群馬県の山間部を走るJR吾妻線。全線を走る列車は少なく、乗り通しは困難です。「青春18きっぷ」などで訪問する場合、むしろ終点まで行かないようにする方が、楽しめそうです。

特急も走るよ! 温泉たっぷり「吾妻線」

 JRローカル線の中で、関東にありながら乗り通しが難しい路線のひとつが、群馬県の渋川駅を起点とする吾妻線です。


吾妻線で使用される211系電車(画像:写真AC)。

 全列車が高崎駅もしくは新前橋駅を起点とし、上越線を北上して渋川駅から西へ分岐。そこから山間部を55km走って、終点の大前に至ります。高崎〜大前は2時間弱の旅です。

 大半が吾妻川の谷間を走る山岳路線ですが、沿線には温泉地が複数存在し、観光路線の性質が強くなっています。特に長野原草津口駅は、関東屈指の観光客数を誇る草津温泉への玄関口で、上野駅から特急「草津」が1日2〜3往復運転されています(3月ダイヤ改正で『草津・四万』へ改称予定)。

 ダム湖や渓谷美も楽しめるこの吾妻線ですが、「青春18きっぷ」などを利用し普通列車で訪問するとなると、少々注意が必要です(以降、ダイヤは2022年2月時点)。

吾妻線の「寸止めダイヤ」に注意!

 まず、吾妻線を「終点まで乗りとおす」という人に立ちはだかる壁が、「半分以上の電車が1つ手前の万座・鹿沢口駅止まり」という事実です。高崎発で明るいうちに乗れる列車は9本で、そのうち2本は長野原草津口止まり、4本は万座・鹿沢口止まり。終点・大前まで到達できる日中のダイヤは6時台・8時台・15時台しかなく、都心から探訪するチャンスは実質2回だけです。

 大前駅は山裾にホームが1本あるだけの無人駅。対岸の国道にバス路線はありません。どうしても昼間に訪問したい場合、万座・鹿沢口からは3kmちょっとの距離なので、徒歩で1時間もあれば到達できます。

吾妻線から別エリアへ「ワープ」は可能?

 長大な盲腸線である吾妻線。行って引き返すだけで1日を費やしてしまいます。せっかくなら復路を別ルートにして、他の旅先へワープしたい人もいるでしょう。そのときも、終点まで行かないようにすると、行動範囲がぐっと広がるケースが多いです。

●万座・鹿沢口駅から:軽井沢方面
 西武観光バスが、万座バスターミナル・嬬恋牧場から南下し、当駅を経由して軽井沢駅へ直交する路線を運行しています。利用すれば長野方面へのワープとなります。乗継は以下のとおり。

・新前橋6:23→(バス乗継)万座・鹿沢口駅9:34→中軽井沢駅10:19→軽井沢駅10:35
※大前で折り返しても、バスに乗継可能。
・高崎10:44→(バス乗継)万座・鹿沢口駅14:54→中軽井沢駅15:39→軽井沢駅15:55
※万座・鹿沢口駅12:50発の嬬恋牧場行きに接続するため、接続待ちに寄り道が可能。
・新前橋15:20→(バス乗継)万座・鹿沢口駅17:09→中軽井沢駅17:54→軽井沢駅18:10
※乗継時間は2分。

●羽根尾駅から:軽井沢方面
 草軽交通の草津温泉〜軽井沢線が、駅前の「応桑道」バス停を通っています。乗継は以下のとおり。

・高崎8:53→(バス乗継)応桑道11:07→軽井沢駅北口12:06
※大前で折り返すと、乗継できない。
・高崎10:44→(バス乗継)応桑道13:07→軽井沢駅北口14:06
※万座・鹿沢口で折り返しても、バスに乗継可能。
・高崎13:55→(バス乗継)応桑道16:03→軽井沢駅北口17:03
※万座・鹿沢口で折り返すと、乗継できない。

●長野原草津口駅から:軽井沢方面
 草軽交通が、北軽井沢までの路線を運行しています。北軽井沢からは軽井沢駅行きに乗継ができます。乗継は以下のとおり。

・高崎11:44→(バス乗継)長野原草津口駅13:25→(バス乗継)北軽井沢14:30→軽井沢駅北口15:09

 ちなみに北軽井沢には、軽井沢と草津温泉をむすんでいた電車「草軽電気鉄道」の駅舎が残されており、国の登録有形文化財に指定されています。

 以上のように、高崎方面から吾妻線を探訪した場合、「大前駅をあきらめる」という決断をすれば、案外移動ルートは柔軟性があることがわかります。いっそのこと草津温泉でゆっくり過ごすか、思い切って長野方面へワープする決断もありでしょう。