テイクアウト商品の温め直しレベル向上が求められる中、「リベイク」機能を追加したトースターが登場している。左がバルミューダ「ReBaker」、右がツインバード「匠ブランジェトースター」(筆者撮影)

スチーム機能や繊細な温度制御を利用し、美味しくパンを焼き上げる高級トースター。その先駆者となったのは、スチーム加熱を採用したことで注目を集めた2015年発売のバルミューダ「BALMUDA The Toaster」だ。それから2万円台以上の高級トースターが次々に発売されたが、現在は高級トースターブームも落ち着きつつある。

「リベイク」機能を追加した最新トースター

長らく高級トースターブームを牽引してきたバルミューダは、その最大の特徴であったスチーム機能を省略した「ReBaker」を2月1日に発売した。現行販売中の「BALMUDA The Toaster」は実売価格が2万9700円、「BALMUDA The Toaster Pro」は3万7400円と高価であるが、「ReBaker」は2万4200円と価格を下げ、購入しやすい価格帯に設定されている。これまではスチームを利用し、主にトーストの仕上がりに焦点を当てていたが、「ReBaker」はスチーム機能がない。その代わりに温度制御などを一から見直したため、「BALMUDA The Toaster」よりもリベイク、温め直しが得意なトースターだという。

また、ツインバードは2023年11月に匠プレミアムラインの新製品「匠ブランジェトースター(TS-D486B)」を実売価格2万5800円で発売している。こちらもクロワッサンなどのパンのリベイクに力を入れて消費者にアプローチをしている。

Uberなどの配送サービスが定着し、フライや天ぷらなどの総菜を取り寄せる機会が増えている。有名店で買ったパンを自宅で温めて食べる人もいるだろう。温め直しレベル向上が求められる中、「リベイク」機能を追加したトースターが注目されている。

バルミューダ「ReBaker」の特徴は、さまざまな種類の市販のパンを温め直す「リベイク」モードが搭載されていること。1秒ごと1℃単位の温度制御により、焼き色をつけずにサクッと焼き上げ、中心も温められるような温度制御を行っている。「リベイク」モードにしてパンに合わせた加熱時間をセットすれば、どんなパンも焼きたてのようなパンになるという機能だ。

総菜パンも、焼きたてのような香りと食感に

2月1日都内で行われた「ReBaker」の発表会では、代表取締役社長の寺尾玄氏が同製品を開発した背景について語った。若い頃からヤマザキのベストセラー「まるごとソーセージ」を好んでよく食べており、温め直しても表面が焦げて中が冷たいままで、うまく焼き上げることができなかったとのこと。「焼きたてのような、中までアツアツのまるごとソーセージが食べたい」という原体験から、「ReBaker」のコンセプトが生まれたという。


2月1日の「ReBaker」発表会で登壇したバルミューダ代表取締役社長の寺尾玄氏。若い頃に食べていたというヤマザキ「まるごとソーセージ」への思いを熱く語っていた(筆者撮影)

これまでのバルミューダは、スタイリッシュなデザインと高級感が特徴だったので、発表会でコンビニやスーパーで定番の「まるごとソーセージ」の再加熱をメインに語られたのは、正直言うと意外だった。これまでは高級路線だったが、今回の製品は庶民的な印象で、価格も抑えていることから、若者にもアピールしたいという狙いがあるのだろう。身近にあるパンを美味しく焼けるというのは、そういった層への訴求ポイントになる。

実際に試したみたところ、焼く前と後では見た目が異なる。焼き上がってから時間が経って少ししぼんでいたであろう「まるごとソーセージ」が、艶やかで、ふっくらと厚みが増していた。表面が香ばしく、ほんのりと甘めのパンは中身がふわふわで、より甘さが引き立つ。ほんの少しからしが入ったマヨネーズの香りもより引き立っていた。焼き色は変わっていないのに、ソーセージの中心までしっかり温まっており、買ってきたときよりもプリッとしていて食感もよい。高級パンではないものの、改めて総菜系パンらしい美味しさを感じることができた。


「まるごとソーセージ」は、「ReBaker」を使って温めることで、焼きたてのような香りや食感を楽しめる(筆者撮影)

また、「フライ」モードも搭載しており、フライ、天ぷら、唐揚げなどを再加熱できる。見た目は加熱前とほぼ同じだが、中までしっかり温かく、外はサクサク。特にコロッケやエビの天ぷらの食感に感動した。これなら買ってきて冷めてしまっても、お店で食べるような焼きたて、揚げたてが味わえる。デザインや用途はこれまでの「BALMUDA The Toaster」と似ているが、「ReBaker」は別のブランドとしてリベイクをメインに利用したい人向けの製品と言えるだろう。

なお、「ReBaker」はスチームを使わないので「BALMUDA The Toaster」シリーズのように水を入れる必要がなく、手軽に使える。ただ、「BALMUDA The Toaster」シリーズのほうが食パンのトーストについては焼き上がりがよい。ミミの張りと表面がサクッとしていて、中がしっとりとしているトーストがバルミューダらしい特徴でもあったが、その良さは薄れていた。「ReBaker」は少しカリッと仕上がるので、厚めのパン(4枚切り、5枚切り)であれば、一般的なトースターよりも焼き上がりがよく、小麦の香りを楽しめる。

ツインバードはプロ監修で焼きたてパンを再現

ツインバードは、コストパフォーマンスの高い家電を販売しているメーカーとして知られていたが、ここ数年で変わってきている。

2018年に登場したプレミアム全自動コーヒーメーカーシリーズから、高価格帯の家電にも力を入れている。現在はベーシックな「感動シンプル」と、高価格帯の「匠プレミアム」という2つの製品ラインを展開しており、今回紹介する「匠ブランジェトースター(TS-D486B)」は後者にあたる。同製品はバルミューダの「ReBaker」と同じく、温め直しが得意なトースターで、ツインバードの中では高価格帯の製品だ。


2023年10月24日の発表会でのツインバード代表取締役社長の野水重明氏(左)とトモニパンオーナーシェフの浅井一浩氏。ツインバードはここ数年で業界のプロと共同開発した製品が増えている(筆者撮影)

このトースターは、トモニパンの浅井一浩氏と共同開発することで、職人の焼き上げを再現している。浅井氏はドイツで開催されるパン作りの技術を競う世界大会「iba cup」で、日本人で初めて優勝した職人だ。パンの種類やメニューによって最適な火加減に微調整したのが浅井氏だ。

ハード面では庫内上下にヒーターがそれぞれ2本ずつあり、上ヒーターは遠赤外線カーボンヒーター、下はハロゲン(近赤外線)ヒーターを採用している。遠赤外線カーボンヒーターは熱をすばやく伝え、下のハロゲンヒーターはじっくり熱を加えられるので、パンを表面から中心までムラなく加熱し、パン本来の香りや味を引き出すことができる。

パンモードは「カレーパン」「トースト/アレンジトースト」「クロワッサン」「フランスパン」の4つ。センサーが秒単位で計測しており、パンを含む庫内の状況を見極めて自動で調整を行う。そのため、ユーザーはモードさえ選べば、完璧な仕上がりにしてくれる。実際にクロワッサン、カレーパンを試してみたが、ベチャッとしていたパンが香ばしく焼き上がった。焦げ目がつくことがなく、カレーパンも中の具材まで温まっている。このように「匠ブランジェトースター」は、ハード面、ソフト面ともにこれまでのコスパ重視のツインバードとは、異なるアプローチで生まれた製品だ。


クロワッサンのリベイクが絶品。サクサクした食感と、バターの香りが口に広がる(筆者撮影)

ただ、バルミューダ「ReBaker」のように「フライ」モードはない。自動メニューはパンだけなので、天ぷらなどの温め直しをする場合はマニュアルモードを使う。パンのリベイクをメインにするなら、こちらのほうが操作はシンプルだ。

家電量販店でも「リベイク」をアピール

宅配やテイクアウトでもクオリティーの高いものが増えているが、加熱で失敗するとせっかく買ったパンや揚げ物などの美味しさが半減することも。「ReBaker」と「匠ブランジェトースター」があれば、そういった悩みを解消できるかもしれない。

家電量販店の売り場では、現在の高級トースターの提案「トーストを美味しく焼く」に加え、「冷凍・総菜・既存菓子パンなどをできたてのように温め直す」提案を行い、新たな購入者層の開拓を狙っているという。新生活の強化製品として特設コーナーが設けられ、特に今回紹介した2つのモデルが目玉商品として取り扱われるようだ。高級トースター市場において、パンのリベイクや温め直しに焦点を当てることで市場が再び盛り上がるのか、今後の動向に注目したい。

(石井 和美 : 家電プロレビュアー)