「もっと遅くまで走らせて」 終電の「繰り下げ」ローカル線で相次ぐワケ しぼんだ深夜に打って出る
大都市圏で終電繰り上げが進む中、地方では終電を繰り下げる動きがあります。どのような背景があるのでしょうか。
東武東上線の“末端部”、夜が激変?
コロナ禍を経て、深夜帯における鉄道利用者の減少や保守作業時間の確保といった要因により、大都市圏で終電の繰り上げが進んでいます。一方、地方を中心に、ここへきて終電繰り下げを実施する動きも見られるようになってきました。どのような背景があるのでしょうか。
東武鉄道は、2023年3月18日に予定しているダイヤ改正で、東武東上線の川越市〜寄居間で平日上り終電を大幅に繰り下げる予定です。寄居→森林公園は最大57分、森林公園→川越市は最大52分もの繰り下げ。当該区間のなかでも小川町〜寄居間は比較的乗客の少ない「ローカル線」とも言える区間ですが、今回のダイヤ改正で利便性が向上します。
終電が繰り下げられる秩父鉄道(画像:写真AC)。
今回の終電繰り下げの理由について、東武鉄道によると「沿線のお客様の利用が見込まれるようになったため」(広報部)とのこと。小川町〜寄居間の沿線では変化が起きており、たとえば2020年にはホンダ埼玉製作所寄居完成車工場の隣接地に東上線の新駅「みなみ寄居駅(ホンダ寄居前)」が開業。その後、ホンダ狭山工場の機能も寄居工場に集約されるなど、鉄道利用者の増加が見込める要素がありました。
東武東上線と寄居駅で接続する秩父鉄道も3月18日にダイヤ改正を実施。熊谷〜寄居間で寄居方面の終電を繰り下げます。現在熊谷駅の下り終電は、23時2分(土休日22時52分)ですが、ダイヤ改正後は23時18分となる予定です。今回の終電繰り下げの理由について、秩父鉄道では「東武東上線の小川町方面の終電繰り下げに合わせたことが、主な要因」(運輸部運輸課)としています。東上線の終電繰り下げが、他社線にも影響を及ぼしたことになります。
「もっと遅くまで走らせて」要望
首都圏のローカル線以外でも終電繰り下げの動きがあります。香川県高松市近郊に複数の路線を持つ「ことでん」こと高松琴平電気鉄道も、2023年3月18日のダイヤ改正で終電を繰り下げます。琴平線の下り終電は現行ダイヤから30分、長尾線は51分、志度線は46分繰り下げられる予定です。
今回の終電繰り下げの理由について、ことでんによると「高松市内の飲食店や利用者から要望が多く寄せられており、社内でもアフターコロナに対応していく方針となったため、終電を繰り下げることになりました」(鉄道事業本部運輸サービス部)としています。ちなみに、コロナ前はさらに遅い時間まで終電があり、今回のダイヤ改正でも「元通り」とはなりませんでしたが、利便性は大幅に向上します。
各社が終電を繰り下げる理由はそれぞれ異なっていますが、全国的にローカル線が苦境に立つなか、終電の繰り下げは利用者を増やす「攻め」の取り組みといえるのではないでしょうか。