井上尚弥選手(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

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プロボクシングのスーパーバンタム級4団体王座統一戦が2023年12月26日、東京・有明アリーナで行われ、WBC・WBO同級王者・井上尚弥(大橋、30)がWBA・IBF同級王者マーロン・タパレス(フィリピン、31)を10回KOで破った。井上はバンタム級に続いて世界4団体王座統一に成功し、戦績を26戦全勝(23KO)とした。

スーパーバンタム級転向2戦目で4本のベルトを統一したモンスター。次戦は元世界2階級制覇でWBC同級1位ルイス・ネリ(メキシコ、29)が有力視される。ドーピング疑惑、体重超過で世界王座をはく奪されるなど日本のファンの間で「悪童」として知られるネリだが、果たして井上の牙城を崩すことができるのか。J-CASTニュースは、TMKジムの金平桂一郎会長(58)に分析してもらった。

「井上がパンチを受けてヒヤリとする場面も」

タパレス戦では改めて強打を証明した。4回にダウンを奪い流れを引き寄せると、その後はパンチを上下に打ち分けタパレスにダメージを与えた。タパレスの疲労の色が濃くなった10回、井上の右ストレートでダウンしそのまま立ち上がることができず10カウントを聞いた。井上は史上2人目となる2階級での4団体王座統一を達成した。

タパレス戦を映像で確認したという金平会長は「井上選手はいつもより足が動いておらず正対している時間が長かったという印象を受けました」と切り出し、「もっとタパレス選手をさばくのかと思っていまし、パンチを受けてヒヤリとする場面も何回か見受けられました。もしタパレスが勝つならば乱戦になった時だと予想していましたが、その乱戦になりかけた場面もありました。それでも倒すのだから大したものだと思います」と振り返った。

タパレスを仕留めるのに10ラウンドを要したが、金平会長はスーパーバンタム級の「階級の壁」を感じなかったという。次戦の有力候補はタパレスと同じサウスパーのネリだ。バンタム級、スーパーバンタム級を制し現在WBC1位につけている。元WBCバンタム級王者・山中慎介(帝拳)と対戦した2試合ではドーピング疑惑、体重超過の失態を犯し悪名高いが、実力は世界トップクラス。戦績は35勝(27KO)1敗を誇る。

「井上選手が全く揺るがないかといえば、そうでもない」

金平会長は「ネリはタパレス戦を見て光明を見出しているかもしれない」とし、その理由を説明した。

「乱戦にもっていった場合、井上選手のボディーショットが当たれば終わってしまうと思いますが、そこはネリ選手も計算するでしょう。なによりもパタレス選手のパンチが当たる場面があったので、ネリ選手からしてみれば『パンチが当たる』というイメージを持ったと思います。攻撃力はタパレス選手よりネリ選手の方が上。防御技術でいえば、タパレスには柔らかさがあるがネリが劣っているという事はないと思います」

さらに「ネリ選手は1発良いパンチを当てると強いコンビネーションが続く。3発、4発、5発と連打が飛んでくる。それがネリ選手の特徴です。非常に回転力がある。総合力では井上選手が上だが、ネリサイドの心境としては少し光明が見えたと感じたと思います。ネリ選手の右フック、右アッパーが当たるときつい。井上選手が全く揺るがないかといえば、そうでもないと感じました。ネリ選手が危険な存在であることに間違いないと思います」との見解を示した。