大阪・関西万博の機運を高めるためのイベント『Warai Mirai Fes 2023 Road to EXPO 2025』が開催された(写真提供:チーム関西)

「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」開催まで、1年7カ月に迫った。

前売りチケット発売(11月30日)が2カ月半後に迫るなか、万博の認知拡大や、機運を高めるための大型イベント『Warai Mirai Fes 2023 Road to EXPO 2025』が8月25〜27日の3日間、COOL JAPAN PARK OSAKAほか大阪城公園内各所にて開催された。

在阪大手企業・団体が集結した一般社団法人チーム関西が主催する本イベントは、今年で2回目。今年は万博のテーマでもあるSDGsを旗印に、チーム関西各社のリソースを掛け合わせ、文化、エンターテインメント、スポーツに関するステージやワークショップ、シンポジウムなど多彩なプログラムを実施。大人だけではなく、子どもたちもひと足早く万博の雰囲気を体感できるイベントとなった。

海外を意識したエンタメショー

今回のイベントのテーマの1つが、国境を越えるエンターテインメントだ。初日の夜には、海外からの来場客を意識した音楽、ダンスパフォーマンス、お笑いを楽しめる屋外ナイトエンターテインメントショー『Warai Mirai ナイト&ライト〜未来へ繋ぐエンターテイメントショー〜』が開催された。


音楽、ダンスパフォーマンス、お笑いを楽しめる屋外ナイトエンターテインメントショー『Warai Mirai ナイト&ライト〜未来へ繋ぐエンターテイメントショー〜』(写真提供:チーム関西)

大阪城公園の木々に囲まれた大阪城音楽堂に、ダイアン、ニューヨークといったお笑い芸人や、音楽グループのベリーグッドマン、パフォーマンス集団MASKED SHOWMANらが登場。雷雨のため後半の一部が中止になったものの、ジャンルを超えたエンターテインメントのステージが初日の夜を華やかに彩った。

また芸人たちの世界進出に向けて、プロジェクトを立ち上げた吉本興業は、海外発信への実験的なステージ『TATSUJIN Fantastic Comedy SHOW』を本イベントでも開催した。


海外発信への実験的なステージ『TATSUJIN Fantastic Comedy SHOW』(写真提供:チーム関西)

元々は「言葉を使わない公演」として半年前にスタートしたステージだが、今回は「ちょっとだけしゃべっていい」をルールに、くまだまさし、ハイキングウォーキング、もりやすバンバンビガロ、市川こいくち、ウエスP、ヨネダ2000、チャド・マレーン、バタハリらといったノンバーバル(非言語コミュニケーション)系のネタを得意とする芸人たちが参加した。

SDGsを学べるウォーキングも

参加者たちに万博のテーマでもあるSDGsに関する取り組みを、日々の生活の中に取り入れてもらうのも、本イベントの目的の1つ。今年は芸人やアイドルと一緒にウォーキングをしながらSDGsを学べる『SDGsウォーク2023 in Warai Mirai Fes』がイベント期間中に開催された。

次長課長・河本準一、福本愛菜、マヂカルラブリー、インポッシブル、鬼越トマホーク、ZAZY、エルフ、松浦景子、田津原理音、NMB48の坂田心咲、新澤菜央ら、多数の芸人やアイドルが参加。3キロと5キロのコースが設けられ、芸人やアイドルたちが参加者とともに歩いた。一緒に歩いた子どもたちにとって、SDGsの目標を学ぶのと同時に、わかりやすいコンテンツを通じて、明日から自分ができることを考える機会にもなったのではないだろうか。


芸人やアイドルと一緒にウォーキングをしながらSDGsを学べる『SDGsウォーク2023 in Warai Mirai Fes』(写真提供:チーム関西)

ほかにも、SDGsを笑いで楽しくわかりやすく広める、芸人たちの熱き戦いを『SDGsー1グランプリ THE BEST SELECTION SDGsでネタ祭り』として開催。祇園、見取り図、ロングコートダディ、男性ブランコ、ミキ、オズワルド、EXIT、エルフらがSDGsを絡めた選りすぐりのネタ(漫才、コント、落語、ダンス)を披露。7年目を迎えた本コンテストの歴代チャンピオンたちのネタが会場を大いに盛り上げた。


7年目を迎えた芸人たちの熱き戦いが『SDGs-1 グランプリ THE BEST SELECTION SDGsでネタ祭り』として開催された(写真提供:チーム関西)

若い世代を巻き込む施策としては、これからの高齢化社会に向けて大阪府が掲げる「10歳若返り」プロジェクトに高校生が取り組むピッチコンテスト『ガチ探究 in Warai Mirai Fes 2023』がイベント期間中に開催された。

健康寿命を延ばし、より豊かな人生を送るためにどうすればよいのか。高校生6チームがそれぞれ力を合わせ、課題解決に向けたアイデアを競いあった。

各チームのプレゼンの後には、審査員からの鋭い質問に高校生たちが一生懸命に答える熱いセッションが見られた。審査員はそれぞれの事業分野からの意見やアドバイスを送り、彼らのポジティブかつアクティブな姿勢を評価した。

優勝に輝いたのは、兵庫県・灘高等学校の男子高校生チーム・アロッジオによる「THE(トリートメント・ヘルスケア・エンターテインメント)輸血」。


大阪府が掲げる「10歳若返り」プロジェクトに高校生6チームが取り組んだピッチコンテスト『ガチ探究 in Warai Mirai Fes 2023』(写真提供:チーム関西)

献血者の減少が続くなか、リピートしてもらうために、献血ルームをフィットネスからお笑いまでさまざまな体験ができる、くつろげる憩いの場(ヘルスケア・ステーション)にすることを提案した。

万博にはネガティブ報道もあるが…

本イベントの来場者は、1回目の昨年は万博記念公園で開催され、5万人。今年は非公表だが、会場となった大阪城公園には今回も多くの家族連れや若い世代が集まり、大いににぎわった。

在阪大手企業・団体で構成されるチーム関西の代表理事であり、大阪公立大学の運営法人「公立大学法人大阪」理事長を務める、関西経済界の重鎮・福島伸一氏は、本イベントの成功に手応えを感じている。

「大阪・関西万博のテーマを旗印に、笑い、音楽、スポーツ体験、学びのワークショップを通じて来場者を笑顔にし、今回も万博に向けて大いに機運を盛り上げました。こうしたイベントを継続的かつ発展的に実施していくことが重要と考えています」

一方、大阪・関西万博に関しては、施設や設備工事の遅れの指摘などネガティブな報道もあるほか、開催意義に疑問を投げかける声など万博開催に異を唱える一部メディアも見受けられる。

福島氏は「工事遅れの問題については万博協会や政府、自治体の判断になると思いますが、われわれ民間企業の団体としては、つねに万博のポジティブな情報を発信し続けることが肝要と考えています」と話す。

そして、現状の課題に関しては「まだまだ全国的に万博の認知度が高くなく、さらなる機運の醸成が必要と認識しています。大阪府民はもちろん、国民の皆様に楽しみにしていただけるよう、いかに認知度を高めていけるかが課題であり、重要なことです」と語った。

開催まで2年を切り、前売りチケット発売も2カ月半後に控える今、大阪府民は、自分ごととして実感し始めているようだ。

福島氏は「民間のパビリオンもその概要を順次発表していくので、万博のテーマ(いのち輝く未来社会のデザイン)の訴求と、楽しいな、ワクワクするな、行ってみようかなというような雰囲気づくりに取り組んでいければと思います」と力を込める。

万博の経済的な側面としては、会期中の世界中からの集客による地域経済振興に加えて、新たな技術やサービスが社会インフラおよび社会全体に導入されるきっかけの1つとなり、そこから開催地域および日本経済の発展につながるメリットがある。ただ、すでに成熟した現代社会において、その規模や意義は、1970年に開催された大阪万博とは異なるだろう。

「1970年の万博と同様、関西経済、日本経済の起爆剤となることを望んでいます。ただ、時代は変わり、当時のような経済効果が生まれるとは考えていません。SDGsの目標と同様に、持続可能な経済成長を目指す先駆けや機運となることに期待しています」(福島氏)

大阪以外にも開催意識を広げていく

関西大手企業・団体が集まるチーム関西では、万博の成功に向けて引き続き活動を続けていく。大阪以外の地域では、肌感覚としてはまだ万博への意識はほとんどないだろう。

福島氏は「本フェスだけでなく、大きなことから小さなことまで、これから大阪、近畿で行われるたくさんのイベントが万博に結びついてくると思います」と話す。1年後の本フェスでは、参加企業が関西だけではなくなっているかもしれない。開催まで2年を切ったこれからは、そんな機運の高まりがより加速し、拡大していくことが期待される。

(武井 保之 : ライター)