漫画家や、ロックバンドのベーシストなど、多彩な顔をもつ劔樹人(つるぎ・みきと)さん。

インスタグラムで連載していたホラー漫画をまとめた新刊、『怪のリディム』(扶桑社刊)が話題です。2014年にエッセイストでコメンテーターの犬山紙子さんと結婚を機に、兼業主夫になった劔さん。現在小学1年生になった娘さんと3人で暮らす劔さんに、普段の家族の暮らしや夫婦関係を良好にするコツを伺いました。

劔さん「家族一緒に過ごせる時間を意識的にもっています」

――娘さんは、ご両親に似て絵もお上手なんですね。劒さんが漫画を描くことに影響されているのでしょうか?

劒さん:時間ができると家族で美術館にはよく行きます。それも影響していると思いますね。とくに妻は、子ども感性を伸ばしたいと思っているので、子どもの選択肢や可能性を広げることに対してすごく意識的です。

――ご家族で行かれるんですね。

劒さん:妻はレギュラー番組の関係で週に3日は地方に出てしまうので、逆に家にいるときは娘と一緒に過ごすことを意識しています。夏休みは、子どもとスケジュールをなるべく合わせるよう、仕事もコントロールしているようです。

●旅行中は「妻をどう休ませようか」と考えて

――今年の夏は旅行される方も多かったように思いますが、ご家族でどこか旅行など行かれましたか?
劒さん:7月末にベトナムに行ってきました。娘が小さいときにも海外に行ったことがあるんですけど、小さすぎて覚えていないだろうと思って。だから娘にとっては初めての海外旅行気分。イミグレーション(入国審査)とか初めて体験することにわくわくしていました。日本も暑いですが、ベトナムも暑かったです…。のんびりできたかと言われたら、めちゃくちゃ疲れました。子どもが活動してる間は、自分も活動しなきゃいけないわけですから。

――子どもが小さいと、親の方が疲れますよね。

劔さん:それより旅行中は、妻をどう休ませようかな、と考えていました。だから娘と僕だけでプール行き、妻を部屋で休ませることも。もともと妻は体力がないほうで、体が弱いので余計に。それにオフの日でも、仕事の宿題を抱えていたりするので、なかなか気が休まらないし、大変だと思っています。

――家族との時間は大事にしたいけど、犬山さんの負荷が増えてしまうは心配ですよね。夫である劒さんが気遣っているところが素晴らしいです。

劒さん:妻は妻で僕が1人になれる時間が少ないので、どうやって時間を捻出しようか、考えてくれているみたいです。

●家のことはできる方がやる。夫婦で思いやるからこそ、うまくいく

――ご夫婦がお互いを思いやる、そんな関係性がすてきですね。夫婦げんかなどをすることはあるのでしょうか?

劔さん:妻は、自分が割と怒りっぽいことを自覚していて、意識的に矯正しようとしています。僕も妻の気が短いのをわかってるいので、そこを過剰にフォーカスしないというか、気を取られないように意識しています。お互いの性格を理解しておくだけで、相手の受け止め方も、自分の対応も違ってくると思います。

――お互いを理解していれば、無駄な衝突は避けられそうですよね。

劒さん:僕は1つのことしか割とできなくて、妻は逆に複数のことをできる。お互いのない部分を補っている感じです。

――犬山さんは、お仕事柄、多くの女性の悩みをたくさん耳にしているからこそ、家で家事をやってくれている主夫の劒さんに対して、外に出て働いている自分は「こういう言い方はしてはダメだ」と、わかっているのかもしれませんね。

劒さん:それはすごくあると思います。うちの場合、夫婦の立場が多くの家庭と違って逆転しているけど、妻はちゃんと女性側と男性側の気持ち、両方の立場も理解しているのだと思います。妻の方が全体像がよく見ているほうなので。

――劒さんの普段の家事について理解しながら向き合っているということですね。

劔さん:普段は僕がメインで家事をやっているけれど、じつは僕は片づけが苦手。だから手があいているときは片づけが得意な妻がやってくれます。また、僕が忙しかったり、体調が悪かったりするときは、シッターさんやウーバーイーツを利用したり。できないときはできない、そこは妻もわかっています。どちらかに負担がかかり過ぎないよう、スケジュールは共有していますし。なんなら僕のスケジュールまで、妻のマネジャーさんも把握している感じです。

●「稼いでいるほうが偉い」という考えはNG

――「稼いでいる方が偉い=だから夫が偉い」というパワーバランスになってしまう夫婦が多いように思います。女性側も「自分は稼いでないから、家事をしっかりしなくちゃいけない。家事をしっかりしなくちゃいけない」というバイアスがかかっている気がします。

劒さん:稼いでいる方が力をもってしまうと“まずい”と思うんです。それはうちの夫婦の共通認識です。一般的に共働きですと、夫の収入の方が高いことが多いと思います。収入的には弱い立場である妻側が、夫側に向かって、「もっと家事や子育てに協力的になってほしい」などと要望などを伝えても、なかなか難しいところがある。やっぱり、夫婦関係でどちらかが力をもちすぎる関係はいけない、と意識をしておくことがいちばん大事なんじゃないかなと思いますね。相手にわかってもらうことは難しいと思うんですけど、繰り返し伝えたり、話し合ったりすることが大事なんだと思います。

劔さんの周りのミュージシャンたちが実際に経験した怖い実話を集めた『怪のリディム』(扶桑社刊)は、発売中です。