まさかLNGの「さんふらわあ」でも使う…?

商船三井が船舶燃料に検討「液化バイオメタン」とは

 今まで誰も利用しなかったモノを燃料に――その象徴ともいえるかもしれません。商船三井は2023年2月、エア・ウォーターとともに、家畜糞尿由来の液化バイオメタン(LBM)をLNG(液化天然ガス)燃料船で試験利用することへ向けた共同検討について覚書を締結しました。


家畜の糞尿由来の燃料を船舶用LNGの代替として検討している。写真はイメージ(商船三井の画像を加工)。

 エア・ウォーターは、北海道十勝地方で家畜糞尿からLBMを製造する技術開発・実証事業を行っています。このLBMを、商船三井グループの内航LNG燃料船で使用すべく、両社で船陸双方の既存設備にて問題なく輸送・供給・使用ができるかを確認するとのこと。2023年度前半の使用を目指すということです。

 LBMを舶用燃料として利用することは、国内初の取り組み。商船三井は早期の低炭素化を実現すべく、従来の燃料油に比べCO2(二酸化炭素)排出量などを大きく削減できるLNG燃料船の導入していますが、それと同時にバイオメタンや合成メタンの利用へ向けた取り組みを進めてきたといいます。「LBM・LNGともに主成分はメタンであり、輸送や消費に関わる既存のLNGサプライチェーンを活用できるため、船舶運航における脱炭素化に向けた有効な手段となり得ます」ということです。

 一方のエア・ウォーターは、2022年10月に家畜糞尿由来のLBMの製造工場を国内で初めて稼働させ、食品工場やLNGトラックへの燃料供給を進めています。十勝の酪農家が保有するバイオガスプラントから発生した未利用バイオガスを回収、その主成分であるメタンを分離・精製し、マイナス160度ほどで液化したものがLMBで、メタンは液化することにより容積を600分の1に圧縮できるため、一度に大量輸送が可能なのだそうです。

 両社は、「LBMの船舶燃料利用に向け、互いの知見を生かし、海上輸送の低・脱炭素化に貢献していきます」としています。