─米商業用不動産問題や円高リスクは要注視か、日経平均4万円時代の花形株の条件を探る─

 日経平均株価が史上最高値を更新し、その後4万円台に乗せた。市場参加者のほとんどが予想できなかった急騰劇となるなか、短期的な調整を警戒する声もあれば、中期的な上昇トレンドの継続を期待する向きもある。AI・半導体株や大型株がけん引する相場のなかでは、出遅れ感が強まった銘柄も散見されるようになってきた。日本株担当の記者有志が、相場観や有望株について語り合う座談会企画の後編では、今後のリスク要因と注目すべき個別銘柄について話し合った。(前編はこちら)

●カギとなるのはやはり「米国」

──日経平均の5年後の水準に関しては、大きく見方が分かれる格好となりましたが、相場を急変させるリスク要因について、それぞれ注目している点を挙げていただければと思います。

キャップ:経済的側面では、米国のCRE(商業用不動産)バブルの崩壊リスクがあります。米国の地銀にデフォルトが相次ぐ形となった場合は、想定以上に株式市場も影響を受け、なおかつ尾を引くと思います。現状はデフォルト率こそ軽微ですが、オフィス中心に担保割れ案件が急増していることが伝わっています。リーマン・ショックの時もそうだったように、欧州の方が米国よりもこうしたネガティブ材料に脆弱性がある点にも注意が必要です。

記者A:生成AIバブルの崩壊やウクライナ戦争におけるロシアの勝利、中国・台湾の緊張激化など相場のリスクは多数あります。ただ、一時的な株価急落はあっても、日本株に割高感はなく遠からず相場は回復すると考えています。日本の株式市場にとっては、急激な円高回帰があれば波乱要因となりそうですが、いまのところは円安の基調は強く、円高はあっても1ドル=130円台程度だと思います。本格的な円高となった場合、日本株買いが続くかどうかの正念場になるんじゃないかな、とも考えています。

記者C:中期的な観点では、大げさかもしれないですが、米国の「内戦リスク」を挙げたいと思います。米政治学者のバーバラ・ウォルター氏の著書が注目を集めましたが、米連邦議会占拠事件から3年経った今、保守層とリベラル層の分断は当時よりも更に深まっています。トランプ氏だけでなくイーロン・マスク氏など、扇動に長けた人物を抱える国ですから、インフレにより生活面での不満が高まった場合は極端な行動を起こす集団も現れかねません。米国の国力低下自体、マーケットにはネガティブな要因となりますが、東アジアにおける地政学リスクの高まりという副作用もあるはずで、日本株からの資金流出を招きそうです。

記者B:やはり重要なのは米国経済の行方ですね。利下げ期待とスタグフレーションの発生リスクを天秤にかけると一方的な楽観論には傾きづらい局面だと言えます。

キャップ:ロシアの核使用のリスクも頭に入れておきたいです。戦術核であっても実際使用に踏み切れば、ウクライナという局地にとどまらず世界は大きく揺れることになります。株式市場は地政学リスクによってトレンドが変わることはないとの見方もありますが、核使用が万が一現実となった場合、人類全体の危機という観点に切り替わるだけに、経験則は通用しないでしょう。

──相場格言には「山高ければ谷深し」とあります。ちなみに、80年代のバブル経済と今と比べて、異なる点や似た点があるのかなと思いますが、AさんとBさんはすでに社会人だったようですね。

記者A:若手記者でしたが、バブル期は怪しい筋が跋扈(ばっこ)していましたよ。今の東京市場は昔に比べたらスマートになったと思います。