「ジェラートにのせる生クリーム」は無料? 有料? 火花を散らすローマ対ミラノ
ジェラートの本場・イタリアでは、猛暑の癒しとなるこの食べ物に生クリームをのせる習慣があります。この食べ方は日本であまり見かけないので、驚く人もいるかもしれませんね。しかし最近、あるアニメをきっかけに、この生クリームについてSNSで論争が巻き起こっているのです。イタリア人は一体何を騒いでいるのでしょうか?
イタリアに行ってジェラート屋を訪れたら、必ず耳にするのが「生クリームはのせますか?」というフレーズです。
日本人ならば戸惑ってしまうこのセリフ。でも周りを見れば、ジェラートの上に高々と生クリームをのせて食べているイタリア人ばかりです。実はこの生クリームが、論争のテーマとなりました。
イタリアの漫画家ゼロカルカーレは、ユーモアを交えつつ社会問題を取り上げる名手として評価されています。その彼の作品『Questo mondo non mi renderà cattivo(世界は僕を切り裂けない)』がNetflixで放映され、ある場面の背景が論争に火をつけました。そこには「生クリームは無料! われわれはミラノにいるわけじゃありませんから」と書かれていたのです。
実際に、ジェラート屋で生クリームをのせてもらうと分かります。
ローマを中心とする南部では無料、ミラノ周辺は有料なのです。イタリア人も常々不可思議に思っていたこの事象が、アニメのワンシーンによって再注目され、SNS上で論争が勃発したというわけです。
消費者もジェラート職人も黙っちゃいられない
そもそもローマとミラノは、東京と大阪のように文化が異なります。その埋めがたい相違は、ジェラートにのせる生クリームにまで及びました。
Twitter上には「ローマ出身の伴侶はミラノに20年も住んでいるのに、いまだにミラノで生クリーム代を払うことに文句を言う」「ジェラートの上の生クリームはモノではなく気持ちだ、誰が気持ちにお金を払うか」など、ジェラート愛好者による発言がSNS上にあふれたのです。
ジェラート職人も黙ってはいません。ラ・レプッブリカ紙によると、「原材料にこだわるのならば物価高の昨今、生クリームが有料なのは当然」という職人がいれば、「生クリームはお客さんへのちょっとしたご愛敬なのだから無料のままがふさわしい」という職人も。論争は大いに盛り上がりました。
日本ではあまり馴染みがない「ジェラートと生クリーム」の組み合わせですが、イタリアではごく当たり前。味がまろやかになり、フラッペ感覚になるというのがその理由です。
生クリームの無料提供はローマで絶大な支持を得ていますが、物価高や質へのこだわりなどによって今後どう変わっていくのか? ローマっ子はやきもきしている、といったところでしょう。