花咲くような星形成領域が見事な“おとめ座”の棒渦巻銀河 ハッブル宇宙望遠鏡で撮影
こちらは「おとめ座」(乙女座)の方向約2000万光年先の棒渦巻銀河「NGC 5068」です。画像の上部には星が密集した中心部分の明るい棒状構造があり、若い星々に青く彩られた渦巻腕(渦状腕)が視野一面に広がっています。
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された棒渦巻銀河「NGC 5068」(Credit: NASA, ESA, R. Chandar (University of Toledo), and J. Lee (Space Telescope Science Institute); Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America))】
幾つものバラが咲き誇っているかのような赤い領域は、若い大質量星から放射された紫外線によって電離した水素ガスが光を放っている「HII(エイチツー)領域」です。HII領域はガスと塵を材料に星が形成される星形成領域でもあり、新たな星が誕生する現場であることから“星のゆりかご”と呼ばれることもあります。
アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、NGC 5068ではウォルフ・ライエ星と呼ばれるタイプの星が少なくとも110個見つかりました。ウォルフ・ライエ星は大質量の恒星であるO(オー)型星が進化した姿で、約1000万年以下とされる短い生涯を終えつつある段階にあります。星の外層から大量の水素が恒星風として放出されて失われたことで、ウォルフ・ライエ星では高温の内層がむき出しになっていると考えられています。一般的なウォルフ・ライエ星の質量は太陽の25倍以上、明るさは太陽の最大100万倍とされており、天の川銀河では約220個見つかっています。
この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」で取得したデータ(近紫外線・可視光線・近赤外線のフィルターを使用)をもとに作成され、NASAから2023年10月6日付で公開されました。ちなみに、NGC 5068は近隣の銀河のガス領域における星形成を学ぶ研究の一環として「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)」でも観測されており、2023年6月に画像が公開されています。
関連:ウェッブ宇宙望遠鏡で観測した“おとめ座”の棒渦巻銀河「NGC 5068」の中心付近(2023年6月10日)
【▲ 棒渦巻銀河「NGC 5068」の全体像(左下)に、ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した画像(右上)の範囲とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で撮影した画像(右下)の範囲を示した図(Credit: NASA, ESA, R. Chandar (University of Toledo), and J. Lee (STScI); Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America), DECam, Victor M. Blanco/CTIO, CSA, J. Lee and the PHANGS-JWST Team)】
Source
NASA - Hubble’s Multi-Wavelength View of Recently-Released Webb Image
文/sorae編集部