親知らずは「若いうちに抜歯した方がいい」と言われる理由をご存じですか?
親知らずは通常の抜歯に比べて処置時間が長く、痛みや腫れが出やすいため、少しでも体力があり、回復力もある「若いうちの方がいい」と言われるそうです。そのほかに、抜歯の方法などについて医療法人きしもと歯科医院の岸本博人先生に教えてもらいました。
※この記事はMedical DOCにて『【歯科医師に聞く】親知らずの抜歯は必要? 手術の流れとは』と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修歯科医師:
岸本 博人(医療法人 きしもと歯科医院)
1993年大阪大学歯学部卒業、1997年大阪大学大学院歯学研究科歯学臨床系修了(歯学博士)。岡山大学歯学部中央研究施設などを経て2001年大阪府高槻市に「きしもと歯科医院」を開業。日本口腔インプラント学会代議員、日本障害者歯科学会会員、大阪口腔インプラント研究会理事。一般歯科全般だけでなく、口腔外科、予防歯科、ホワイトニングなど高品質の医療を提供。「誰でもなんでも気軽に相談できる歯医者さん」として、地域医療に貢献している。
編集部
親知らずを抜く場合には、どのように行うのでしょうか?
岸本先生
歯が生えている状況によって、治療法はさまざまです。比較的真っ直ぐに生えていて、ほかの歯とぶつかったりしていないのであれば、簡単に抜歯できます。しかし、斜めに生えていたり、歯ぐきに潜っていたりする場合は、抜歯に時間がかかることもあります。さらに、細菌感染が顎の骨や全身に広がっていたり、4本同時に抜いたりする場合は、全身麻酔が必要になることもあります。
編集部
全身麻酔とは意外です。
岸本先生
ほかにも血液をサラサラにする薬を服用している人は、手術の際に特別なコントロールが必要になるため、大きな病院や専門病院で治療を受けることをお勧めします。
編集部
通常、抜歯はどのように行うのですか?
岸本先生
局所麻酔で行うのが一般的です。臼歯の奥などに麻酔を注射し、痛みを感じないようにして抜歯します。手術の時間は5~10分程度ですが、真横に向いていたり、潜っていたりして歯ぐきを切開する必要がある場合は、30分程度かかることもあります。
編集部
抜歯をするにあたって、注意すべきことはありますか?
岸本先生
当日、血流がよくなると出血が止まらなくなる恐れがあるので、飲酒、タバコ、運動、入浴は避けていただきます。また、抜歯の翌日にもう一度来院し、傷の治り具合や状態を確認させていただきます。術後3日くらい抗生物質を服用し、痛みが続く場合は、鎮痛剤を使用してください。
編集部
親知らずの抜歯は若いうちの方がいいと聞きますが、なぜですか?
岸本先生
親知らずの場合、通常の抜歯に比べて処置時間が長く、痛みや腫れが出やすくなります。そのため、少しでも若いうちに処置した方が、体力があり、回復力もあるので「抜歯は若いうちの方がいい」と言われています。また、高齢になればなるほど、親知らずが骨と癒着したり、歯の周囲の骨が硬くなったりするため、抜歯が難しくなります。
編集部
最後にメッセージをお願いします。
岸本先生
これは妊娠を考えている女性にお伝えしたいのですが、妊娠をすると、ホルモンバランスの関係から妊娠性の歯肉炎になりやすく、歯ぐきが腫れることがあります。加えて、つわりの時期には歯磨きが辛くなるので、口の中のコントロールが難しくなることもあります。さらに、妊娠中は薬の服用は控えるように指示されるので、万が一、親知らずが痛み出すと大きな問題になりかねません。妊娠を考えている女性は、その前に歯科医師の診察を受けて、親知らずを診てもらうこと。そして抜歯する必要がある場合は、早めに処置することをお勧めします。