会見で撮影に応じるユーリ阿久井政悟(左)とアルテム・ダラキアン【写真:浜田洋平】

写真拡大 (全2枚)

Amazon プライム・ビデオで生配信

 ボクシングのWBA世界フライ級1位・ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)が23日、エディオンアリーナ大阪で6度防衛中の王者アルテム・ダラキアン(ウクライナ)に世界初挑戦する。21日は大阪市内のホテルで会見。戦禍のウクライナから来日した王者に敬意を払いつつ、悲願の王者奪取へ勝利を譲らない姿勢を貫いた。戦績は28歳の阿久井が18勝(11KO)2敗1分け、36歳のダラキアンが22勝(15KO)。

 阿久井は支えてくれるスポンサーロゴを貼った長袖シャツで会見に出席した。「順調に来ていて、凄く体調もいいです」。もともと試合は11月だったが、メインイベントのWBA世界バンタム級王者・井上拓真(大橋)が肋骨骨折。興行が延期になっていた。当初は「マジか!」と驚いた延期。1週間休養を入れ、再び心身ともにつくり直した。

 隣りに座る王者ダラキアンは、ロシア侵攻を受けるウクライナから来日。母国はもちろん、日本のファンにも現状を知ってもらいたい想いがある。

「多くの人が家をなくし、命を亡くし、親しい人を亡くした。失われることを身近に体験したんだ。何より命が大変ということを体験した。練習相手を見つけるのが大変。ウクライナに来てくれるスパーリングパートナーがいない。それでも、チームが交渉して助けてくれて、練習環境の確保ができた」

 陣営は苦労してメキシコ人パートナーを招聘。最初は渡航に難色を示していたそうだが、粘り強い交渉で協力を得た。尽力したユーリ・ルーバン・プロモーターは王者に続いて言う。

「今のウクライナには、国民にとってどんな勝利も意味を持ちます。勝利を持ち帰ることが国民に元気、勇気を与える。その中には子どももいるし、多くの人が勝利によって励まされる。勝利はどんなものも楽に手に入るわけではない。今回それを改めて実感したし、勝利を必ず持ち帰りたいです。

 戦時中ですが、この場で日本の方々にお礼を申し上げたいことがあります。我々がウクライナを出る前に日本の外務大臣がウクライナを訪問してくれました。感謝を申し上げます。(スパー相手は)どんなに強くて勇気のある選手でも、(渡航には)ビックリしていた。大変だったけど協力してくれた。だから、勝利はウクライナにとって大きな意味を持つんです」

阿久井「ウクライナが大変な中で来ていただいた」

 ダラキアンは「国で準備をしている時に動画、資料をかなり見てきた。良いボクサーの印象」と挑戦者を警戒。一方、阿久井も「落ち着いている印象です。6度防衛している王者なので。どういう選手かしっかり見てきた」と準備を進めてきた。想いを知っても勝利を譲るわけにはいかない。王者に敬意を抱きながら拳を交える覚悟だ。

「ウクライナが大変な中で来ていただいている。現地(ウクライナ)の人にもいい試合を見せたい。日本では石川県の震災もあって、大変な思いをしている。皆様にいい試合を届けたいです。岡山県のジムから世界王者は誰もいない。自分が成し遂げて元気を与えたい」

〇…興行は「Prime Video presents Live Boxing」の第6弾として開催される。メインイベントではWBA&WBC世界ライトフライ級2団体統一王者・寺地拳四朗(BMB)が、元WBA正規王者のWBA1位&WBC2位カルロス・カニサレス(ベネズエラ)と防衛戦を予定。セミファイナルでは、東洋太平洋スーパーバンタム級6位&日本同級7位・那須川天心(帝拳)がボクシング転向3戦目として121ポンド(約54.89キロ)契約8回戦に臨み、ルイス・ロブレス(メキシコ)と対戦する。与那覇勇気(真正)と辰吉寿以輝(大阪帝拳)の54.5キロ契約8回戦も行われる。

(THE ANSWER編集部)