利用者減や人手不足を背景に、増え続けている「無人駅」。それを別の機能を持つ施設に生まれ変わらせ、外から人が集まるようになった進化系も続々登場しています。無人駅を“化けさせる”会社に話を聞きました。

増える無人駅は価値ナシか?

 国土交通省によると、2020年3月時点での無人駅の数は4564駅。これは、全国全駅の約48%にあたります。最近ではローカル線だけでなく、東海道本線や山陽本線などでも無人駅を目にするように。背景にはコロナ禍で加速した利用客の減少や人手不足もあいまって、無人駅はさらに増え続けています。
 
 その一方、多種多様な“進化”を遂げた無人駅も、各地に続々登場しています。いま流行りのグランピング施設に進化したり、ものづくりの拠点に進化したり――ベーカリーカフェやコワーキングスペースを設置する無人駅なども登場しています。


土合駅のきっぷ売場を改築したカフェ「mogura」(画像:JR東日本高崎支社)。

 そこで今回は、こうした無人駅を活用した新サービスを手掛けているJR東日本スタートアップに話を聞きました。

 JR東日本スタートアップは、ベンチャー企業やスタートアップ企業とJRのインフラを掛け合わせて、何か面白いこと、新しい事業を作り出していくのを仕事としている会社です。先述のグランピング施設だと、“秘境”を活かしたグランピング施設を多数展開しているVILLAGE INC.から声をかけられたのがきっかけだったそうです。

 この無人駅は上越線の土合駅(群馬県みなかみ町)で、もともと、地下ホームから地上の改札口までの階段が異様に長い“日本一のモグラ駅”として鉄道ファンには有名な駅でした。その駅舎は現在カフェになっているほか、駅の周りにはインスタントハウスというテントのようなものがいくつか作られ、サウナファンにはうれしい野外サウナもあります。電車を眺めながら宿泊という非日常感を体験できるゲストルームもあり、キャンプ好きだけでなく、鉄道ファンにもたまらない施設になっています。

「街なかより駅にあった方がいい」

 金属加工の町としても有名な新潟県の燕三条エリアでは、無人駅のJR帯織駅(三条市)が「エキラボ」という地元工場の若手経営者らによるものづくり拠点に進化しています。

 エキラボは、無人駅に併設された施設ですが、建物内にはレーザー加工や切削加工ができる工作機などが置かれ、こんな金属加工をしてみたい、こんなものを作りたいといったアイデアを持った人が訪れると、それを具現化してくれるような施設になっています。開業して2年、今では個人や企業など年間で約1500人が訪れ、地域産業の中核拠点になっているそうです。

 地域の人からは、街の中にこうした施設をポツンと作るよりか、駅にあった方がシンボリックな存在にしやすいという意見もあるとのこと。JR東日本スタートアップの担当者も無人駅の可能性を感じているとのことでした。


「エキラボ」を併設した帯織駅(画像:JR東日本スタートアップ)。

 同社はこの他、エビの養殖のある駅(常磐線 浪江)や郵便局と一体化した駅(内房線 江見)など7つの無人駅を手掛けていますが、それ以外にも進化した無人駅は続々登場しています。昨今、“道の駅”が人気ですが、これからは進化した“無人駅”も人気スポットになっていくのではないでしょうか。