「セルフレジ」で誤操作…未精算→“窃盗”罪? 弁護士が解説
スーパーやコンビニエンスストアでセルフレジを導入する店が増えています。有人レジが混雑している際もセルフレジは比較的すいていることが多いため、待ち時間が少なく非常に便利です。
ただ、セルフレジを巡っては、バーコードの読み取りミスやレジの通し忘れなどが原因で、精算が済んでいない商品を持ち出してしまうケースが発生しているようです。もしセルフレジの利用時に誤って未精算の商品を店外に持ち出してしまった場合、法的責任が発生する可能性はあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所・弁護士の佐藤みのりさんに聞きました。
故意でなければ法的責任を問われず
Q.セルフレジの利用時にバーコードの読み取りミスなどが原因で、誤って未精算の商品を店外に持ち出してしまうケースが複数発生しているようです。この場合、法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。
佐藤さん「原則として、法的責任を問われることはありません。セルフレジで、わざと商品のバーコードを読み取らせずに、商品を店外に持ち出してしまうと窃盗罪(刑法235条)に問われ、10年以下の懲役または50万円以下の罰金を科される可能性があります。しかし、レジの読み取りミスなどが原因で、誤って未精算の商品を店外に持ち出してしまった場合、窃盗の故意がないため、窃盗罪で処罰されることはありません。
ただし、店外に持ち出した後、未精算であることに気付いたにもかかわらず、そのまま放置すると、占有離脱物横領罪に問われる可能性があります(刑法254条)。この場合、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料が科されます。未精算であることに気付いた場合には、速やかにお店に連絡し、事情を説明して、代金を支払うようにしましょう。
未精算であることに気付かないまま、商品を自分の物として消費してしまったとしても、占有離脱物横領罪の故意がなく、罪に問われることはありません」
Q.もしセルフレジの利用時に誤って未精算の商品を持ち出したことが原因で店側から万引きを疑われた場合、どうすればよいのでしょうか。
佐藤さん「窃盗罪(万引き)が成立するかどうかは、『盗むつもりがあったかどうか』という心情によって変わるため、万引きを疑われる可能性は否定できないでしょう。
ただ、疑われてしまったとしても、『うっかり未精算のまま持ち出してしまった』と事情を説明し、代金を支払えば、店側も納得してくれることが多いと思います。防犯カメラの映像を確認すれば、持ち出し行為がわざとだったのかがある程度推測できますし、商品の持ち出しを繰り返していないのであれば、大きなトラブルになることはないでしょう。
万が一、警察を呼ばれるなどの事態になった際は、弁護士に相談するのをお勧めします」
Q.セルフレジの利用時に商品を店外に持ち出したことで法的責任を問われた事例はありますか。
佐藤さん「セルフレジを悪用して逮捕に至ったケースは存在します。セルフレジで、ウイスキーなど6点、計1223円相当の商品を未精算、それ以外の商品を精算して店外に出た男性教員が、窃盗容疑で現行犯逮捕された事例があります。
男性教員は『(バーコードを読み取る)ピッという音を聞いて、レジを通ったと思っていた』と、当初容疑を否認していました。しかし、前日も前々日も同様の手口で商品を盗んでいたことが判明し、取り調べが進む中で容疑を認めたということです」