Appleが2月3日に発売した「HomePod」(第2世代)を使ってみました。筆者は、すでに自宅で2台の「HomePod mini」を運用していたので、ミニの既存ユーザーという視点で、この新しいHomePod(第2世代)の気になる部分について、いろいろとチェックしながら考えてみました。

第2世代のHomePod(左)とHomePod mini(右)。実売価格は、第2世代のHomePodが44,800円、HomePod miniが14,800円

まず「HomePod」に対する心境の変化について

そもそも、2019年に日本で初代のHomePod(第1世代)が発売されたとき、当時の筆者の感想は「高くて買えないなぁ」でした。当時の価格は1台で35,424円。もちろん、決して手が届かない金額ではありません。

しかし、当時は2017年に完全ワイヤレスイヤホンの「AirPods」(エアポッズ)が登場して、その使い勝手にすっかり慣れていた頃でした。市場でも完全ワイヤレスイヤホンが盛り上がっていて、家電量販店には完全ワイヤレスイヤホンのコーナーが増設されていた記憶があります。個人的にも、音楽はワイヤレスイヤホンで聴く頻度が高かった記憶があります。

一方、スマートスピーカー市場では、AmazonやGoogle、LINEなどが競合製品をすでに展開していたので、音声アシスタント用途で新規デバイスはさほど欲しいとは思えない状況……。そんなこんなで、HomePodに対して食指が動くことはありませんでした。

そんな思考に変化があったのが、2020年に「HomePod mini」が発売されたタイミング。当時はパンデミック下での外出自粛ムード真っ只中でしたから、“在宅で”音楽をかけるのに良さそう、とHomePod miniの購入を決断。当時1台11,800円程度でしたので、2台買ってもHomePod(第1世代)より安かったのです。本体もかなりコンパクトですから、コンセントさえあれば本棚のちょっとした空きスペースでも設置しやすい――とウキウキで購入しました。

筆者宅ではHomePod miniを、本棚のちょっとした空きスペースや、出窓などに置いている

その後は、すぐにHomePod miniのある生活に慣れました。自宅では「Apple Music」や「Spotify」のBGMが流れていることが自然。賃貸の住まいでも、HomePod miniならボリュームさえ調整すれば、周囲の迷惑になる心配もそこまでありませんでした。

こうした経緯もあって、HomePod(第2世代)が出たときに改めて気になったのです。「あれ、もしかしてHomePod(第2世代)を追加したら、いまよりももっと良い音に囲まれて幸せになれるのでは?」と。

HomePod miniとHomePod(第2世代)の音質の差は歴然!

手元に届いたHomePod(第2世代)をセットして楽曲を再生したとき、その体験はHomePod miniのそれと大きく異なることがすぐに分かりました。とにかく音が良いのです。もちろん、中〜高音域については、HomePod miniも健闘していますが、低音域はHomePod(第2世代)の圧勝。

HomePod(第2世代)の方が低音が圧倒的に良い。一方、使い勝手はminiとほぼ共通

重低音が好きという人ならば、例えばApple Musicで「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」の「ハイヤー・グラウンド(Remasterd 2003)」を再生したり、「ずっと真夜中でいいのに。」の「残機」などを再生してみると、スラップ奏法のベースが響いて幸せになれます。また、筆者は普段、作業用BGMとしてジャズのプレイリストをかけていることが多いのですが、ウッドベースが鳴る曲になるとたまりませんし、ドラムのキックの音もより臨場感を伴って聴こえました。

そして、HomePod(第2世代)が生み出す音場にしばらく慣れたあと、HomePod miniだけの再生に戻してみると、シャカシャカと中〜高音域だけが響く空間にどこか物足りなさを覚えてしまいました……。

使い勝手の面については、HomePod miniとHomePod(第2世代)の操作性がほぼ共通していることが嬉しいポイントでした。ミニに慣れた筆者にとって、まったく違うデバイスではなく、単に音質の良い上位互換機という感覚で導入できたからです。新たに覚える必要の操作はありませんでした。

ところで、HomePod(第2世代)を使って、それなりの音質・音圧で楽曲を楽しもうとすると、音量はなかなか大きくなりがちです。筆者の自宅でも、隣の部屋までBGMがはっきり聴こえました。木造の賃貸だと、音量によってはご近所にも音が届いてしまいそうですので、再生時は音量をしっかり調整する必要がありました。壁の薄い賃貸などでは、近所迷惑になるかもしれません。

「なるべく小さい音で楽曲を楽しめたら……」と考えている人もいるかもしれませんが、その場合には、HomePod(第2世代)を購入するよりは、AirPodsなどの良いイヤホンやヘッドホンを購入した方が良いと思います。あくまでも、一軒家のように音を出しやすい環境でこそ、真価を発揮するデバイスですね。

HomePod miniとHomePod(第2世代)は一緒に使えるのか?

もろもろの使用感を踏まえ、「HomePod(第2世代)をウーファー役として据えて、すでに手元にあるHomePod miniを中〜高音域で鳴らせれた良いのでは?」という考えが思い付きました。結論からいうと、HomePod(第2世代)とHomePod miniの同時再生は可能でした。

HomePod(第2世代)とHomePod miniから同時に音を出すことは可能だった

15畳ほどのリビングで、HomePod(第2世代)とHomePod miniをペアとして楽曲を再生してみました。厳密な意味で、Appleの定義する「ステレオペア」になっているのかは分かりませんが、2台のスピーカーで遅延なく楽曲を再生でき、音質としても満足できました。もちろん、HomePodを2台購入して並べる方がベターだとは思いますが、既存のミニユーザーとしては、手元のデバイスを有効活用しながらの追加導入も、コストパフォーマンスの良い選択だと感じました。

(※Appleの公式ヘルプページでは、「同じ部屋にある2台のHomePod mini、2台のHomePod(第1世代)、または2台のHomePod(第2世代)のスピーカーをペアリングして左右のチャンネルにすることで、臨場感あふれるサウンド空間を作り出すことができます」と記載されています。導入時には自己責任で判断してください)

ちなみに、HomePod(第2世代)の製品紹介などでは、Siriの活用についてアピールされている部分も多いですが、既存のミニユーザーにとっては、Siri用途ではHomePod miniがあれば十分だと感じました。要するに、HomePodを導入しても、単にSiriを使えるデバイスが1台増えるような感覚です。もちろん、余ったHomePod miniを別の部屋に配置すれば、インターコム機能で自宅内での内線連絡が行いやすくなったり、連携しておいたスマート家電のコントロールが行いやすくなったりするメリットはあります。

Siriは確かに便利だけれど、HomePod(第2世代)ならでは、という感動はあまりなかった。筆者宅ではすでにスマート家電連携もしているが、それはHomePod miniやiPhoneなどのAppleデバイスを使って十分な使用環境を整えられている。HomePod(第2世代)も、その延長上にスムーズに導入できて良い

「テレビの音」を出すには準備が必要

重低音のある暮らしが想像以上に良かったので、次第にHomePod(第2世代)をテレビの近くに設置してホームシアターのように活用できたら良いのに、とも思うようになりました。Apple TVシリーズと連携して一部サービスの音響を再生できるのは分かっているのですが、テレビに接続して、地上波やレコーダーから出力した動画、家庭用ゲーム機などからの音声を再生できるのか、というのは気になってくるところです。

備わっているのは電源ケーブル(着脱可能)だけ。また、Apple機器との連携を除き、純粋なBluetoothスピーカーとしては機能しないようです。Apple TVがなければ、テレビの脇に設置してもちょっと活かしづらい……

調べてみると、一応「Apple TV 4K(第2/3世代)」が手元にあり、ARC/eARC対応のHDMIで接続できていれば、テレビの音の出力先としてHomePodを指定することはできるようでした。

ただし、(1)Apple TV 4Kを購入する費用(19,800円〜)がかかる、(2)ARC/eARC対応のテレビが必要になる、(3)対応ケーブルが必要になる、(4)設定手順が煩雑、(5)挙動(外部機器接続時の遅延など)の情報が少ない――という5段階のハードルがあったため、筆者は今回のレビューでは検証を諦めました(筆者宅にはApple TVがなく、テレビも古いので、ちょっと予算オーバー……)。

ARC/eARC接続についての説明

ちなみに、HomePodのARC/eARC接続については、Appleの公式ヘルプページ「Apple TV 4K で HDMI ARC または eARC を使う」に記載がありますので、挑戦してみたい方はこちらをご一読のうえご検討ください。

まとめ

今回実機を検証してみて、HomePod miniユーザーにとって、HomePod(第2世代)は、音質をアップグレードするのに最適なデバイスだと思いました。ただし、価格は44,800円。もし2台買うとなると計89,600円ですので、手を出すのに勢いはいります。とはいえ、低音域の体験は確実に良くなるので、1台を購入して、手持ちのHomePod miniと組み合わせるという運用でも検討する価値はありそうです。

一方、Siri関連機能を目当てに購入したり、テレビと連携させて音声を出力したりといった特殊な目的がある場合には、「必要なのは本当にHomePod(第2世代)なのか?」と一度立ち止まって確認した方がよいでしょう。Siri用途が目的ならば、HomePod miniを追加すれば十分ですし、言ってしまえばiPhoneやiPadでも代用可能です。また、テレビの音を良い音で聴きたいならば、室内のレイアウトが許す限り、素直に有線でスピーカー類を接続した方が安定した運用が期待できるでしょう。

HomePod(第2世代)は、あくまでもApple MusicやSpotifyなどでの楽曲再生に慣れた人が室内のスピーカーで重低音の効いた音響を体験したい場合や、 Apple TVを導入して映画などを楽しもうと思っている場合(あるいはすでに導入済みの場合)にオススメしやすいデバイスだと思います。