糖尿病の人がタコ(胼胝)・ウオノメを放置するリスクとは? 足のケアについて専門家が解説

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足に「タコ(胼胝)」や「ウオノメ」ができたときに、皆さんはどのような対処をしていますか? はじめは小さな違和感を感じる程度だったとしても、そのまま放置してしまう人も多いのではないでしょうか。もし糖尿病がある場合、痛みがなくても、小さな足の異変から重篤な症状につながる可能性があると専門家は言います。放置されがちな足の異変について、治療方法や予防方法をTOWN訪問診療所城南院長の宇都宮誠先生に伺いました。

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監修医師:
宇都宮 誠(TOWN訪問診療所城南院)

2002年東邦大学医学部卒業。2002年東邦大学医療センター大橋病院循環器内科、2008年京都桂病院心臓血管センター、2013年東京労災病院循環器内科など、高度先進病院で内科専門医・循環器専門医として経験を積む。心臓カテーテル治療を行うとともに、下肢の動脈硬化やフットケアを行う外来診療に従事。2020年より現職。日本内科学会専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会認定医、日本フットケア・足病医学会評議員。

タコ(胼胝)とウオノメの違いとは

編集部

はじめに、タコ(胼胝)とはどのような状態か教えてください。

宇都宮先生

「タコ(胼胝)」とは一般的には皮膚が硬くなったり、厚くなったりすることを指します。たとえば、手や足の特定の部分が摩擦や圧力によって繰り返し刺激されることで、その部分の皮膚が硬くなり、厚くなる現象です。これは、体がその部分を保護しようとする自然な反応の一種です。特に、足の裏や手のひらによく見られる状態で、「靴が合わない」「長時間歩く」「特定の運動や楽器を演奏する」などの活動によって引き起こされることがあります。

編集部

似ている状態として「ウオノメ」もよく聞くのですが、どのような違いがあるのですか?

宇都宮先生

「ウオノメ」は医学用語では鶏眼(けいがん)と呼ばれます。基本的にはタコと同じような病態で、皮膚が硬く厚くなってくる状態ですが、ウオノメの場合は中心に芯のようなものがあり、痛みを伴うことが多いのが特徴です。どちらも慢性的な刺激や圧力が原因とされています。

編集部

足の「タコ」や「ウオノメ」ができることと「糖尿病」には何が関係はあるのでしょうか?

宇都宮先生

「タコ」や「ウオノメ」ができることと「糖尿病」は大いに関係があります。糖尿病の合併症の一つである末梢神経障害は運動神経や知覚神経が鈍くなります。運動神経が障害されると筋力の低下や足部の変形をきたしやすく、指の動きなども制限されます。これにより、足に変な圧力がかかりますが、知覚神経も障害されていると異変に気付くことができず、タコやウオノメの形成につながります。痛みや異変を感じることもありますが、無症状で経過する場合には放置されることも多く、重症化してから医療機関を受診されることも少なくありません。

タコ(胼胝)・ウオノメの症状・治療法を解説

編集部

皮膚が硬くなる以外にどのような症状が出ますか?

宇都宮先生

ウオノメでは痛みや違和感を自覚される方が多くいますが、自覚症状がそれほど強くない場合には長期間放置されてしまう場合もあります。タコやウオノメがある状態で歩行するのは小石を踏みながら歩いているのと同じで、タコやウオノメの奥に皮膚潰瘍(かいよう)を形成する場合もあります。また、糖尿病の方は自律神経も障害され、汗や皮膚の衛生環境をコントロールすることが難しく、感染が併発することも少なくありません。そうなると、糖尿病性下肢壊疽(えそ)の状態となり下肢切断につながるケースもあります。

編集部

どのような症状が出たときに治療が必要になりますか?

宇都宮先生

タコが気になる、もしくは痛みや違和感を自覚した場合は医療機関に相談するのが良いでしょう。しかし、糖尿病の方や心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化に関連した病気をお持ちの方はたとえ症状がなかったとしても足の裏を確認し、異変があれば主治医に相談すべきです。糖尿病で通院中の方であれば、フットケア外来が併設されていることも増えてきていますので、足を守るためにもタコやウオノメだけでなく爪の相談などもしてみることをお勧めします。

編集部

「タコ」や「ウオノメ」はどのように治療するのか教えてください。

宇都宮先生

タコやウオノメに対する治療としては、物理的に削る方法が一般的です。医療機関で専門的な器具やメスを用いて硬くなった皮膚を除去します。ほかにも、サリチル酸を含む軟膏を用いて皮膚を柔らかくする方法もありますね。自宅で対処する方法もありますが、まずは医療機関で相談することをお勧めします。また、タコやウオノメはたとえ削ったとしても再発するので、適切な靴やインソール、歩行の仕方などについても専門家に相談した方が良いでしょう。

タコ(胼胝)・ウオノメを放置するリスクとは 糖尿病患者は特に注意が必要?

編集部

糖尿病患者がタコやウオノメを放っておくと、どのようなリスクがありますか?

宇都宮先生

糖尿病患者さんは、タコやウオノメをきっかけとして足を失うリスクがあります。神経障害があることで自覚症状が出にくく、異変に気が付いていても放置してしまうことがあるからです。また、自律神経が障害され感染に弱くなることに加え、末梢動脈疾患といって、下肢の血流が低下している場合には急激に壊疽し、足を失うどころか命を落とす危険もあります。糖尿病の合併症である網膜症や腎症のチェックだけでなく、足の異常も定期的にチェックし重症化を予防することが大切です。

編集部

自宅でもできるケアの方法はありますか?

宇都宮先生

まずは自分の足の裏を見て観察することです。お風呂上がりや爪を切るときなどに足の裏まで何か異変がないかチェックしてください。糖尿病の方は自分で気が付かないまま病状が進行してしまう可能性もありますので、しっかり確認するようにしましょう。自分自身でチェックが難しい場合にはご家族に診てもらってください。自分でのチェックが難しい、家族に見せるのも難しい場合には専門知識を有する看護師が所属するフットケア専門の外来やサロンなども増えてきておりますので相談してみると良いでしょう。

編集部

タコやウオノメを予防する方法を教えてください。

宇都宮先生

タコやウオノメの予防には「靴選び」が最も重要です。偏平足や外反母趾など足の変形がある場合には、歩行時の圧力が偏りやすいですので注意が必要です。採型や圧力の測定を行い適切な靴を選んだり、インソールを作成したりしましょう。また日々の保湿なども皮膚が硬くなっていくのを防ぐのに重要です。

編集部まとめ

今回は、足の「タコ」や「ウオノメ」といった皮膚の状態が糖尿病とどのように関連しているかについて詳しく教えて頂きました。糖尿病は合併症が多岐にわたり、足の異常もそのうちの1つです。日々のセルフチェックで小さな異常に気が付き、早期に対処することで重症化の予防が可能とのことでした。本稿が読者の皆様にとって、足の小さな異変を意識し、フットケアについて知るきっかけになりましたら幸いです。

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