東京で最短、日本でも3番目に短い国道は、長さにして500m未満です。なぜこのような国道ができたのか、その秘密は、あまりにもあっけない“起点”にありました。

終点はハッキリしている国道130号「旧海岸通り」

 東京で最も短い国道は、全長わずか482m。Googleマップによるとクルマならば2分で走破できるとされます。実際に行ってみました。


東京で一番短い国道130号の風景(乗りものニュース編集部撮影)。

 この国道130号は、全線が東京都港区に所在します。都心方面から第一京浜(国道15号)を南下し、田町駅の北側の芝四丁目交差点で、案内標識に「130」の国道マークとともに「旧海岸通り」とされる道が左へ分岐します。ここが国道130号の“終点”です。左折してみました。

 JR在来線と東海道新幹線をくぐり、やや右にカーブする線形に。昔はここで都電がカーブしていて、その線形の名残りを感じられます。直進方向へ進むと、やがて首都高の高架が上空を横ぎる南浜橋交差点で6車線の海岸通りと接続します。

 国道は一般的に主要道路どうしを結ぶため、ここまでが国道130号と思うかもしれませんが、そうではありません。交差点を直進し、さらに50mほど進むと上空に「ゆりかもめ」の高架が横ぎります。ここが国道130号の“起点”です。

 道はその先で右にカーブし、新日の出橋を渡り、レインボーブリッジのたもとがある芝浦ふ頭方面へ続いています。国道130号起点があまりに中途半端なため一度は通り過ぎてしまいましたが、あとで来ると、確かに道路へ起点標が埋め込まれていました。

 このような不思議な国道が、なぜ誕生したのでしょうか。

起点は「東京港」昔は中途半端じゃなかった?

 法令上の国道130号の起点は「東京港」とされています。この路線は、いわゆる「港国道」のひとつ。国の重要港湾や飛行場と主要国道を結ぶ国道を指し、路線距離が短いものが多いことで知られます。ちなみに、全長187mで“日本一短い国道”の174号も、「神戸港」と国道2号を結ぶ路線です。国道130号は日本で3番目に短い路線とされます。

 その「東京港」とされる起点が、先ほどのゆりかもめ高架下の中途半端なポイントなのはなぜか、歴史を振り返ると理由が見えてきました。

 この起点があるのは日の出地区で、橋を渡った芝浦ふ頭とともに、東京港でも早い時期にできた埋立地のひとつです。かつては汐留駅(初代の新橋駅)から南へ、日の出・芝浦両地区を縦貫するように、貨物線が延びていました。2本並行していた貨物線のうちの山側ルートを、現在、ゆりかもめの高架が通っています。

 つまり国道130号の起点は、かつて貨物線が横ぎっていたところに置かれています。国道制定当時、ここから海側は芝浦貨物駅となっていました。国道130号は、港の貨物施設と国道15号を直結していたのです。


国道130号の起点はゆりかもめの高架下(乗りものニュース編集部撮影)。

 それから首都高ができ、同じころに貨物駅は芝浦ふ頭へ移転。しかし1985(昭和60)年に駅も貨物線も廃止され、1995(平成7)年には貨物線跡にゆりかもめが開業しています。

 いまは日の出の旧貨物ヤードから芝浦側へ向かう道路橋(新日の出橋)もでき、一帯の風景は大きく変わりました。しかしながら、水路や線路が複雑に張り巡らされた周辺一帯で、第一京浜へ出ようとする場合、国道130号が最も短く簡単なルートであることは、変わっていないのかもしれません。