南半球のオーストラリアはこの週末から夏が終わり、一気に気温が下がって秋へと突入していく。

 開幕から2戦続けて不本意なかたちで入賞のチャンスを失ったRBにとっては、その反省をしっかりと改善と結果につなげておきたいところだ。なんせ、ここはダニエル・リカルドの地元であり、次は角田裕毅の地元日本GPなのだ。

 前戦サウジアラビアGPでは、角田が予選Q3進出の快走を見せたものの、決勝ではハースの戦略とケビン・マグヌッセンの走りに敗れた。それに対しては賛否両論が巻き起こり、スポーツマンシップに則ったレースを強化すべくルールの見直しについて話し合われる見込みだが、だからといってハースが現行のルールが許す範囲内で採った戦略を無効にすることはできない。


角田裕毅はオーストラリアGPで流れを変えられるか photo by BOOZY

「ハースのことは、もちろん僕らとしては当然好ましいことではないですし、ハッピーではないので(FIAに対して)問題提起して話し合うことになると思います。だけど、チームとしては今のレギュレーションのなかで最大限うまくやったのがハースだというのも事実なので、それは讃えなければならない。とはいえ、やり方としてはよくないなというのもありますし、そこを監視するのはFIAの仕事なので、レギュレーションを詰めていってほしいなと思います」(角田)

 同じ状況になれば、RBもあのような戦略で形振り構わずポイントを獲りにいったか?

 そう聞かれると、角田は複雑な心境を吐露した。

「やってほしいかなっていうのはありますね。最大限やれることをやるのがF1の世界なので。でも、チームの反応を見るかぎりだと、あの戦い方はやらないかもしれないですね......」

 開幕から2戦続けてスタート直後は入賞圏内を走りながらも、その後はずるずると後退して入賞のチャンスを失った。そのことについては、レースペースの不足というよりも、やはり戦略面の詰めの甘さがこの結果につながっていると角田は見ているようだ。

【アストンマーティンの1台を実力で抜くには...】

「リザルトだけを見るとレースペースが悪いように見えますけど、サウジアラビアに比べればバーレーンはよかったですし、そのサウジアラビアでもマグヌッセンの"アレ"がなければ入賞争いをしていましたし、バーレーン以上に入賞の可能性は高かったと思います。

 なので(レースペース自体は)ひどい状況にあるわけではないので、きちんとレースをまとめ上げれば戦えたはずです。チームとしても体制が刷新されて、各スタッフの担当領域もまだ探り探りのところもあります。そこはまだ数戦かかるのではないかと思いますけど、きちんとレースをまとめ上げて、最大限に結果につなげていきたいと思っています」(角田)

 一方、チームメイトのリカルドも、サウジアラビアの予選の時点でマシンに違和感を覚えたと訴えており、マシンに問題を抱えていることがわかった状態で挑んだレースだった。事実、角田に匹敵するペースはなく、ピットストップで膨大に時間をロスしたこともあって、下位に沈んだまま終わってしまった。

 しかし、その問題点はすでに究明できており、シミュレーターでも確認作業をして、対策を施したうえでこの母国レースに臨んでいるという。

「2台のマシンで一定ではない部分があって、このタイトななかではすべてがきちんと揃っていなければ厳しいということと、決勝ではセーフティカー中のピットストップでかなり時間がかかって最後尾に落ちてしまったことと、そこからはDRS(※)トレイン状態で捕まってしまったことが大きかった。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

 だから本来の位置でレースができず、とても長くてタフな週末になってしまった。でも、問題はすべて究明されたし、チームともかなり話し合ってきた。ここに来る前にシミュレーター作業もしてきたしね。だから、やれるかぎりのことはやってきたので、またレースができるのをうれしく思っているよ」(リカルド)

 トップ5チーム10台が明確なアドバンテージを持っている現状では、中団グループの5チームにとって、入賞は極めてハードルが高い。上位の誰かが脱落するか、現状で上位の最も下にいるアストンマーティンの1台を実力で抜く必要がある。

 それを成し遂げるのは、ドライバーの腕もさることながら、セットアップ面でも本当に小さな詰めの積み重ねが重要になる。

【11位の壁を越えるために必要なこと】

 バーレーンGPではFP2で薄いリアウイングをトライし、それが大失敗したことで、予選・決勝に向けた大正解のセットアップが見えた。そんなプロセスが極めて重要で、金曜フリー走行後の夜が今まで以上に重要になっているのだと角田は言う。

「トップ10に行くのは簡単ではないですし、ここまでタイトな状況だと、細かなセットアップまで詰めていくことがカギになってくるので、すごく重視してやっています。FP1やFP2で14位とか15位にいても、どこが改善できるかということを、僕とエンジニアで夜中に考えて改善して最終的にはまとめきれているので、これからもそこは続けていきたいなと思っています」(角田)

 中団グループの5チームにとっては、その最上位に立つことだけでなく、目の前に立ちはだかる"11位の壁"を越えることが重要になってくる。

 ただ、中団グループ最上位なら11位。上位の自滅であれ、実力であれ、上位5チームのうち少なくとも1台を喰わなければ、その壁を越えて入賞圏に辿り着くことはできないのだ。

「レースでペースが悪かったり戦略をうまく決められないとポジションを落としてしまいますし、中団グループで入賞できるチャンスは多くても1、2台しかないので簡単ではないですけど、そこを目指していきたいと思っています。

 僕らとしても戦略の質を上げる必要がありますし、そういった面も含めてレースをまとめきることが最大のキーポイントだと思うので、そこを重視しています。僕らの戦い方としてはこれまでと変わらず、クオリティを追求して改善していきたいと思っています」(角田)

 今すぐにマシン開発が進むわけではないだけに、ドライビング、セットアップ、戦略──あらゆる面においてクオリティを最大限に高めなければ、"11位の壁"を越えることはできない。

 苦しいなかでいかにクオリティを追求できるか。それは、自分を磨くための試練でもあり、チャンスでもある。