新しい15インチモデルは、先入観がひっくり返る完成度! 多くの人に伝えたい「大きくなったMacBook Air」の素晴らしさ

Appleの薄くて軽いノートPC「MacBook Air」に、ディスプレイが大型化した15インチモデルが登場した。発売から約2週間に渡って同モデルを試した筆者が、13インチMacBook Airと比較しながら、「大きなMacBook Air」の素晴らしさを紹介しよう。

リニューアルされたMacBook Air。今度は、大きくなった!

今年のWWDC(世界開発者会議)にて発表された15インチMacBook Air

AppleのMacBook Airといえば、“薄くて軽いノートPC”の代表格として広く知られています。

2020年にApple独自設計のシステムチップ「Appleシリコン」を搭載してからは、処理パフォーマンスと省電力性能が一段と向上。スペックの近いWindows PCに比べると価格が比較的手頃であることから、ビジネスパーソンや学生のモバイルPCとしても親しまれています。

MacBook Airは従来、本体のディスプレイを閉じたときに先端側の形状がより薄くなるウェッジシェイプ(くさび形)を特徴としてきました。今もラインナップに名を連ねている「M1」チップを搭載した13インチMacBook Airは、この馴染み深いデザインを受け継いでいます。

2022年にはデザインを一新したMacBook Air。15インチモデルでも全面がフラットなデザインを採用している

その流れが変わったのは、2022年のこと。Appleはデザインを一新した13インチMacBook Airを発売しました。

筐体全面をフラットなデザインにリニューアルし、ベゼル(縁)の狭いディスプレイにはフロントカメラ周辺にノッチ(切り欠き)を設けて画面占有率をアップ。同時に、マグネット式のMagSafe充電ケーブルも復活させました。全4色展開に増えたカラーバリエーションも、新鮮味を感じる要素です。

マグネットで着脱する「MagSafe」コネクタを採用。ケーブルに足を引っかけでしまったときにも、MacBook本体やコネクタ部を壊す心配がない

大きくなっても「薄くて、軽い」。13インチモデルと何が違う?

これまでMacBook Airは13インチが最大サイズでしたが、このたび画面を大きくした15インチ(15.3インチ)モデルが2023年6月に登場しました。

画面の大型化に伴い、本体の縦横寸法も大きくなりましたが、重さと本体の厚み(高さ)のサイズアップは最小限に抑えています。

Appleシリコンを搭載した現行のMacBook Air同士を比較すると、厚みは13インチモデルが1.13cm、15インチモデルが1.15cmと、わずか0.2mmアップに抑えています。また、重さは13インチモデルが1.24kg、15インチモデルが1.51kgと、その差は270g。ちなみにiPhone 14 Pro Maxの質量は約240gです。

15.3インチの大きな画面。画面領域が広く取れるように、フロントカメラ部分にノッチ(切り欠き)を設けている

13インチモデルと15インチモデルは同じ「M2」チップを搭載していますが、15インチモデルは「10コアGPU」を基本スペックとしています。13インチモデルは、8コアGPUが標準仕様です(CTOカスタマイズで10コアGPUに変更可能)。

さらに、15インチMacBook Airには6スピーカーサウンドシステムが搭載されました。フォースキャンセリングウーファーが追加されたことで、薄型ノートPCでありながら、厚みのある力強い低音再生と、音像が前に出てくる立体的な声の再現力が向上。13インチモデル(4スピーカーサウンドシステム搭載)と比べると、内蔵スピーカーで再生する映画や音楽のサウンド、そしてビデオ通話の声が一段と聴きやすくなっています。

スピーカーからの音の出口は、本体キーボードの上側。ディスプレイに反射させて音の広がりをつくり出している

また、15インチMacBook Airには、2つのUSB Type-Cポートを搭載した「デュアルポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ」が付属します。このアダプタは、使い慣れると手放せなくなるほど便利で、長めの出張には絶対に欠かせないアイテムです。

特にMacBook Airの場合、スマートフォンやイヤフォンなどの持っているデバイスの充電はデュアルポートアダプタにまかせて、数が限られる本体のThunderbolt/USBポート(×2)は周辺機器との接続やデータ転送などに活用できます。

「デュアルポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ」が付属。これにより、MacBook Air本体に搭載する2基のThunderbolt/USBポートが有効に使える

大画面でマルチタスクの効率が大幅アップ!

発売後から約2週間使ってみて、筆者は15インチMacBook Airが以下3つの点から見て、とても魅力的なノートPCだと感じています。

1つ目は、画面が約2インチ大きくなることで、最新のmacOSが搭載するマルチタスク機能が便利に使えるようになることです。具体的には、ワークスペースを有効活用する「ステージマネージャ」と「Split View」が一段と使いやすくなります。

ステージマネージャは、最新のmacOS 13 Venturaから搭載された新機能。現在進行形で使っているアプリのウインドウを前面中央に表示し、最近使ったアプリのサムネイルを画面左側に整列表示します。サムネイルを選択すると、メインアプリがすぐに切り替わる仕様です。

「ステージマネージャ」は、画面中央にメインアプリを表示し、画面左側に最近使ったアプリのサムネイルが並ぶ。15インチMacBook Airでは最大5つのサムネイルを表示できる

一方のSplit Viewは名前のとおり、画面をタテ方向に2分割して、それぞれにひとつずつアプリを起動し、同時に作業がこなせるようになる機能です。

画面を2つに分割表示してマルチタスクがこなせる「Split View」機能

筆者は長く13インチMacBook Airを使ってきましたが、この2つの機能を使うと画面が手狭に感じられて、これまであまり使わずに持て余してきました。その点15インチMacBook Airでは、より多くのウインドウを画面上に並べても、アクティブなアプリウインドウが窮屈になりません。

今秋に正式リリースを迎える次期「macOS 14 Sonoma」からは、日付と時刻の表示をクリックすると開く「ウィジェット」が、デスクトップ上にも配置できるようになります。狭いデスクトップにウィジェットを置いてしまうと、余計に画面が見づらくなりますが、15インチの大画面では操作を妨げる心配も少なくなります。

次期macOSからウィジェットをデスクトップに置いて使えるようになる(写真/apple.com)

「大きなMacBook」の選択肢が増えた意義

2つ目は、トラックパッド横に位置するパームレストのエリアが広くなって、キータイピング時の疲労が緩和されたことです。

パソコンのキータイピングについては、打鍵感も含めて好みが分かれるところが、筆者の場合は15インチMacBook Airのパームレストエリアに手首を乗せてもなお、トラックパッドに誤って触れることなく、快適にタイピングができました。

キーボードの打鍵もとても安定しますし、パームレストのエリアは起伏がなくフラットなため、長くキータイピングしても手首が疲れることがありません。

画面が拡大したぶん、トラックパッド横のパームレストのエリアが広くなった

3つ目のポイントは、大型化したにもかかわらず、MacBook Air特有のポータビリティが一切損なわれていないことです。

筆者が仕事に使っているバックパックのノートパソコン用のポケットにも難なく入るサイズ感で、使用時にはスムーズに取り出せる薄さと軽さは見事のひと言。15インチ台のノートPCは「家で使うもの」という、先入観がひっくり返りました。

15インチMacBook Airは薄く、軽く、そして高性能な大型モバイルノートPCとして異彩を放っています。

従来は13インチ以上のMacBookシリーズを手に入れたくても、重量のあるMacBook Proシリーズしか選択肢がありませんでした。これからは「やりたいこと」をじっくりと検討したうえで、15インチ以上の画面の大きなモデルが必要な場合でも、ProとAirを比較検討できます。

「M2」チップの高いパフォーマンスにより、MacBook Airでも簡易な動画編集などのマシンパワーが必要な作業が、移動中でもできるようになります。3DCGなどのさらに高度なクリエイティブワークのためにMacBookが欲しい人は、「M2 Pro」または「M2 Max」チップが選択でき、SDカードスロットや複数のThunderbolt/USB-Cコネクタを搭載する14インチ/16インチMacBook Proも視野に入れて、15インチMacBook Airとの違いを吟味するとよいでしょう

ラインナップが充実したことで、今後はMacBookシリーズを選ぶユーザーがさらに増えそうです。

文・写真/山本敦