昇格筆頭候補のJ3山雅、予想以上の大苦戦。負の連鎖に歯止めをかけない限り、目標達成は遠のく一方だ
7月8日時点では、カターレ富山、愛媛FC、鹿児島ユナイテッドFCらが上位争いを繰り広げているが、暫定首位の富山から15位のAC長野パルセイロまでが10ポイント差の中にひしめいているのだ。
18チームの中で唯一、J1昇格経験があり、今季は「J2昇格候補筆頭」と目されていた松本山雅FCは、17試合を終えて7勝4分6敗の勝点25で暫定7位。予想以上の大苦戦を強いられている。
名波浩監督(現日本代表コーチ)が指揮した昨季は17節終了時点で37だったことを考えると、出遅れは明らかだ。
7月8日のアウェーFC琉球戦も、試合内容が悪かった。開始早々の2分、左サイドを突破した滝裕太の折り返しにキャプテン菊井悠介が合わせ、瞬く間に先制点を奪ったところまでは良かったが、そこからは琉球に押し込まれる形になってしまった。
「前半は『前は行きたい、後ろは行けない』という形になった。キャンプからやってきた『全員で奪いに行って、剥がされたらすぐにバックしよう』というのを、しんどいからか恐れているのか分からないけど、チームとしてのやるべきプレッシングができなかった」と菊井は吐露したが、結果的に空いた中間スペースを相手に有効に使われた。
この日の琉球は金崎夢生や野田隆之介が欠場したものの、百戦錬磨のベテラン阿部拓馬がいた。喜名哲裕監督の「山雅はライン間が空く」という分析通り、彼はギャップを突いてボールを収め、今季初先発の岩本翔や右MF中野克哉の決定機を演出した。
これが入らなかったから、まだ山雅は救われたが、前半45分間の8対2というシュート数を見ても分かる通り、一方的な内容だったのは確かだろう。
霜田監督は後半頭から右MFの榎本樹に代えて國分龍司を起用。右SB藤谷壮との縦関係を再構築しようと試みた。前半から藤谷が対面の白井陽斗に仕掛けられ、何度もピンチを招いていたことから、テコ入れを図ろうとしたのだ。
その対策は奏功し、山雅の守りは前半より落ち着いたようにも映った。だが、琉球の勢いは止まらない。特に大きかったのが、62分から登場した191センチの大型助っ人FWサダム・スレイの存在だった。
「山雅はクロスからの失点が多いという分析があった。彼が真ん中にいることによって相手は中を気にして集中してくる」と喜名監督は話したが、結果的に山雅の守備陣はズルズルと下がってしまった。
こういう展開になると、山雅としては何とか1点を守り切るしかない。霜田監督はベテランの橋内優也をラスト7分というところで投入。守備固めに入ったが、直後の84分、サダム・スレイに同点弾を決められる。
右をえぐった平松宗に橋内が行ったことで、結果的に中央のスペースがフリーになるという不運も重なった。
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終盤に失点すると歯止めがきかないのが今季の山雅。4月のアスルクラロ沼津、5月の鹿児島戦もそうだったが、一度崩れると終盤に連続失点する傾向がある。
今回も同様で、ラストの時間帯にリスタートから阿部に背後を突かれて2点目を奪われ、1−2でまさかの逆転負けを喫したのだ。
涼しい松本から猛暑の沖縄という環境の劇的な変化、長距離移動というマイナス面はあったが、それでも勝点3を死守しなければいけなかったのは事実。これでさらに上位争いからまた一歩、後退したというしかないだろう。
霜田監督が「総得点76」を掲げた通り、今季の山雅は得点力の部分では多少の前進は見られる。ここまでの29という数字は昨季同節より3つ多いし、小松蓮も目下、J3得点ランキングトップの12点をマークしている。それは前向きな点と言える。
しかしながら、簡単な失点が多すぎる。総失点24というのは前年同節より11も多く、今季上位10チームの中ではワースト。後半戦に突入してすぐにでも「総失点38」を越えてしまいそうな雰囲気もある。
琉球の喜名監督が指摘した通り、今の山雅はクロスからの失点が圧倒的に多い。しかも前と後ろが連動性を欠き、一体感のあるプレスがかけられずに、中間ポジションが空きがちだ。
そこで簡単にボールをコントロールされて、ギャップを突かれ、決定的なチャンスを作られている。負の連鎖に歯止めをかけない限り、J2昇格は遠のく一方なのだ。
「(反町康治監督=現JFA技術委員長が率いていた)前みたいに縦に蹴り出すサッカーを今はやっていない。つなぐスタイルにチャレンジしている分、難易度は高いし、完成させる時間もかかる」とベテランGK村山智彦も苦渋の表情を浮かべていたが、彼らがチーム作りと結果の二兎を追う難しさに直面しているのは確か。
とはいえ、時間は待ってくれない。これ以上、勝点を逃したら、昇格への道が途絶えかねない。
「ボールを動かす・セカンドボールを拾う・取ったボールをきちんとつなぐ...。我々はそのことをキャンプからやってきた。今はできる試合とできない試合があるが、できる試合を増やしていかないといけない」と霜田監督も強調していた。
ここまでの積み上げをどう具現化し、結果につなげていくのか。その道筋を真剣に模索しなければならない。
いずれにせよ、前半戦に大きく取りこぼした分、後半戦にギアを上げることは最重要課題だ。キャプテンの菊井を中心に選手たちが意見を出し合うくらいの気概を見せてほしいところ。元J1クラブの意地とプライドを今一度、示すしかない。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
