2023年10月の星空情報 29日の「部分月食」を見よう
10月、彼岸花の季節も過ぎてすっかり秋めいてきました。星空に目を移せばそろそろ夏の星座の時期が終わり、秋の星座が南の空へと昇ってきます。
南西の空に残る夏の大三角から視線をそのまま東側へ移すと、「秋の四辺形(大四辺形)」が見えてきます。秋の四辺形は3つの2等星と1つの3等星からなる、やや歪んだ四角形です。別名を「ペガススの四辺形」などといい、逆さまになって空を駆ける天馬「ペガスス座」の体の部分にあたる星々です。
秋の四辺形のうち、北東側の2等星だけはペガスス座の星ではありません。この星にはアルフェラッツ(意味は「馬のへそ」)という名前が付けられていますが、ペガスス座ではなくアンドロメダ座の額にある星です。
アンドロメダ座はアルフェラッツを頂点に、古代エチオピア王家の美しい姫の姿が細いAのような形で描かれています。姫の腰の近く(Aの横棒の西側)には有名なアンドロメダ銀河(M31)があります。
アンドロメダ銀河は太陽系のある天の川銀河と同じ「局所銀河群」に属する銀河であり、地球からの距離は約250万光年と比較的近い銀河です。見た目の大きさは満月5個を横に並べたほどもあり、4.3等と比較的明るいため、空の条件が良ければ肉眼で見ることができるほか、双眼鏡があれば街中でも観測可能です。
秋の四辺形は秋の星座を見つけるための格好の目印です。四辺形の西側の2つの星を結んで空の低い方へ伸ばしていくと、明るい星にたどり着きます。この星は1等星のフォーマルハウトです。その意味は「魚の口」で、名前通り「みなみのうお座」の口元にある星です。
みなみのうお座のすぐ上には「みずがめ座」があります。みずがめ座は全天で10番目に大きな星座ですが、3等星以下の暗い星で構成されているので、探すのは困難です。
2023年は、みずがめ座の方向で土星を見ることができます。土星の明るさは0.9等級(※)とさほど明るくありませんが、明るい星の少ない秋空では見つけやすいでしょう。
また、秋の四辺形の北側の2つの星を結んで東へ伸ばしていくと、2等星のハマルが見つかります。ハマルは「羊(の頭)」という意味があるといわれており、「おひつじ座」の額にある星です。
2023年の秋には、ハマルの東側に木星が見えます。マイナス2.9等級(※)と抜群の明るさで、秋の澄んだ空に美しく輝く木星の姿を楽しめます。
※惑星の等級は2023年10月15日0:00時点のもの(国立天文台暦計算室 今日のほしぞら参照)
【▲ 2023年10月中旬20時頃の東京の星空(Credit: 国立天文台)】
■部分月食
2023年10月29日には部分月食が見られます。部分月食とは、月の一部が地球の影に入ることで、その部分だけが欠けたように見える現象です。
【▲ 月食の仕組み(Credit: 国立天文台)出典:月食とは | 国立天文台(NAOJ)】
今回の部分月食は最大食分0.128、つまり13%程度が欠ける小さな月食です。月が欠け始めるのは10月29日4時34分頃で、食の最大は5時14分頃、月食の終わりは5時53分頃です。明け方の月食ということもあり、終了時点での月の高度は東京で1.8度と低く、月食の過程を全て観察するのは難しいかもしれません。特に、小笠原諸島では月が欠けたまま沈む「月入帯食」となります。
【▲ 10月29日は部分月食(2023年10月)(Credit: 国立天文台)】
日本全国で見られる次の月食は、2025年9月8日の皆既月食です。それに比べると今回の部分月食は、欠け具合としても月の高度としても条件が良いとはいえません。ですが、丸い影にくり抜かれる月の姿を見ると、地球が丸いことを地上にいながらにして実感できます。2023年10月29日の明け方は、少し早起きしてぜひ部分月食をご覧になってください。
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Image Credit: 国立天文台、PhotoAC、sorae編集部国立天文台 - ほしぞら情報 東京の星空・カレンダー・惑星(2023年10月)国立天文台 - ほしぞら情報 10月29日は部分月食(2023年10月)国立天文台 - 暦計算室 今日のほしぞらWikipedia - アンドロメダ銀河AstroArts - メシエ天体ガイド M31
文/sorae編集部