テスラはさらなる販売拡大を目指し、中国の部品サプライヤーとの関係を深めている(写真は同社ウェブサイトより)

アメリカのEV(電気自動車)大手のテスラは7月2日、2023年前半のグローバル販売実績を発表した。1月から6月までの総販売台数は88万9000台に上り、前年同期比57%増加。同社は1〜3月期に世界の主要市場で大幅値下げを実施しており、その効果が如実に表れた。

テスラは2023年に180万台の販売目標を掲げている。1〜6月の販売実績は、その半分をほぼ達成した。なお、上記の目標を1月25日に発表した際、テスラCEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏は「予想外の混乱がなければ(年間販売台数は)200万台に近づく可能性がある」とコメントしていた。

リン酸鉄系の電池を改良

とはいえ、テスラが年間目標を確実にクリアするには、販売の勢いを維持するための魅力的なニューモデルが必要だろう。

その有力候補とみられているのが、主力車種「モデル3」のマイナーチェンジだ。改良型のモデル3には、中国の車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が開発した「M3P」と呼ばれる次世代電池の搭載が噂されている。

M3P電池は、リン酸鉄系リチウムイオン電池の材料の組成を見直し、より高いエネルギー密度を実現したものだ。ただし、テスラとCATLはモデル3への搭載についてまだ情報を明らかにしていない。

テスラはグローバル販売台数を長期的に2000万台に引き上げることを目指しており、より低価格の新型車を製品ラインナップに加えようとしている。同社は3月1日に開催した投資家向けイベントで、技術革新を通じて次世代モデルの製造コストを50%削減すると宣言した。

この次世代モデルは、メキシコに建設する新工場で最初に生産される可能性が高い。メキシコ工場の立ち上げを指揮するのは、テスラの上級副社長を務める朱暁彤(トム・チュー)氏だ。


テスラの上海工場は同社最大の生産拠点だ(写真は同社ウェブサイトより)

同氏は中国の上海工場を着工からわずか9カ月余りで稼働させ、テスラ最大の生産拠点に育てた実績を持つ。

中国企業にメキシコ進出要請

そんな朱氏は、メキシコ工場の早期稼働に向けて中国企業の力を借りようとしている。上述の投資家向けイベントで、朱氏は次のように述べた。


本記事は「財新」の提供記事です

「メキシコ工場の立ち上げでもスピード記録を作りたい。だが、メキシコは(部品産業の厚みなど)事業環境や効率の面で中国とは比較にならない。そこでテスラは、工場建設や車両生産をサポートしてもらうため、中国の部品メーカーなどにメキシコ進出を要請している」

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は7月3日

(財新 Biz&Tech)