このW杯で見たかった日本ラグビーの怪物 フランスから再出発、その瞳に湧いた4年後への期待【フォトコラム】
ラグビーW杯フランス大会 カメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラム
連日熱戦が繰り広げられているラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会。「THE ANSWER」は開幕戦から決勝戦まで現地取材するカメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラムを随時掲載する。今回は故障で出場の夢を断たれた日本のフィジカルモンスター、テビタ・タタフの再出発。
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弾むように密集から飛び出した巨体が、屈強な男たちを引きずりながら前へと突き進む。そんなタフでパワフルなラガーマンを、ボルドーで見つけた。テビタ・タタフ、27歳。日本を代表するフィジカルモンスターのW杯への挑戦が幕を開けた。
夕暮れのボルドー、子どもたちが見つめる中、タタフは入念にストレッチを繰り返していた。東京サントリーサンゴリアスからフランスの国内リーグTOP14、ユニオン・ボルドー=ベーグルへ、移籍後初となる試合撮影のためスタッド・シャバン=デルマスへと足を運んだ。
ラシン92との強化試合(現地時間13日)、NO8で先発出場したタタフは、少ないチャンスで確実にゲイン。パワフルでありながら柔らかく、しなやかなランで相手を翻弄した。
圧倒的な突破力、ボールを持てば何かが起こる。そう予感させてくれるタタフ、この姿をW杯で見たかった。そう思うのはきっと私だけじゃないはずだ。大会直前、7月のテストマッチ(トンガ戦)で代表メンバーに入るも、怪我が癒えず、フランスの地で桜のジャージーをまとうことは叶わなかった。
8月末にフランスへと渡ったタタフ、彼の目に現地でのW杯はどう映ったのだろうか。すぐそばで仲間たちが戦う姿を、どう見つめたのだろう。聞いてみたかった。ただそれは必要なかった。迷いなく、真っ直ぐ前を見つめるタタフの瞳を見て、心に湧いたのは4年後への期待だった。信じよう、タタフは必ず強くなって戻ってくる。
誰もタタフを止められない。
想像するだけでワクワクが止まらない。
■イワモト アキト / Akito Iwamoto
フォトグラファー、ライター。名古屋市生まれ。明治大を経て2008年に中日新聞入社。記者として街ネタや事件事故、行政など幅広く取材。11年から同社写真部へ異動。18年サッカーW杯ロシア大会、19年ラグビーW杯日本大会を撮影。21年にフリーランスとなり、現在はラグビー日本代表の試合撮影のほか、JAPAN RUGBY LEAGUE ONEオフィシャルフォトグラファーを務める。
(イワモト アキト / Akito Iwamoto)