歴代最高のカクバリ感!? 福井鉄道の新型車両が斬新だった 展望ロングシートに“ぼっち席”も
福井鉄道が新型低床車両F2000形電車「FUKURAM Liner(フクラムライナー)」を公開。先代とは大きく異なるフォルムが目を引きますが、内装にも様々な変化が見られます。
新幹線開業に先駆けて新車投入
2023年2月25日(土)、福井鉄道は新型のF2000形電車「FUKURAM Liner(フクラムライナー)」を報道公開しました。
25日に公開された福井鉄道の新型車両F2000形(蜂谷あす美撮影)。
フクラムライナーは、2013年に導入が始まった「FUKURAM(フクラム)」シリーズの5編成目にあたり、運転士の習熟訓練、機器の安全確認などを行ったうえで、3月27日から福武線(たけふ新〜福井駅、田原町)で営業運転開始、4月上旬にはえちぜん鉄道との相互直通運転にも投入される予定です。
フクラムライナーの第一感想は「シュッとしている」でした。先行車両である「フクラム」が丸くてかわいらしい印象であることから、余計に違いが目立ちます。常務取締役の澤粼幸夫さんによると、愛称の「ライナー」部分には「近未来的な直線のフォルム」の想いがこめられているとのこと。外観には、福井鉄道のコーポレートカラーであり、福井の青い空と緑の大地をイメージした青、緑、白のカラーリングが施され、さわやかな雰囲気を漂わせています。
車両はアルナ車両製で、超低床車両シリーズ「リトルダンサー」のうち、最大クラスの「タイプL」。長さ21.4m・幅2.6m・高さ3.83mで、現行のフクラムより長さが4mほど短くなる以外はほぼ同寸です。制御方式はVVVFインバータ、ブレーキは回生ブレーキおよび発電ブレーキを採用、フクラムと比較すると、およそ2割の消費電力削減を達成しています。
また福井という雪国ならではの課題として、積雪時、特に超低床車両の場合は、車両のお腹部分に雪を抱え込んでしまい運行できなくなることがあります。フクラムライナーではその対策として、先頭車の下部に、高さ10センチほどの排雪板を配置。レール上に積雪があっても、安全かつ安定した走行ができるようになっています。
つり革には「目玉が動く越前がに」も
車内外全体を通しての大きな特徴としては、車イス利用者などに配慮したバリアフリー化があげられます。出入口には、ホームに段差がある場合でも容易に乗り降りできるよう、同社の車両としては初めてスロープが配備されました。また、座席をロングシートにすることで、通路幅は、クロスシートであるフクラムのおよそ2倍である1.7mを確保し、車内移動を助けます。さらにシートの2か所には、路線バスでも採用されている跳ね上げ式を採用。たたみ込むことで、車いすスペースとして活用できます。
車内で注目したいのは、一口にロングシートといっても、バリエーションが豊富な点です。車端部は車軸の関係上、他よりも一段高い場所に座席が設けられ、非常に見晴らしの良い「展望席」に仕上がっていました。一方、連接部分付近には1人掛けの「ボッチ席」もあり、その日の気分に合わせた座席選びが楽しめそうです。
素材やデザイン面では、地元「福井」への意識が感じられます。シートの表皮材は、県内で繊維製品の企画製造販売を行うセーレンが担当し、メイドイン福井を実現。福井の豊かな水資源や日野川の川の流れをイメージした、水色が基調の優しいデザインが、温かみある車内空間を演出していました。シートの製造にあたっては、要望に応じたデザインを、必要な量だけ作ることができるプロダクションシステムを使用し、環境面への配慮もなされています。またセーレン株式会社車輌内装事業部の水野彰夫さんによれば、「従来のシートとは異なり、コーティング剤が使われていないため、シートの取り換え時には、そのままリサイクルに回せます」とのことでした。
さらに車内を見渡せば、つり革の中には、沿線の西山公園の人気者「レッサーパンダ」や、福井の名物「越前がに」をかたどったデザインのものも交じっており、越前がにに至っては、揺れに合わせて目玉も動くというギミックがあります。このほか、観光振興の面から、福井鉄道では初めて車内モニターを導入し、4か所に設置しています。営業開始後は、地元や沿線エリアの観光資源を映像化して流すそうです。
福井鉄道の村田治夫代表取締役社長は「フクラムライナーは期待を寄せている新型車両です。2024年には北陸新幹線敦賀延伸、開業が控えています。ぜひ全国からフクラムライナーに乗りに来ていただきたい」と語ってくださいました。