールとは、LDLコレステロールのことです。低比重リポタンパク質や低密度リポタンパク質とも呼ばれています。LDLコレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ働きをもつコレステロールです。そのため、悪玉コレステロールと呼ばれています。悪玉とは呼ばれているものの、基準値内であればとくに問題はありません。しかし、基準値を超えて増えてしまうと、血管壁に蓄積して血管の弾力性が失われてしまいます。悪玉コレステロールの値を調べるために行われるのが血液検査です。医療機関によって異なりますが、早いところでは採血してから1時間程度で結果を確認できます。
悪玉コレステロールが多い原因
悪玉コレステロールが多くなる原因はいくつかあります。代表的なのが、食生活やストレス、遺伝や肥満などです。コレステロールの約8割は肝臓で作られていますが、残りの約2割は食事から吸収されます。そのため、卵やいくらのようなコレステロールが多く含まれる食事を好んで摂取していると、悪玉コレステロールが多くなってしまうことがあるのです。ストレスを受けると、ストレスホルモンと呼ばれているコルチゾールの分泌量が増えます。コルチゾールには悪玉コレステロールを増やす働きがあるため、ストレスを溜め込まないことが大切です。このほか、遺伝や肥満も悪玉コレステロールの値に関係しています。遺伝が原因で悪玉コレステロールの数値が高くなる代表的な疾患が家族性高コレステロール血症です。家族性高コレステロール血症の場合、若い年齢のうちから悪玉コレステロールの値が高くなります。
悪玉コレステロールを減らす方法
悪玉コレステロールを減らす方法としては、食生活や運動習慣の見直しが効果的です。コレステロールが多い食品や動物性脂肪を摂りすぎないようにし、EPAやDHAが豊富な青魚を意識して食べるようにします。適度な運動を行うことも心がけましょう。中強度以上の有酸素運動を一日に合計30分以上行うことで、悪玉コレステロールの値を減らす効果が期待できると言われています。毎日運動を行うのが望ましいとされていますが、週に3日以上でも構いません。また、一度に30分続けて運動を行う必要はなく、一日の合計が30分以上であれば大丈夫です。
悪玉コレステロール値の見方と再検査が必要な悪玉コレステロール値に関する数値・結果
ここまでは悪玉コレステロールについて紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
悪玉コレステロール値の基準値と結果の見方
悪玉コレステロールの値が140mg/dL以上になると、高LDLコレステロール血症と診断されます。健康診断の結果を見て、悪玉コレステロールが140mg/dL以上の場合は、早めに内科を受診しましょう。180mg/dL以上の場合は、家族性高コレステロール血症の可能性もあります。ここまで悪玉コレステロールの値が高い場合は、動脈硬化のリスクが非常に高くなっているため注意が必要です。
健康診断・血液検査の悪玉コレステロール値の異常値・再検査基準と内容
健康診断では、血液検査を行って悪玉コレステロールの値を調べます。検査費用は、3割負担の場合、約2,500~3,000円です。悪玉コレステロールの値が140mg/dL以上の場合は、内科で再検査や精密検査を受けましょう。緊急性は高くありませんが、放置していても値が自然に改善されることはほぼありません。知らず知らずのうちに動脈硬化が進む原因となるため、早めに受診するようにしてください。再検査の結果、高コレステロール血症と診断された場合は運動療法や食事療法、薬物療法などで治療を行います。
悪玉コレステロール値が高い人がかかりやすい病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、悪玉コレステロール値が高い人がかかりやすい病気・疾患を紹介します。
脂質異常症
脂質異常症とは、血液中にある脂質の値が基準値から外れた状態のことです。悪玉コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)は増えすぎると問題となり、善玉コレステロールは値が低いと異常値となります。発症する原因は生活習慣の乱れや遺伝などさまざまです。それぞれの脂質の基準値は、以下の通りとなっています。
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)140mg/dL以上
善玉コレステロール(HDLコレステロール)40mg/dL未満
中性脂肪(トリグリセライド)150mg/dL以上(空腹時採血)
175mg/dL以上(随時採血)
悪玉コレステロールが増えた状態を高LDLコレステロール血症、善玉コレステロールが減った状態を低HDLコレステロール血症、中性脂肪が増えた状態を高トリグリセライド血症といいます。個々の値がどのくらいの数値なのかを見ることも大切ですが、悪玉コレステロールと善玉コレステロールとの比率を確認することも重要です。「悪玉コレステロールの値 ÷善玉コレステロールの値」が1.5以下なら、血管はきれいな状態といえるでしょう。2.0以上はコレステロールの値が増えており、動脈硬化が進みやすい状態といえます。2.5以上の場合は、血栓や動脈硬化の危険性が高いと考えられるため要注意です。脂質異常症になった場合は、食生活や運動習慣の見直し、コレステロールを下げる薬の服用などによって対処します。健康診断でコレステロールや中性脂肪を指摘された場合は、早めに内科を受診しましょう。
動脈硬化
動脈硬化とは、血管の弾力性が低下して詰まりやすくなっている状態のことです。悪玉コレステロールの増加のほか、喫煙や高血圧、肥満や運動不足などによって発症しやすくなることが分かっています。動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすこともあるため注意が必要です。しかし、動脈硬化は初期症状がほとんどありません。そのため、健康診断や血液検査で発見されることが多くあります。もしも動脈硬化を指摘された場合は、血管外科や循環器内科を受診しましょう。
心筋梗塞
心筋梗塞とは、心臓に血液を送る血管である冠動脈が完全に塞がった状態のことです。動脈硬化が進行することで発症します。冠動脈が塞がって心臓に血液を流れなくなると、心臓は壊死を起こし再び元に戻ることはありません。急に冠動脈が詰まることから、突然激しい胸痛や胸の圧迫感などの症状が起こります。胸痛が30分以上続き、冷や汗を伴う場合は心筋梗塞の可能性が高いといえるでしょう。息切れしやすくなったり胸の痛みを感じるようになったりした場合は、心筋梗塞の前兆である可能性があります。命に関わることもあるため、いつもと様子が違うと感じた場合はすぐに循環器科を受診しましょう。痛みが強く、持続する場合には、救急車を呼ぶことをお勧めします。
脳梗塞
脳梗塞とは、何らかの原因によって脳の動脈が詰まって血液が流れなくなる病気のことです。血液が届かなくなった脳は壊死を起こし、片側の手足の麻痺やしびれ、言語障害や意識障害、めまいなどさまざまな症状を引き起こします。発症の大きな原因となるのが動脈硬化です。脂質異常症や高血圧、糖尿病などによって動脈硬化が進行すると、脳梗塞を発症することがあります。脳梗塞の前兆としては、手に持っているものを落としてしまう、ろれつが回らないなどの症状が代表的です。これらの症状が出た場合は脳神経外科や神経内科を受診しましょう。症状が強い場合には、救急車を呼ぶことをお勧めします。
「悪玉コレステロール」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「悪玉コレステロール」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
血液検査でLDLコレステロールが高いと脂質異常症なのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
LDLコレステロールの値が140mg/dL以上の場合は、脂質異常症と診断されます。中性脂肪が高かったりHDLコレステロールが低かったりする場合も脂質異常症となるため、ほかの値にも注意しましょう。
悪玉コレステロールを下げる食べ物はありますか?
伊藤 陽子(医師)
悪玉コレステロールを下げる食べ物には、野菜や海藻、納豆などの大豆製品や魚類などがあります。ヨーグルトはダメと言われることがありますが、これは動物脂肪が多く含まれているためです。
悪玉コレステロールを下げるお茶はありますか?
伊藤 陽子(医師)
悪玉コレステロールを下げるお茶には、緑茶やほうじ茶などがあります。お茶に含まれているカテキンに悪玉コレステロールを下げる働きがあるのです。このほか、悪玉コレステロールを下げる飲み物として、豆乳やココア、アーモンドミルクなども知られています。
悪玉コレステロールを下げるサプリはありますか?
伊藤 陽子(医師)
悪玉コレステロールを下げる効果が期待できるサプリもあります。しかし、薬とは違って確実な効果があるわけではありません。
悪玉コレステロールが多いのは遺伝ですか?
伊藤 陽子(医師)
遺伝の可能性もあります。家族性高コレステロール血症といって、若いころからLDLコレステロールが高いことで、心筋梗塞を20才代から発症する場合もあります。300人に1人程度の比較的頻度の高い遺伝性の病気です。血縁者で心筋梗塞が多い場合、若い時からLDLコレステロールが高い場合には気を付けた方が良いでしょう。内科で相談をすることが勧められます。
悪玉コレステロールが増えてしまう食べ物はありますか?
伊藤 陽子(医師)
コレステロールが多い食事として、卵やラード、バターやショートニングなどが知られています。
まとめ 悪玉コレステロールは動脈硬化に注意!
悪玉コレステロールとは、LDLコレステロールのことです。140mg/dL以上になると脂質異常症となります。「高いとどうなるの?」と思われる方もいるかもしれません。悪玉コレステロールの値が高くなると、血管の弾力性が低下して動脈硬化になるリスクが高まります。心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気を引き起こすこともあるため、悪玉コレステロールが高いと指摘された場合は、早めに内科を受診して適切な治療を受けましょう。
「悪玉コレステロール」の異常で考えられる病気
「悪玉コレステロール」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
代謝内分泌系の病気
家族性高コレステロール血症
脂質異常症循環器系の病気
心筋梗塞・狭心症
脳神経系の病気
脳卒中悪玉コレステロールが高い方のなかには、遺伝によって起こる家族性高コレステロールが原因のケースがあります。コレステロールが高い状態が続くと、心筋梗塞や脳卒中を起こすことがあるので注意しましょう。
参考文献
[e-ヘルスネット]LDLコレステロール
[e-ヘルスネット]脂質異常症を改善するための運動
[e-ヘルスネット]脂質異常症
[e-ヘルスネット]動脈硬化