米オラクルはこのほど、「Oracle Fusion Cloud Human Capital Management(HCM)」にジェネレーティブAIが搭載された機能を追加したと発表した。

先日、日本オラクルの事業戦略説明会において、取締役 執行役 社長 三澤智光氏が、2024年度の重点施策の一つとして、「お客様のためのAIを推進」を紹介したが、今回の発表はそれを具現化したものとなる。

People Analytics, HCM Technology and Innovation Vice PresidentのGuy Waterman氏は、Oracle HCMにおけるジェネレーティブAIの提供について、「これまで提供してきたAIに追加する形で提供され、既存のAI機能を強化するもの。提案や補完する機能を備えている」と述べた。

米Oracle People Analytics, HCM Technology and Innovation Vice PresidentのGuy Waterman氏

Waterman氏は、ジェネレーティブAIの提供が顧客との対話から生まれたものであるとして、「お客様がジェネレーティブAIを利用する上での最大のリクエストは、 提供されているコンテンツのコントロールがユーザーにあることを保証してもらいたいということ。顧客が必要なコンテンツを構築できることが重要」と語った。

「Oracle Cloud HCM」において、ユーザーは自社のデータを使用して、特定のビジネス・ニーズに合わせてモデルを改良できる。ユーザー専用のジェネレーティブAIモデルは、独自のデータに基づいてのみ調整されるという。

そして、Waterman氏は、同社が人事におけるジェネレーティブAIのユースケースを100以上特定していると説明した。それらのうち、9つが今年の末までに提供が予定されているという。

「Oracle Cloud HCM」で提供が予定されているジェネレーティブAIのユースケース。日本語訳はジェネレーティブAIによるもの

ユースケースについては、AI Applications Vice President, Product Management Rich Buchheim氏が説明した。同氏は、ユースケースが「オーサリング支援」「提案」「要約」という3つのタイプに分けられると説明した。

米Oracle AI Applications Vice President, Product Management Rich Buchheim氏

オーサリング支援では、求人情報や業績目標の下書きなどの短いプロンプトを使ってコンテンツを迅速に生成し、ユーザーがレビュー・修正・承認できるようにする。活用例としては、職務記述書(ジョブディスクリプション)や募集要項の作成、詳細の説明や目標達成にむけた指標を含む目標の自動作成などがある。

提案に関しては、自然言語処理とベストプラクティスに基づいて、個人がより迅速かつ正確にタスクを完了できるよう支援する。活用例としては従業員向け調査を実施する際、その調査タイプに基づいた調査項目の自動提案や、マネージャーが従業員に与えるキャリア開発のヒントなどがある。

大規模言語モデル(LLM)を使用してトレーニングされた提案コンテンツには、組織独自の言語スタイルやカルチャーを反映することができる。

Buchheim氏は、「ジェネレーティブAIで生成されたコンテンツがSORに入っていくことはない。コンテンツは、ユーザーがコントロールが可能であり、修正などを経て活用される」と、生成されたコンテンツがユーザーの制御下にあることを強調していた。

3つ目のパターンである要約については、1つまたは複数のデータソースからコンテンツの主要要素を要約する。活用例としては、従業員、同僚、マネージャーから年間を通じて収集されたフィードバックや、目標の進捗状況や達成度合に基づいた、評価をする際に提出するパフォーマンスの要約などがある。

要約で得られるメリットについて、「ジェネレーティブAIは膨大なデータからポイントをまとめることができる。われわれは、ゼロから資料を作るよりもたたき台があるほうがよいものを作ることができる」と、Buchheim氏は述べた。

「Oracle Cloud HCM」では、ボタン一つでジェネレーティブAIを使うことが可能であり、ユーザーはジェネレーティブAIについて学ばすに利用することができる。

「Oracle Cloud HCM」では、ボタン一つでジェネレーティブAIを利用できる

AIを利用する上での問題の一つにバイアスがあるが、Waterman氏によると、オラクルはPIIに依存しない形でデータを保存し、公正な結果が得られるよう、常にモニタリングを行っているという。この取り組みにより、「完全にバイアスフリーは保証できるものではないが、バイアスが含まれるリスクは軽減できる」(Waterman氏)とのことだ。

なお、現時点では日本語には対応しておらず、ロードマップには日本語対応が含まれているという。