戦犯と呼ばれて…永田裕志「誰かが“幻想”を崩す必要があった。それが自分の格闘技戦だったんです」
もう少し早く生まれていたら、あるいはもう少し遅くプロレスラーになっていたら、こんなババを引かないで済んだのではないか? 少しだけ、そう考えたこともありますよ。でも、そう考えると自分が惨めになるじゃないですか。だから気持ちを切り替えて、プロレスのリングでガンガンやり合っていましたね」
あまりにも理不尽な話だが、サラリーマン社会でも見られる光景かもしれない。会社命令によって望んでもいないことをやらされて、その結果がダメだったら『傷物になった』と責任を取らされる。永田の場合、やり場のない怒りをひたすら試合にぶつけた。その結果、生まれたのが白目でのファイト。誤解されがちだが、あの白目はコミカルに大向こう受けを狙ったのではなく、憤懣やるかたない怒りの表現なのである。
僕の場合は試合にそれを投影していますが、会社員の方もストレスを発散する場所は持っていたほうがいいかもしれませんね。一番いいのはジムとかで身体を動かして、おもいっきり汗を流すこと。狂ったようにカラオケで発散してもいいと思う。場合によっては、それがお酒でもいいんじゃないですかね。ただし、周りに迷惑をかけないという条件つきですが(笑)。たとえ窓際に追いやられても腐らず、自分で居場所を作っていこうと踏ん張れば、道は自ずと開けていくんじゃないでしょうか。絶対に誰かはあなたのことを見ていますから」
そんな永田は、6月18日に自主興行を開催する。これまで自主興行は地元・東金市で毎年開催してきたが、佐倉市で行うのは初めて。千葉県はプロレス興行が苦戦する土地といわれているため、レスリング文化を根づかせたいという思いもあるようだ。
「会場の佐倉市民体育館って、自分にとってレスリング人生の原点なんです。84年6月にインター予選で初めて試合をした場所ですから。それで最後に試合したのが87年の7月だったかな。でも、いつかここでプロレスの試合をしたいというのは頭にありました。当時の仲間が今は市役所に勤めていたりもするから、細かいところで融通が効くのも助かっています。今日も『2階の椅子、少し古くなっていない?』なんて会場の下見をしながら打ち合わせしてきましたしね。全力ファイトで会場を盛り上げるのは当然だとして、とりあえず自分の最大任務としては大会当日まで三冠ヘビー級のベルトを死守しなくてはいけない(笑)」
引退して第二の人生を歩み始める同年代のレスラーが目立つ中、自身に関しては「IWGPヘビーのベルトを再び巻くまで現役を辞めるつもりはない」と明言。現在の永田はレスリングチームのスカウトや監督業務も行っており、それとは別に自分の会社も設立している。つまり選手を辞めても生活に苦労することはないのだが、完全燃焼しないことには自分で納得がいかないのだという。波乱に満ちた永田のプロレス人生、ここからさらなるドラマを生み出しそうだ。
▽永田裕志Produce Blue Justice XII 〜青義回帰〜
永田選手、地元・千葉県での自主興行。今年は12回目となる大会を佐倉市民体育館で開催。
日時:6月18日(日) 14:30開場 16:00開始
会場:千葉・佐倉市民体育館
URL:https://www.njpw.co.jp/tornament/414850
※出場選手・対戦カードは決定次第発表