イーロン・マスク氏がCEOを務める電気自動車メーカー・テスラの車には、有料オプションで使用可能な「Full Self Driving(FSD)」と呼ばれる自動運転機能が搭載されています。このFSDは日本語に訳すと「完全自動運転」という名前ですが、実際はドライバーによる常時監視が必要な(PDFファイル)レベル2運転支援システムとなっています。そんなテスラのFSDを研究していたハッカーが、ドライバーの監視が不要になる隠し機能を発見したと報告しています。



Tesla hacker discovers secret ‘Elon Mode’ for hands-free Full Self-Driving - The Verge

https://www.theverge.com/2023/6/20/23767041/tesla-hacker-elon-mode-hands-free-full-self-driving-autopilot

テスラのFSDは、1万5000ドル(約210万円)を別途支払うことで使用可能になるオートパイロット機能のオプション機能で、通常のオートパイロット機能に加え、高速道路での車線変更や自動駐車機能、ガレージから自分のいるところまで自律走行させる機能、信号や標識を識別してブレーキをかける機能などが追加されます。

ただし、FSDの使用中はドライバーが常時監視していることを証明するため、ドライバーはハンドルを定期的に軽く動かす必要がありました。また、バックミラーの上に取り付けられている車内カメラではドライバーが常に前方を向いているかどうかを確認しており、ドライバーが前方以外を向いた場合、「道路を注視してください」と警告がされるとのこと。

テスラのシステムを解析するハッカーのgreen氏は、発見した隠し機能を「イーロン・モード」と名付けています。このイーロン・モードではドライバーがハンドルを動かす必要がなくなるため、完全フリーハンドで運転できるというわけです。

実際にgreen氏はイーロン・モードに切り替えた上でFSDを有効にして高速道路を走行するムービーをYouTubeに公開しました。走行中、ほとんどハンドルに触ることなく車を運転することに成功しています。

Look ma, no nags - YouTube

green氏はイーロン・モードで600マイル(約965km)近く走ったそうですが、システムから警告を受けずに走行することができたと報告しています。



ただし、テスラの自動運転システムはなぜか高速道路で不必要に車線変更をしようとし、さらに速度を落として徐行運転になったことがあったそうです。また、時速85マイル(約136km)を超えるようにアクセルを踏むとオートパイロット自体を切ろうとしてきたとgreen氏は報告しています。

なお、green氏は、自身が解析を始めた2017年に比べて、テスラのソフトウェアはこれまで以上に安全になったと述べています。green氏は他のメーカーの車と比べてもテスラのソフトウェアのセキュリティ性は高く、「より良くなり続ける素晴らしいパズル」と評価しています。