18年間のプロ生活に別れを告げた太田。濃厚な日々を1つ1つ丁寧に振り返った。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

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 攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝く選手たちのサッカー観に迫る連載インタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第35回は、今季をもってFC町田ゼルビアで現役を引退した太田宏介だ。

 36歳、日本代表でも7試合に出場したレフティは、横浜FCでプロキャリアをスタート。都並敏史監督の熱血指導のもと、左SBとして頭角を現わした後、清水エスパルスに活躍の場を移すと、Jリーグを代表する選手となった。

 以降、最も長く過ごしたFC東京、名古屋グランパスほか、オランダのフィテッセ、オーストラリアのパース・グローリーでもプレーし、2022年夏に生まれ故郷の町田に加入。そして青森山田高で一時代を築いた黒田剛監督を迎えた今季、J2優勝を成し遂げ、クラブ史上初のJ1昇格の快挙とともに、18年間のプロ生活に別れを告げた。

 明るい性格で知られ、誰からも愛された太田に、まずは今年1年を振り返ってもらった。

【インタビューPHOTO】「底辺中の底辺からスタート」した太田宏介が愛する町田で有終の美!“幸せを運ぶエンジェルレフティ”を直撃
 
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 選手もスタッフも大きく入れ替わったなかで、最初は不安もありました。クラブ全体が1つとなって、同じ目標に向けて戦えたことが、この大きな結果を残せた要因です。シーズン前からシーズン後まで、本当にみんなが結束力を高めてまとまった、すごく良いチームになったなと思います。

 昇格は嬉しいですね。プロ1年目に横浜FCで経験しましたけど、その当時はなかなかゲームに絡めませんでしたし。18年間のキャリアの最後と位置付けたこの1年で、地元町田でこのような結果を残すことができて、本当に、本当に幸せです。

 生まれ育った町田に、かつて所属したFC町田(現FC町田ゼルビアジュニアユース)に、キャリアの最後に戻ってきて、J2優勝、昇格という大きな目標を成し遂げられたこと。小さい頃に見ていた野津田の景色とは全く違った、大きくなった野津田であれだけ多くの方に見守っていただいて、優勝のシャーレを上げることができて、セレモニーもしていただいて、あの光景がキャリアで1番嬉しかったですね。
 53歳にして、今季がJリーグデビューだった黒田監督はいったいどんな人物なのか。これまで様々な指揮官とともに戦ってきた太田は、“勝利至上主義”を強く感じたようだ。ビルドアップ全盛のこの時代に頑として貫く、己のスタイルは非常に興味深い。

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 黒田監督はあまり選手との距離感が近過ぎず、かといって遠過ぎず、すごく絶妙な距離で僕たちに接してくれました。ピッチを離れれば、とても気さくで優しい方ですけど、ピッチに入った時は、やっぱり勝負に対するこだわりや熱意はすごく伝わりましたし、言語化するのがとても上手なので、ミーティングやピッチ上でのアドバイス、指示はシンプルで分かりやすいです。

 プロとして何年かやっていく選手って、「球際で負けない」とか、勝負に勝つために1番大事にしなきゃいけない部分をなんとなく分かってはいるけど、薄れてきてしまう。その部分を監督は本当に口酸っぱく、シーズンを通して言ってくれて、意識が格段に上がったと思います。
 
 ただ守備をするだけじゃなくて、相手選手とボールをしっかり同一視野に置きながら、目の前の選手にやらさないことの徹底、身体の動き、視野の確保を本当に細かく、指導してくれました。そうした意識の徹底で、失点を昨シーズンよりも大幅に減らせた。とにかく、守備に対して細かったですね。

 黒田監督はおそらく今年1年での昇格を命じられていたと思うので、「リスクを負わない」のは昇格、優勝するための1番の近道ですよね。理想のサッカーは監督やコーチ陣にあると思うんですけど、やっぱり見ていて、ビルドアップ、パスを繋ぐことが美徳とされて、そのスタイルを追求しているチームでも、もったいない失点があまりに多い。

 マリノスに(アンジェ・)ポステコグルー監督が入った初年度はまさにそうだと思うし、今のトッテナムを見ても、やっぱり多いじゃないですか。1失点、2失点は後ほど大きなものになるので、黒田監督はそこはもう一切リスクを負わない。

「キーパーからの繋ぎでボールを失ったら失点になる」と口酸っぱく言われていました。まずは理想を追うよりも現実。今、目の前の試合で勝つためのサッカーを追求したのが、今年の監督、黒田さんだったなと。

 ユニホームを脱ぎ、元サッカー選手としてはルーキーとなった太田は、現在の生活スタイルにも言及。すでに新たな一歩を踏み出している。

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 DAZNさんやABEMAさんから色々な話をいただいて、ここまでメディアの仕事が多いです。空いた時間は次の仕事の準備や人と会ったり。夜は毎日会食ですね。お世話になった方への挨拶周りも含めて、分刻みのスケジュールでずっとやっています。ほとんど都内にいなかったりするので、家族とほぼ会えていないです。
 
 僕はすごく家庭環境が苦しくて、経済的に大変だった過去があるなかで、去年から続けている取り組みがあります。同じような境遇にある子だったり、誰もが平等に楽しめるような、スポーツを通したイベントです。サッカーのOBや選手が来るだけじゃなくて、芸人さんやタレントさんにも来てもらって、子どもたちが楽しめるようなものになっています。

 イベント+社会貢献活動のようなものを準備しています。年末も沖縄であり、それにも力を入れています。

 これまでたくさんの方に支えていただいたので、今後まずはサッカー、スポーツを通して強烈な恩返をしていきたいのと、サッカーを離れて新しくビジネスを始めるので、現役時代よりもたくさん稼いで、家族をもっともっと幸せにしたいです。

※後編に続く。次回は12月29日に公開予定です。

取材・構成●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)