アメリカ女子ツアー本格参戦2年目となる2023シーズン、古江彩佳は未勝利に終わったものの、メジャー大会の全米女子プロ(8位タイ)、全米女子オープン(6位タイ)をはじめ、トップ10フィニッシュが8回。同ツアーのCMEグローブ ポイントランキングで日本人最上位の10位という好成績を残した。迎える今季はさらなる飛躍が期待されるが、彼女の強さの秘密、身長153cmと小柄ながら世界最高峰の舞台でも戦える理由について、永久シード保持者の森口祐子プロに話を聞いた――。


米ツアーでも安定した成績を残して活躍している古江彩佳。photo by Getty Images

 優勝こそありませんでしたが、古江彩佳さんは昨シーズン、アメリカ女子ツアーですばらしい成績を残しました。CMEグローブ ポイントランキングでは、日本人最上位の10位でした。

 飛距離は245ヤードとツアー142位ながら、ティーショットの正確さを示すドライビング・アキュラシー(フェアウェーキープ率)は84.8%で2位。グリーン・イン・レギュレーション(パーオン率)が72.7%(26位)で、バーディー数は315個と10位でした。

 こうした数字からもわかるように、飛距離の優位性が高い米ツアーで彼女が好成績を残せたのは、ショットの安定性が優れていたからです。

 彼女は以前、「自分のゴルフはティーショットで組み立てるので、フェアウェーキープを重視している」とコメントしています。昨季のフェアウェーキープ率2位は、その証明のようなものでしょう。

 また最近、私が古江さんにクラブで一番こだわっている点について聞いた時、「自分はウェッジ系統からスイングを作ってきた」ということで、「クラブを開いたりして使うので、バックライン(グリップの後ろ側にライン状に盛り上がった突起)は入っていないほうがいいです」とこだわりを口にしていました。

 彼女はウェッジ以外のクラブも、グリップはすごく柔らかく握っています。そして、手首も腕も柔らかく使えているので、一定のリズムできれいな軌道を描くスイングができます。それが、ショットの安定につながっているのだと思います。

 この正確で安定したウェッジとアイアンのショットがあるから、古江さんはティーショットで海外の選手たちに飛距離で置いていかれても、動じる様子はありません。ティーショットでボールがフェアウェーにあれば、2打目、3打目でピンを差すショットが打てる――それが、彼女の強みだからです。

 古江さんのことはアマチュア時代から見ていますが、精神的にもいつもフラットというか、安定しているタイプ。そこも、彼女の強さのひとつです。

 しかし2021年のオリンピック、東京大会の代表の座を、最後の最後で稲見萌寧さんに逆転されて逸した際には、会見で号泣していたと聞いています。母親のひとみさんに当時のことを聞くと、古江さんは「もう魂が抜けたようになっていた」と言います。

 それで「このままじゃダメだ」と思ったひとみさんは、「思いきって(海外メジャーの)『エビアン』に行ったら」と、古江さんの背中を押したそうです。

 そして、そのアムンディ エビアン選手権で4位に入った古江さん。自分のゴルフでも海外の試合で通用すると感じられたことで自信を取り戻し、それが今の米ツアーでの活躍につながっているわけです。

 ひとみさん曰く、「あの試合に行っていなかったら、もうダメだったと思います」というほどの状態だった古江さん。エビアン選手権のコースは丘陵地にあり、傾斜地からのショットを強いられることも多いので、ショットメーカーの古江さん向きですし、タイミング的にも本当にいい選択だった、と私も思います。

 今年の夏には、パリ五輪があります。本人が気にしていないとしても、大会が近づくにつれて五輪代表の話題がつきまとうことになるでしょう。それは、実力者たちの宿命と言えるかもしれませんね。

 今年は辰年で、古江さんは年女。それも、巡り合わせ、というものでしょうか。昨年にも増して、米ツアーでの活躍を期待したいと思います。