中国のネット業界全体の成長が鈍化するなか、テンセントは先んじて成長トレンドに復帰した(同社ウェブサイトより)

中国のネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)の業績が持続的な回復を見せている。

同社は11月15日、2023年7〜9月期の決算を発表。売上高は1〜3月期以降の増収トレンドを引き継ぎ、前年同期比10%増の1546億2500万元(約3兆2125億円)を計上した。投資損益やストックオプションなどを差し引いた非国際会計基準(非IFRS)の純利益は449億2100万元(約9333億円)と、前年同期比39%の増益となった。

「高い質を伴う成長フェーズ」

「2021年から2022年にかけては売上高の伸びが鈍化し、利益については減少を余儀なくされた四半期もあった。だが、2023年に入ってからは売上高の安定した成長が、それを上回るペースの利益増加につながっている」

テンセント総裁(社長に相当)の劉熾平氏は決算説明会でそう述べ、好循環の背景を次のように語った。

「わが社は高い質を伴う売上高の成長フェーズに入った。その駆動力となったのは、非中核事業からの撤退、マーケティング費用の圧縮、社内組織の最適化など(2年前から進めてきたリストラの成果)だ」

事業セグメント別の業績を見ると、7〜9月期はオンラインゲームを中心とする「付加価値サービス」が前年同期比4%増の757億4800万元(約1兆5737億円)を売り上げ、総売上高の49%を占めた。

そのうちオンラインゲームに関しては、海外市場向けが前年同期比14%増の133億元(約2763億円)と、総売上高を上回る伸びを見せた。一方、国内市場向けは同5%増の327億元(約6794億円)だった。

ゲームのタイトル別では「絶地求生(PUBGモバイル)」の売り上げが回復し、「勝利女神:妮姬(勝利の女神:NIKKE)」、「VALORANT」、「トリプルマッチ3D」なども好調だった

独自の生成AIを顧客に開放

ゲーム以外の基幹事業では、オンライン広告事業の売上高が257億2100万元(約5344億円)と前年同期比20%の伸びを記録。また、フィンテック・法人サービス事業は520億4800万元(約1兆813億円)と同16%増加し、好調ぶりが目立った。


テンセントは広告素材を自動生成できるAIツールを顧客に提供している(写真は同社のデモンストレーション動画より)

世界的な注目分野であるAI(人工知能)に関しても、テンセントは既存サービスとの融合を着々と進めている。同社は9月7日、独自開発した大規模言語モデル(生成AI)の「混元(フンユエン)」を発表。これまでに180を超える社内業務で利用可能にし、社外の企業顧客への開放も始めた。


本記事は「財新」の提供記事です

例えば、テンセントの広告主は混元のAIコンテンツ生成ツールを利用して、テキストの指示により(イメージ画像などの)広告素材を自動的に作成できる。また、既存の広告素材を適切に組み合わせることで、さまざまなサイズの広告を自動生成することも可能だ。

(財新記者:関聡)
※原文の配信は11月15日

(財新 Biz&Tech)