ピッチに舞い降りた2人の王子。試合を楽しむダミアン・マッケンジーとボーデン・バレット【写真:イワモトアキト】

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ラグビーW杯フランス大会 カメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラム

 連日熱戦が繰り広げられているラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会。「THE ANSWER」は開幕戦から決勝戦まで現地取材するカメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラムを随時掲載する。今回は5日(日本時間6日)の1次リーグ最終戦のニュージーランド―ウルグアイ戦から。

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 まさにラグビー界の王子様。リヨンで行われたニュージーランドとウルグアイの一戦、オールブラックス(ニュージーランドチームの愛称)のダミアン・マッケンジーとボーデン・バレットが、その圧巻のプレーとスマイルでスタジアムのファンの心を射抜いた。

 ボールを持てば、何かが起こる。そのワクワクするような期待を、ダミアン・マッケンジーは裏切らない。171センチ、78キロの小さな男が、2メートル近い巨漢たちを翻弄する。華麗なランとパスで、ウルグアイの厚い壁を破るたびにスタジアムに歓声がとどろいた。

 後半からはトライ後のキックを担い、蹴る前のルーティーンでもある「微笑み」を披露。スタジアムの大画面にその笑顔が映し出されるたびに、ファンたちが心を鷲掴みにした。試合終盤で途中出場したボーデン・バレットも、わずかな時間の中で確かなインパクトを残した。

 カメラを通して感じた二人の共通点、それは「ラグビーが好きだ」「ラグビーが楽しい」という思いがそのプレーや表情から溢れていること。少年のように目を輝かせてピッチを駆ける彼らを追いかけていると、自然と心が熱くなる。

 試合が行われたリヨンは、小説「星の王子さま」で知られる作家サン=テグジュペリの生まれた街。物語は、それぞれにとって大事なものとは何かを王子とともに探すストーリーだ。ダミアン・マッケンジーにボーデン・バレット、彼らにとって大事なものとは何か。それは必ずしも勝利ではないだろう。彼らの微笑みからそう感じた。

■イワモト アキト / Akito Iwamoto

 フォトグラファー、ライター。名古屋市生まれ。明治大を経て2008年に中日新聞入社。記者として街ネタや事件事故、行政など幅広く取材。11年から同社写真部へ異動。18年サッカーW杯ロシア大会、19年ラグビーW杯日本大会を撮影。21年にフリーランスとなり、現在はラグビー日本代表の試合撮影のほか、JAPAN RUGBY LEAGUE ONEオフィシャルフォトグラファーを務める。