日本郵便

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 かんぽ生命の不正販売など、近年、不祥事が続出している日本郵政グループ。最近では、その中核企業である日本郵便が下請けからの価格転嫁を認めない、いわゆる「買いたたき」が問題になった。その折も折、同社の大手下請けで報酬未払いトラブルが起きていたのだ。

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【写真を見る】報酬未払いトラブルの舞台となった高崎郵便局

「なぜあんなひどい職場で働いてしまったのか、後悔してもしきれません」

 と、憤るのは群馬県在住の40代女性である。

「仕事を始めたきっかけは求人サイトに郵便局での集荷業務の募集があったことでした。『日当保証』とあったので、応募したのです」

 募集をかけていたのは千葉県に本社を置く「T・Uサポート」なる会社である。郵便局の集荷や配達業務を請け負っており、関東圏の郵便局の下請けとしてはトップクラスのシェアを誇る。

日本郵便

“実際は出勤していないけど出勤したことにして…”

 いま日本郵便とその下請け業者は深刻な問題を抱えている。今年4月、日本郵便は下請け業者からの委託料の引き上げ要請に応じなかった局が100超あったと発表。これは下請法が禁じる「買いたたき」にあたる可能性があり、体質改善が急務とされていた。

 そんな状況の中、この女性が働いたのは群馬県にある高崎郵便局だった。

 女性が続ける。

「今年の3月、郵便局内の倉庫の片隅で面接し、業務委託契約を結んだことになっています。そもそも、面接からして適当でした。T・Uサポートの担当者から“月にいくら欲しいですか”と聞かれ“25、26万円でしょうか”と答えると“じゃあ日当は1万3千円にしましょう”などと言うのです」

 担当者は続けて車のリース代などの経費について説明。同社の業務委託者は仕事で社用車を使う場合、プライベートでもその車を使用できる代わりに、リース代を経費として報酬から差し引くことになっていた。

「しかし、担当者は“私の方で、実際は出勤していないけど出勤したことにする日を作り、リース代と相殺できるようにしておきます”と言っていました。私は変だな、と思いつつも郵便局内の仕事でおかしなことにはならないだろうと仕事を始めたんです」

ありえない報酬明細

 現場ではこの担当者の指示のもと、集荷や配達を行っていた。ところが、最初の報酬明細を見て、この女性は目を剥くことになる。

「4月は19日分の日当、つまり24万7千円が支給されるはずでした。しかし、実際の支給は6万9109円。日当1万3千円以下で計算されている上、私用で車を使っていないのに、車両リース代などの経費が約5万6千円計上されていました。私はその後“不足分を払ってください”と言い続けるも、担当者は“後で入金する”と言い逃れ、対応してくれませんでした」

 その後、5月分も19日分の報酬を受け取るはずが、実際の振込はわずか2820円。「日当保証」という約束をほごにされ、結局、彼女は3カ月で仕事を辞めることになった。

「自己責任ですよ」

 実は同社の被害者は他にも。同じく高崎郵便局で働いていた20代女性だ。

「私の場合、昨年6月の面接でその担当者から“日当1万1千円で”“車両経費はこちらで調整してうまくカバーします”と言われました。ですが、面接後に契約書すらもらえていなくて、どのような契約になっていたのかもわかりません。さらに働いてみると、日当を千円分差し引かれていて、報酬が異常に安くなってしまいました」

 今年になると待遇は悪化。

「1月末に支払われた報酬は12日間の出勤で4280円のみ。車を使っていない月も約6万円の経費を差し引かれ、5月末の支払いでは経費が収入を上回りマイナス3720円になっていました。この月は11日間働いたのに、なぜか私がT・Uサポートにお金を払わないといけなくなっている。結果、クレジットカードの支払いができなくなり、身内からお金を借りることになってしまいました」(同)

 他の委託者にも同様の報酬未払いトラブルがあったという。ならば、当事者であるT・Uサポートの社長に聞くと、

「業務委託ですからね、すべて自己責任ですよ」

「担当者はもう飛んじゃっていません。(委託者に)ウチは“働いた分しかお支払いできない”と日報を出すようにお願いしています」

 と、悪びれもせず語るばかり。一方の日本郵便は書面でこう回答した。

「事実であれば大変遺憾ですので、必要に応じて是正を求めてまいります」

 かような無責任体制では、まだまだ不祥事のタネは尽きそうもない。

「週刊新潮」2023年9月7日号 掲載