「若者の支持率」ついに10%!“増税メガネ”にウンザリだ…鬼の岸田政権「税収増を国民に還元」が全く信用ならない理由

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 岸田文雄首相の「次の一手」が注目されている。突然の“減税宣言”で歓心を買ったかと思いきや、自らが模索していた年内の解散総選挙実施が難しいと見るや一気にトーンダウンし始めたからだ。経済アナリストの佐藤健太氏は「首相は『聞く力』があると自負していたが、今や国民の声を『最も聞かない人』に映る」と指弾する。はたして、生活苦で奔走する人々の声は届くのか――。

「コストカット型経済」から「成長型経済」への転換を急ぐ政府

「コロナ禍を乗り越えた国民の皆様は、今度は物価高に苦しんでいる。今こそ、この成長の成果である税収増等を国民に適切に還元するべく、経済対策を実施したいと考えている」

 岸田首相は9月25日の記者会見で、このように国民への「還元」を約束した。

 さらに「我々は、ようやく『冷温経済』を脱し、活発な設備投資、賃上げ、そして人への投資による経済の好循環を実現し、経済の熱量を感じられる『適温経済』の新たなステージに移れるチャンスを今、迎えている。このチャンスを逃すわけにはいかない」と説明。コストカット型の経済から、持続的な賃上げや活発な投資が牽引する成長型経済への転換を急ぐため10月中に経済対策をまとめる意向を表明した。

 国家のトップリーダーが「税収増の還元」を宣言し、その中身や規模に期待する人もいるだろう。与党内には所得税や法人税の減税などを要望する声が相次ぐ。自民党の世耕弘成参院幹事長は「所得税を減税し、勤労者の手取りを増やしていくというのは非常に有効な措置だ」と語り、15~20兆円規模の対策が必要との考えを示した。公明党の山口那津男代表も現金給付や所得税減税に加えて、地方自治体が活用できる交付金の追加を求めている。

 首相が語った「税収増を国民に還元」というのは、国民への現金給付または減税を指すと受け取るのが自然だ。住民税の非課税世帯に限定した低所得者対策だけでは「国民に還元」したとは言い難く、規模は小粒になる。昨年度の税収は71兆円超と過去最高を更新し、前年度から4兆円も増えている。インフレや円安、賃金・雇用の回復などを背景に財源があるにもかかわらず、その還元を「一部の国民」だけに絞る必要はないからだ。

報道各社の世論調査では支持率が軒並み過去最低を記録

 だが、与党内から所得税・法人税の減税や現金給付に加えて、消費税率の一時引き下げなどを求める声が続くと岸田首相の姿勢は一気にトーンダウンし始めた。首相が信頼する自民党の森山裕総務会長は10月15日、「所得税減税は過去にもやったことがあり、その時の検証結果をよく見ながらということだ。自民党が慎重であることは正しい方向だ」と語り、財政規律を考えながら対応することが重要との考えを示している。

 9月25日の「還元」発言から、わずか2週間強で“変節”した背景には何があるのか。そこには3つの理由が考えられる。1つ目は、好意的に受け止められるはずの「還元」が国民に響かなかったことだ。時事通信が10月6~9日に実施した世論調査によると、岸田内閣の支持率は前月比1.7ポイント減の26.3%(不支持は46.3%)となった。

 9月に内閣改造・党役員人事を断行したにもかかわらず、支持率の下落は主要各社で共通する。読売新聞の調査(10月13~15日)では支持率が34%と政権発足以降最低を記録。共同通信の調査(10月14、15日)でも32.3%と最低を更新。毎日新聞の調査(同)も内閣発足以来最低だった9月の調査時と同じ25%となり、4カ月連続で3割を下回った。

減税策が決定されない場合、自民党に大打撃が待っている

 内閣改造を政権浮揚につなげ、年内に解散総選挙を実施する―。岸田首相の「還元」発言の裏にあったのは、大規模な経済対策で国民の歓心を買って選挙で勝利するシナリオだったはずだ。しかし、内閣支持率の低迷によって今すぐ総選挙を打てるような状況ではない。2つ目の理由は、もはや「還元」という形で大盤振る舞いする必要がなくなったとの判断に傾いたからだろう。

 3つ目の理由として考えられるのは、「期待値」が高まりすぎることの怖さだ。所得税や法人税の減税や現金給付に加えて、消費税率の引き下げが与党内で議論されると、それらを国民は織り込むことになる。

 だが、もし国民が期待するような減税策が決定されなかった場合には「失望」に変わってしまい、その時期と総選挙が近ければ自民党にマイナスに働く可能性は高い。そもそもは「税収増を国民に還元」という曖昧な表現をした岸田首相の見通しの甘さに端を発しているが、森山氏の発言は過去の失敗の轍を再び踏まないよう諫めた形だろう。

国民は家計負担を感じていながらも岸田首相に「期待していない」

 しかし、そのような考えをする時点で岸田首相には「聞く力」がないと言える。なぜならば、そもそも国民には「期待値」が上がっていないからだ。先の読売新聞の調査によれば、政府の経済対策に「期待できる」とした人は21%にとどまり、「期待できない」は73%に達している。毎日新聞の調査でも「期待しない」は63%だった。支持率は軒並み下がっている。ちなみに時事通信の10月調査では、「18~29歳」の支持率は10.3%。「30歳代」も18.1%と低かった。

 読売の調査では、物価高による家計負担を「感じている」とした人は「大いに」「多少は」を合わせて86%に上っているにもかかわらず、岸田政権の対策には期待していない現実があるのだ。ちなみに、首相は自らが呼びかけた賃上げの効果をことさらに強調してきているが、この調査によれば2021年10月の岸田内閣発足後、自分自身や周りの人の賃金が上がった実感があるかとの問いに75%が「ない」と答えている。

 岸田首相は10月16日、「まずは物価高から国民生活を守る。これを第1の柱にしたい」と記者団に述べているが、このまま大規模な減税策を打ち出せないようならば国民感覚との乖離は埋まることはない。共同通信の調査によれば、所得税減税が「必要だ」との回答は63.2%に上っている。 

「税収増を国民に還元する」言葉だけが踊る虚しい政治

 政府は原油価格の高騰が続く中、ガソリン補助金を来年3月末まで延長する方向で調整している。ただ、ガソリン税の税率を一時的に下げる「トリガー条項」の発動には財政への影響があるとして慎重姿勢を貫いている。

 「税収増を国民に還元する」「物価高から国民生活を守る」と言葉は踊るものの、国民には響かない状況が続く。政府は経済対策を月内にとりまとめ、裏付けとなる2023年度補正予算案を11月に臨時国会に提出する方向だ。

 はたして、総選挙前に首相がぶら下げるつもりの「ニンジン」はどれほど大きなものになるのか。首相が再選を目指す来年夏の自民党総裁選を見据えながら、国民が蚊帳の外におかれた皮算用が繰り広げられている。