「まさかの乗車拒否?」 空車なのに手を挙げてもスルーのワケ! 意外なルールの中身とは
タクシーが超えられない営業区域の壁
フロントガラスには「空車」が見えているタクシーが、手を挙げているのに停まってくれない。こんな経験をしたことはありませんか。
なぜ「空車」なのにスルーされることがあるのでしょうか。
タクシードライバーは、乗車したい意思を示している人に対して正当な理由なく乗車を拒否すると、旅客自動車運送事業運輸規則や道路運送法に違反してしまいます。
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それなのになぜ、通り過ぎてしまうのでしょうか。
ひとつには、手を挙げた場所がタクシードライバーの営業区域外だった可能性があります。
タクシー業は営業区域が法令で定められていて、お客さんを乗車させたり降車させたりする、そのどちらかが営業区域内でなければなりません。
たとえば、東京のタクシー営業区域は、23区を中心とした特別区・武三交通圏のほか、北多摩交通圏、南多摩交通圏、西多摩交通圏、島地区の5つに分割されています。
仮に、西多摩交通圏に属するタクシーが、区域内でお客さんを乗せて特別区・武三交通圏で降ろしたとしましょう。
この場合、続けてその場でほかのお客さんを拾い、西多摩交通圏まで戻って降ろすのはOK。降車するのが営業区域内だからです。
しかし、たとえば北多摩交通圏まで行きたいというお客さんを乗せることはできません。つまり、発着地のどちらも営業区域ではない運行はできないのです。
タクシー事業者によっては営業区域外で乗車できない場合「回送」の表示を出すケースもあるようですが、全国的なルールではないのだとか。
そのため「空車」サインのまま営業区域へ戻るドライバーもいるようです。
また一方で、営業区域の中でも、ある時間帯だけ営業してはいけないエリアがあることをご存じでしょうか。
たとえば東京の銀座では、平日の午後10時から翌日午前1時まで道路上での営業は禁止。ドライバーがお客さんを乗せられるのはタクシー乗り場のみです。
これは、客待ちタクシーの駐車防止などのためタクシー業務適正特別措置法により定められたものですが、知らない人からのタクシーに乗車拒否されたという声も多く聞かれます。
交通ルールやマナーを守れないと停まってくれない
タクシーが停まってくれないといっても、そもそも手を挙げた場所がクルマを停められない環境だったということも考えられます。
たとえば、交差点に近い場所やバス停、消火栓の前といった駐停車が禁止されている場所。
また、急に手を挙げられても、ドライバーは急ブレーキで停まることはできません。
よくあるのが、中央車線を走っているタクシーに手を挙げるパターン。しかし、車線変更が難しければクルマを寄せることはできません。
反対に、ときにはドライバーが手を挙げたお客さんに気づかないこともあるようです。
では、タクシー乗り場ではどうでしょうか。
この場合は、列に並ばず手前などで手を挙げても、混乱を避ける観点から乗せてもらえることはないようです。
とはいえ、タクシーの運転手は、業務上はお客さんが手をあげたら止まらなくてはなりません。前述の事情以外では、基本的には止まってくれるはずです。
しかし、場合によっては、止まってくれたとしても、目的地まで乗せてくれない場合があります。
タクシー会社の担当者は、次のように話します。
「空車表示のあるタクシーは、お客さまからの合図があれば基本的に止まるようにしています。
しかし、お客さまの行き先が営業区域外だった場合は、お断りせざるをえません。
また、お客さまが明らかに泥酔状態になっていて通常な会話が困難であったり、お客さまの服が汚れていて次に乗るお客さまに支障が出る場合も乗車をお断りする可能性はあります。
当社ではお客さまからの合図があるのに止まらないのは適切ではないと考えています」
このように、空車表示のタクシーが止まってくれたとしても、必ず乗せてくれるとは限らないので注意が必要です。
しかし、タクシー会社的にはタクシーは基本止まるものである、という認識のようです。
タクシーが停まってくれないのにも、さまざまな事情があります。
乗車可能なのはもちろん「空車」です。クルマが空の状態を表すのでいつでも利用できます。
最近では外国人観光客に向けて「空車 VACANT」と表示するタクシーも増えてきました。
一般的にわかりにくいのは「回送」ではないでしょうか。
「回送」は、仕事を終えて帰庫している状態や、車両が故障している、ドライバーが休憩しているなど乗客を乗せる意思がないときに表示します。
表示されている場合は乗車できませんが、タイミングが合えば乗せてもらえるかもしれません。
まれに、ドライバーがトイレや燃料補給などの際に「回送」を表示し忘れて「空車」のまま走行することもあるのだとか。このような場合は乗せてもらえることは少ないでしょう。
※ ※ ※
タクシードライバーは法令や交通秩序を守りながら走行しており、これまで乗車拒否と思っていたことも勘違いだった可能性があります。
確実に乗りたいという場合は、スマートフォンの配車アプリを利用するのもよいでしょう。
また、万一、走行距離が短いといった明らかに不当な理由で乗車を拒否された場合は、各地のタクシーセンターに通報してください。