なぜ直塗り? JALが世界初「直塗りでサメ肌外装」旅客機を実現! どう塗るのか まさに目からウロコな裏側
「サメ肌」にするメリット、どんなもの?
約2%の燃費改善効果が期待
JAL(日本航空)とJAXA(航空宇宙研究開発機構)、ニコンなどが、世界で初めて、「サメ肌」効果により空気抵抗を減らし、燃費向上を図る「リブレット形状」を塗料に採用した航空機での飛行実証試験を実施しています。これまで旅客機では「サメ肌形状」を施したフィルムを機体に貼る取り組みは見られましたが、今回の特徴は、機体に直接「サメ肌塗装」をするということ。どういったメリットがあるのでしょうか。
「サメ肌塗装」が施されたJALのボーイング737「JA331J」(2023年2月28日、乗りものニュース編集部撮影)。
JAXAによるとこの「リブレット加工」は、胴体表面に溝を細かく彫っていくことで、機体表面の空気の渦を制御し、空気抵抗を低減できる効果があるといいます。仮に全面にこの外装をまとった場合、約2%の燃費改善効果が期待できるそうで、JAL機の整備を担当するJALエンジニアリングの小倉技術部長は「羽田〜ロンドン線であれば片道あたり7トン削減ができる」としています。
この「サメ肌塗装」は2機のボーイング737国内線仕様機に施されています。2022年7月からは「JA331J」に、同年10月からは「JA334J」の胴体底部に、7.5cm四方、2か所の塗装があしらわれ、形状を定期的に測定する耐久性飛行試験が、実際のフライトで実施されました。そうして2機でのべ2250時間を超える実証実験を行った結果、いずれも十分な耐久性を有することが確認されたといいます。
なお胴体底部を塗装したのは、「初めて施工するということで流体力学的に一番影響が少ないであろうところを選んだ」(小倉隆二技術部長)とのことです。
そのような「サメ肌塗装」ですが、なぜあえてフィルムではなく「直塗り」なのでしょうか。JAXAの担当者は次のように話します。
なぜ「直塗り」なのか?そしてどう塗装?
「フィルムではなく塗装でリブレット外装を実施するのは、作業に手間を要する一方で、耐久性も高く、さらに飛行中に落下する心配もないというのがメリットです」(JAXAの担当者)。国内線仕様機は、羽田空港を始め市街地の上空を飛ぶケースが多いことから、とくにJAL側が「落下物」に気を払った結果、今回の「サメ肌塗装」が実現したといえそうです。
「サメ肌」を行う塗料は無色透明。その工程はその塗料を「サメ肌」が刻まれた水溶性フィルムに塗りつけたのち、塗料が塗られている側を機体に貼り付け。その後水洗いを行うと、フィルムが溶け、「サメ肌塗装」が完成します。
JAL、JAXA、ニコンらが実施した「リブレット塗装」説明会の様子。登壇する小倉隆二技術部長(乗りものニュース編集部撮影)。
小倉隆二技術部長は今回の取り組みについて、「小さくても光る技術はないか?と考えるなか、2018年にJAXAから提案を受け、整備の熟練の技術を利用でき、若い技術者のモチベーション維持にも有効ということで取り組むことになりました」と話します。
JALの「サメ肌塗装機」は今後、2023年度には国内線仕様機に、2024年度に、より燃費効率の向上が期待される国際線仕様機に展開。2025年度以降にはリブレット機の増機を図りたいとのことです。