2024年2月に発売されたApple Vision Proは、フルカラーパススルーを使って周囲の現実と仮想空間を融合させた「空間コンピューティング」が可能なヘッドセット型デバイスです。また、チップセットにはMacにも採用されているM2が採用されているとのことで、気になるのは「Apple Vision Proでゲームはプレイできるのか」というところ。Apple製品に関するブログ・MacStoriesが、Apple Vision Proでのゲームプレイについてまとめています。

A Comprehensive Guide to Gaming on the Apple Vision Pro - MacStories

https://www.macstories.net/stories/a-comprehensive-guide-to-gaming-on-the-apple-vision-pro/

Apple Vision Proには、空間コンピューティングを利用した「空間ゲーム」がApp Storeで配信されており、Apple Arcadeだと記事作成時点で12本配信されています。この空間ゲームはいわゆるMR(複合現実)のコンテンツで、パススルーで表示される周囲の映像の中でゲームを遊ぶというものになっています。

たとえばApple Arcadeで配信されている「Super Fruits Ninja」は、飛び上がる果物を手や魔法でスパスパと切断したり、手でつかんで投げたりすることができます。MacStoriesは「果物を手のジェスチャーでスライスするだけではなく、果物の残骸が家具に飛び散ったり、部屋の周りを豚が歩き回ったりするのを見るのも楽しい」と評価しています。Apple Vision Proで遊ぶ「Super Fruits Ninja」がどんなゲームなのかは以下のムービーを見るとよくわかります。

Super Fruit Ninja for Apple Vision Pro - Official First Look at Gameplay - YouTube

「Synth Riders」はリズムゲームで、曲と同時に流れてくるボールに合わせて手を動かしたり拍手したりしてプレイします。MacStoriesは「没入型の体験とカスタムジェスチャが特徴で、Apple Arcadeで配信されている他のゲームとは一線を画しています」と高く評価しています。以下のムービーは「Synth Riders」のゲームプレイデモ。

Synth Riders Gameplay | Apple Vision Pro | Apple Arcade - YouTube

部屋中に浮かぶ泡を壊すパズルゲーム「Blackbox for Vision」は、体全体を使って試行錯誤する必要があり、周囲の環境をうまく活用したゲームになっているとMacStoriesは評価。以下のムービーを見ると分かる通り、Blackbox for Visionにはテキストによる説明や複雑なUIはなく、シンプルなデザインとなっています。

Blackbox for Vision - YouTube

しかし、配信されているゲームの中には「Apple Vision Proでプレイしなくてもいいのでは?」と思うようなタイトルがあるとのこと。例えばパズルアクションゲームの「Cut the Rope 3」は、以下のムービーを見るとわかるようにゲーム画面が立体的ではあるものの、現実と仮想の融合を楽しめる空間コンピューティングの恩恵にあずかれているかというとそうではありません。MacStoriesは「iPhoneのゲームを3Dのジオラマに押し込んだものとほとんど変わらず、見た目はいいですが3D効果はゲーム自体に関係ありません」と述べています。

Cut the Rope 3 for Apple Vision Pro - YouTube

シューティングゲームの「Jetpack Joyride 2」も、視界全体を占める没入感はあるものの、Cut the Rope 3と同様に空間コンピューティングでプレイする意味があまり感じられないとのこと。さらに、Jetpack Joyride 2の場合はゲームスピードの速いアクションゲームでピンチなどのハンドジェスチャを使うのは非常に難しいとMacStoriesは指摘しています。

Jetpack Joyride 2 for Apple Vision Pro - Launch Trailer - YouTube

また、visionOSにはiPadのアプリが動くような互換性があります。すべてではないですが、iPad向けゲームのいくつかはApple Vision Proでも動作したとのこと。しかし、iPad・iPhone向けにリリースされている「バイオハザード ヴィレッジ」や「バイオハザード RE4」「デス・ストランディング」「エイリアン:アイソレーション」などのPC向けAAAタイトルはいずれもApple Vision Proで動作しなかったとMacStoriesは報告しています。

App StoreやApple Arcadeを使わない方法でゲームをプレイするには、Xbox Cloud GamingやNVIDIA GeForce NOWなどのゲームストリーミングサービスを使うという方法がありますが、記事作成時点ではこれらのゲームストリーミングサービスのアプリはApp Storeで配信されていません。また、Xbox Cloud GamingやNVIDIA GeForce NOWを全画面で実行できるホームスクリーンウェブアプリとして起動するという方法もありますが、visionOSのSafariがPWAをサポートしていないため、Apple Vision Proでは不可能だとのこと。

そこで、MacStoriesは「Nexus+」というブラウザを紹介しています。Nexus+は、Xbox Cloud GamingやNVIDIA GeForce NOWをサポートしているほか、ウェブベースのエミュレーターであるAfterplayにも対応しているとのこと。また、Nexus+はフレームレスブラウザなので、ゲーム画面内にブラウザのUIが表示されず、ゲームに集中できるというわけです。

以下はNexus+でNVIDIA GeForce Nowにアクセスし、「サイバーパンク2077」をプレイしているところ。Apple Vision Proはインターネットに有線接続できないので、Wi-Fi経由でのストリーミングですが、十分キレイに表示されて問題なくプレイできたとのこと。



また、PlayStation 5あるいはXbox Series X/Sであれば、リモートプレイアプリを使うことでApple Vision Proに画面をストリーミングできます。公式のリモートストリーミングアプリはApple Vision Proでは利用できませんが、サードパーティー製のアプリを使えば可能になるとのこと。

以下は、リモートプレイアプリ「MirrorPlay」を使ってPlayStation 5の「The Last of Us Part II」をApple Vision Proでストリーミングプレイしているところ。PlayStation 5と同じ階でプレイしていれば基本的に遅延はほとんどなく、問題なくプレイできたとのこと。MacStoriesは「Apple Vision ProとMirrorPlayでPlayStation 5をプレイできるので、解放されたテレビを家族が視聴できます」と述べています。



ただし、Apple Vision Proでリモートプレイをするには、Bluetooth接続が可能なコントローラーが必要になります。MacStoriesによると、コントローラーをApple Vision Proとペアリングしてからまた別のデバイスとペアリングすると、再びApple Vision Proでコントローラーのペアリングをする必要があるため、Apple Vision Pro用のコントローラーを別途用意することをおすすめしています。

また、NDIを使ったローカルネットワーク上のストリーミングも1つの手です。NDIを使うことで、ロスレスオーディオで最大4K・60fpsで映像をストリーミングすることも可能になります。

MacStoriesは「Kiloview N40」というエンコーダーと、NDIモニターアプリ「Vxio」を使って、PlayStation 5やXbox Series X/Sなどの家庭用コンソールをApple Vision Pro上でプレイする試みを行っています。

結果としては、フレームレートがかなり不安定であり、プレイに支障が出たとのこと。Kiloview N40はおよそ700ドル(約10万5000円)と非常に高価で、さらにネットワークに有線接続する必要があることから、コストも要件もかなり厳しいものになります。ただし、NDIの設定に詳しい人が同じ試みをしたところ、Apple Vision ProにPlayStation 5の画面をNDIで転送した上で、「龍が如く8」を問題なく遊べたとのことなので、徹底的なテストとエンコード品質の調整が必要だと述べています。



Macを持っている場合は、Apple Vision ProにMacをミラーリングするという方法もあります。実際にMacStoriesは、Mac上でサイバーパンク2077を画質「Ultra」・レイトレーシングオンでプレイしたところ、多少画質は落ちるものの、プレイはできたと述べています。



最終的にMacStoriesは「いろいろ試した中で一番気に入ったのは、Nexus+を使ってNVIDIA GeForce NOWやAfterplayによるエミュレーションでゲームをプレイすることです。これが最も問題が少なかったと思います。特にNVIDIA GeForce NOWはWi-FI接続が不十分でも遊べるように設計されています」と評価しました。

また、MacStoriesは「結局のところ、Apple Vision Proには有線接続用のポートがないことが問題です。App Storeで入手可能なゲームに依存していない限り、何らかのワイヤレス接続を駆使する必要があります。App Storeには楽しいゲームがいくつかありますが、その選択肢はiOS・iPadOS・macOSよりもはるかに限られています」と論じ、Apple Vision ProにThunderboltポートが追加されることに期待を寄せています。