30分で開発したのに5000万円以上の売上を記録したゲームとは?

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技術の進歩によってゲームのダウンロード販売が当たり前になり、個人が開発したゲームをPlayStation 5やNintendo Switchなどの家庭用ゲーム機でも簡単に配信できるようになりました。そのため、ダウンロード販売ストアに並ぶゲームはまさに玉石混交で、中には「これって本当にゲームなの?」と首を傾げたくなるようなものもあります。30分ほどで開発したゲームでなんと5000万円以上の売上を得た開発者を、イギリス日刊紙のThe Guardianが特集しています。

Stroke of genius? How one developer earned over £250k from games made in 30 minutes | Games | The Guardian

https://www.theguardian.com/games/2024/feb/15/stroke-of-genius-how-one-developer-created-a-hit-game-in-just-30-minutes

The Guardianが取り上げた「ストローク」はPlayStation Storeでダウンロード販売されているゲームシリーズ、定価550円で購入できます。以下は「ストローク・ザ・ドッグ」ですが、犬の他に猫、うさぎ、亀、、ビーバー、ハムスター、ヘビなどさまざまな動物のバージョンが用意されています。

ストローク・ザ・ドッグ

https://store.playstation.com/ja-jp/product/JP7943-CUSA36657_00-0973185763005683

「ストローク・ザ・ドッグ」のゲーム画面は以下のムービーで確認できます。

Stroke The Dog Gameplay/Walkthrough - YouTube

ゲームをスタートすると画面中央に犬が表示されます。他には左上には「0 Strokes」と書かれているのみ。



✕ボタンを押すと、犬が点滅します。すると、✕ボタンを押した回数分だけ左上の数字が増えます。Stroke(なでる)ということなので、おそらく犬が点滅したということは犬をなでたことを示している模様。ただし、犬はただの静止画なので、点滅する以外に何も動きはありません。



25回なでるとトロフィーが解除されました。



なでた回数によってトロフィーが解除され、2000回なでたらプラチナトロフィーが解除されました。これでこのゲームでやることはすべてなくなりました。ゲームには一切の動きはなく、効果音もなく、単にクリエイティブコモンズライセンスに基づく動物の写真と申し訳程度のBGMがあるだけ。動物が違っても、表示される動物の写真が変わるだけで、内容は全く同じです。



ゲームにはさまざまな目標が設定されますが、近年のゲームではトロフィー(実績)がゲームプレイにおける目安の1つとなっています。実績に設定された目標をゲーム内で達成すると、自分のアカウントに記録されます。これはプレイヤーにとっては大きな誇りであり、トロフィーを集めるためにクリア済みのゲームを何度もプレイする人も多くいます。そのため、「ストローク」シリーズのようにプラチナトロフィーを集めるためだけのゲームが多く配信されています。

「ストローク」シリーズ開発者のT・J・ガードナー氏は、「ストローク」シリーズはゲームなのか?というThe Guardianの問いに対し、「『ゲーム』をどのように定義するかによります。インタラクションはあります。もちろん非常に限定されたものですが、目標も設定されています。全く難しくなく複雑でもありませんが、それでもゲームです」と答えています。

ガードナーさんは独学でプログラミングを習得しており、2022年9月に初めてリリースされた「ストローク・ザ・ドッグ」の製作時間はおよそ7〜8時間かかったそうです。しかし、今では30分程度で開発できてしまうとのこと。この初めて作った「ストローク」は記事作成時点で12万回以上ダウンロードされ、27万5000ポンド(約5200万円)の売上を記録しました。PlayStation Storeはゲームの売上の30%が手数料となるため、ガードナー氏の手元に入ってきたのは約3600万円ほどです。

ガードナー氏は「調べてみたところ、PlayStation Storeの品質保証を通過するのは非常に簡単であることがわかりました。2022年に『ストローク・ザ・ドッグ』を問題なくストアに登録できたので、今度は明らかに違う動物を使って登録を試してみました」と語っています。

結果として「ストローク」シリーズタイトルは大量に存在しています。ガードナー氏によると、一番人気が高いのはハムスターで、次が猫、3位はなんと亀だそうです。「ストローク・ザ・ハムスター」は記事作成時点で1万1105本売れたそうですが、その中で返金を求めたのはわずか10人だったとのこと。



ただし、インターネット上ではガードナー氏のやり方に対して批判的な意見も多く存在し、PlayStation Storeに「ストローク」シリーズの登録を許したソニーを非難する声もあります。ソニーもこうした非難を受けて、「『ストローク』シリーズのようにトロフィーを集めるだけのゲームはPlayStation Streから排除する」というメッセージを開発者に送ったそうですが、記事作成時点でソニーが実際にトロフィー集め用ゲームを排除している形跡はないとのこと。

なお、ガードナー氏は売上の一部を借金返済に使ったそうで、「ストローク」シリーズをリリースしたことを後悔しているかというThe Guardianの質問に対し、「正直に言うと、いいえ。家族のためにやったことなので、私は家族を助けるためにやったことを決して後悔しません」と答えています。また、ゲーム内の実績について複数プラットフォームで確認できるサイト「GameAchievment.com」の運営費にも使っているそうです。