「ほとぼりが冷める」には、物理的なものと比喩的なものの、複数の意味があります。

本記事では「ほとぼりが冷める」の詳しい意味や「ほとぼり」の漢字と語源、使い方・例文を紹介。言い換えや対義語の他、恋人とけんかした際にほとぼりが冷めるまでの期間はどの程度なのかやポイントもまとめました。

「ほとぼりが冷める」の正しい意味や使い方、類語や対義語などを紹介します

「ほとぼりが冷める」の意味とは

「ほとぼりが冷める」とは、物理的に余熱が無くなることの他、比喩として、高ぶった感情や興奮が収まること、事件などに関する世間の興味や関心が薄れていくことを意味する慣用句です。

物理的な意味よりも、比喩表現として使われる方が多く、例えば「スキャンダルが発覚した例の芸能人は、ほとぼりが冷めるまで謹慎することにしたようだ」などと使用します。

「ほとぼりが冷める」の漢字・語源は?

「ほとぼり」を漢字で書くと「熱」、あるいは「余熱」です。

「ほとぼり」は、「火通(ほとほる/ほとおる)」という動詞が名詞化した「ほとほり(ほとおり)」が元々の形だと考えられています。

「ほとぼり」自体の意味は、余熱、高ぶった感情の名残、事件などに関する世間の興味や関心などです。

本来は物理的な熱気について述べていたものが、転じて高ぶった感情や関心を指すようになり、それが冷めていくことを意味する「ほとぼりが冷める」という言葉ができたと考えられます。

「ほとぼりが冷める」の正しい使い方・例文



「ほとぼりが冷める」は主に、「感情の高ぶりや、興味関心が収まる」という意味で使われます。誰のほとぼりか、という点については、個人だけでなく、不特定多数の人々や世論について述べることもあります。

なお、上記の比喩表現に比べて見聞きする機会は少ないですが、「(物理的な)余熱が冷める」という意味で使用されることもあります。

下記で具体的な例文をチェックし、使い方のイメージを捉えていきましょう。

○けんかしたばかりなので、ほとぼりが冷めるまで彼女とは距離を置くつもりです

けんかをしてしまい、彼女の感情が怒りなどで高ぶった状態であるため、しばらく接触を避け、彼女の気持ちが落ち着くまで待つつもりだ、という意味です。

この例文で「ほとぼり」を残している人物は彼女です。

「ほとぼりが冷める」はこのように、怒りやいら立ちのような激しい感情をいったんやり過ごす、という意味で使われることがあります。

○騒動のほとぼりが冷めるまで、彼は謹慎するつもりだ

「騒動のほとぼり」と表現すると、何かのトラブルや不祥事に対し、不特定の人々が批判している様子が想像できます。

そのほとぼりが冷める、つまり収まるまで謹慎して、人々の興奮や関心が沈静化するのを待つ、という意味の例文です。

この例文において、「ほとぼり」を持っているのは特定の個人ではなく、ある程度の規模の集団だと推測されます。

○昨年に発覚した政治家の汚職事件は、ほとぼりが冷める気配がない

政治的なニュースは、人々の興味、関心を集める事柄の代表といえます。汚職事件であれば、批判的な意味での関心が多く、「ほとぼり」がマイナスな気持ちの高ぶりである、と解釈できるでしょう。

「ほとぼりが冷める気配がない」と否定の形にすることで、余熱が一向に収まらない、世論やメディアの批判が時間がたっても沈静化しない様子を想像できます。

○オーブンはまだほとぼりが冷めていないから、子供たちに触らせないようにしてね

「ほとぼり」を、物理的な「余熱」として使っている例文です。

使った直後の電化製品が内部に熱を残していると、それは「ほとぼり」になります。

しかし、物理的な熱や余熱の意味での「ほとぼり」は、現在では使われる機会があまり多くないため、相手に理解してもらえない可能性もあります。

このような使い方を試みる場合は、前後の文脈から相手に意図が通じるような言い回しの工夫が必要です。

「ほとぼりが冷める」の類語・言い換え表現



ここでは、「ほとぼりが冷める」の類語を紹介します。

物事が落ち着く、弱まっていくことを表す言葉や表現が該当します。

○沈静化する

「沈静化(ちんせいか)」とは、一時の騒ぎや激しい動きが自然に落ち着いて、元の静けさに戻る、という意味です。

下記のように使用します。

全国に広がった抗議運動は、次第に沈静化していった

同音異義語に「鎮静化」があります。こちらは「自然に」ではなく、何らかの働き掛けにより「人為的に」人々の興奮を抑えるという意味の言葉です。使い分けに気を付けましょう。

○熱気が収まる

「熱気が収まる」という表現は、人々の気持ちの高ぶりや関心が落ち着く、という意味で「ほとぼりが冷める」の類義語といえます。

ただし、細かいニュアンスが異なります。

「ほとぼりが冷める」は怒りや批判のような負の感情に対して使われやすい言葉です。一方「熱気が冷める」は、主に意気込みや好意、賛同、憧れなどの、前向きな感情に使われることが多いと言えます。

意識せずに使うと、相手に違和感を与える可能性があります。場面に応じて使い分けましょう。

○関心が薄れる

「関心が薄れる」は直接的な表現ではありますが、「ほとぼりが冷める」の類義語と言えます。

あれほど世間を騒がせたニュースだが、一カ月たった今では人々の関心はすっかり薄れている

このように、人々の気持ちがその事柄から離れたことを表しています。

○終息する

「終息」とは、物事が終わり、やむことです。「ほとぼりが冷める」と比較すると、最終段階により焦点を置いた表現と言えるでしょう。

まん延していた疫病がとうとう終息した

この例文のように、特に長く続いた物事の終わりについてよく使われます。

○収束する

「終息」の同音異義語に「収束」がありますが、これも「ほとぼりが冷める」の類義語と言えます。

「収束する」は、混乱していた事柄がまとまって収まりがつく、決着がつく、という意味があります。

下記のように使用します。

彼は、事態の収束を図った

なお「収束」は、ある値が特定の値に近づいていくことを表す数学用語でもあります。

「ほとぼりが冷める」の対義語



この項目では「ほとぼりが冷める」の対義語について、例文を交えながら解説します。「ほとぼりが冷めない」ももちろん対義語と言えますが、それ以外で熱の継続や盛り返すことを示す表現を紹介します。

○沈静化しない

「沈静化しない」は、騒ぎや激しい動きが落ち着かないことを意味します。

大臣は、新しい法案への抗議活動が沈静化しないことに頭を悩ませていた

この例文のように、本来時間が経過して落ち着いてほしい事態が、継続して活発である場合に用いられます。

○熱気が冷めない・熱気が冷めやらぬ

「熱気が冷めない」「熱気が冷めやらぬ」という表現は、「人の感情や興奮、興味が沈静せずに継続している」ことを意味します。

下記のように使用します。

観客の熱気の冷めやらぬ様子に、彼の人気の高さがうかがえた

類語の章で説明したように、「熱気」は肯定的な興奮や関心である場合が多いです。

なお「やらぬ」とは、ある動作が終わっていない、「まだ〜し切らない」という意味を持ちます。そのため「冷めやらぬ」には、「冷めてもいい頃合いなのに、まだ続いている」というニュアンスが込められています。

○再燃する

「再燃する」とは、一度消えた火が再び燃え上がるという意味の他、広い意味で、静まったものが再び活性化する、勢いを取り戻すといった意味があります。

この曲によって彼女の人気は再燃した

この例文のように、いったん落ち着いていた興味、関心が再び盛り上がる様子を表します。肯定的にも、批判的にも、双方のニュアンスで使われる表現です。

ずっと熱が続いているのではなく、いったん落ち着いたものが再び熱を帯びるという点がポイントです。

恋愛で相手を怒らせたときに、ほとぼりが冷めるまでの期間は?



恋愛において恋人とけんかしてしまったり、相手を怒らせたりしてしまった場合に、時間がたって互いの気持ちや考えが落ち着くまで、つまり「ほとぼりが冷める」まで、距離を置くことがあります。

この場合、どの程度の期間を置くといいのでしょうか。けんかの内容や個人の性格によるため、あくまで参考ですが、以下のパターンが考えられます。

1日…お互いが歩み寄れる最短期間

数日…ちょっとこじらせたけんかの場合

1週間…話がこじれた場合

1カ月…互いの溝が深いとき。ここまで長期間の場合は別れの覚悟も必要

なお、もし「互いに冷静になった方がいいから、しばらく距離を置こう」と提案する場合、あらかじめ期間を決めておくことをおすすめします。だらだらといつまでも冷却期間が続くと、自然消滅も起こり得ます。

また、事前に冷却期間の定義・ルールを決めておくのが賢明でしょう。なぜなら、人によっては「距離を置こう=遠回しな別れ話」と捉える場合もあるからです。事前のすり合わせが無い場合、そろそろ相手の怒りも収まった頃かな、と連絡したら、相手には次の恋人がいた、というケースも考えられます。

○ビジネスや日常で「ほとぼりが冷める」を適切に活用しよう

「ほとぼりが冷める」とは、余熱が引くように、問題が沈静化することを指します。

ほとぼりが冷めるまで待つことは、逃げるようなイメージもありますが、そうした方が物事が円滑に進むケースも存在します。「ほとぼりが冷める」の意味やニュアンスを正しく把握して、ビジネスや日常で活用しましょう。