元K-1王者久保優太が不動産業者を激詰め「祖父は住む場所を失うところだった」“悪質リースバック契約”の実態とは
認知症祖父をハメた怒りを訴える久保優太
「許せませんよ。祖父が住む場所を失うところでしたから」
このように憤るのは、元K-1ウェルター級世界王者で、現在はRIZINに参戦する格闘家、久保優太(35)だ。1月13日、88歳の祖父が悪徳不動産会社に“ハメられた”という。
「中野のマンションに独りで暮らす祖父は、要介護1と認定される認知症患者です。近所に住む母と叔母が、ほぼ毎日通って介護をしていたのですが、ほんの数時間目を離したすきに、ある不動産契約を結ばされてしまったんです」
契約が発覚したのは、その3日後だった。久保の母が、家の中から謎の“大金”と契約書を発見したのだ。
「母から何度も着信があって、『お爺ちゃんが家を売らされちゃった!』と。慌てて祖父の家に駆けつけ、母が見つけた契約書をよく読むと、祖父は相場よりはるかに安い2千万円で自宅を売却する契約を結ばされ、すでに手付金として30万円を受け取っていたことがわかりました」
久保の祖父の自宅は、駅から徒歩5分の2LDK。築年数は古いものの、相場では3千万円の価値はあったという。
「物件引渡日は、わずか2週間後の1月27日。さらに『売主は、引渡後、家賃月額16万円の賃貸契約を結ぶ』という特約がつけられていました。家は売却するものの、その後も同じ家に住み続けたいという人が利用する『リースバック』という契約です。現金が必要なわけでもない祖父にはまったく必要ない契約です」
しかも、解約できるのは、たったの3日間だけと契約書には書かれていた。久保が気づいたその日が、期限の当日だった。
「不動産会社の営業マンは、祖父に名刺すら渡しておらず、契約書にあるのは会社の住所だけ。4日め以後に契約を解除する場合は、売買代金の20%である400万円と、元の手付金の倍額60万円、合計で460万円を不動産会社に支払うという内容でした。期限内でも、解約する場合、手付金の倍額を払う必要があります。つまり、どう転んでも向こうは損をしない悪質な契約です。すぐに、消費生活センターに相談しましたよ」
すると、久保の祖父と同じように「リースバック」について被害相談が多く寄せられていると言われたという。
「しかし、こんな詐欺みたいなやり方で契約を結ばせたにもかかわらず、現行法では違法性を問えず、取り締まる手立てがないそうです。並行して相談した弁護士も『あとから裁判で認知症を理由に契約解除を求めるのは大変。今すぐ業者を呼び出すしかない』と言うんです。たまたま、隣に住むご夫婦も同じ業者から営業電話を受けていたとわかり、その電話番号から叔母が業者を“おびき出す”ことに成功しました」
やってきたのは、不動産業者の支店長代理と名乗る40代の男だった。久保の“激詰め”に手が震えていたという。
「冷静に人の道を説いただけですよ(笑)。懇々と話したら『自分の両親が同じようなことをされたら心配だ』と言っていましたし、その場で実際に契約を結んだ担当者に電話をさせたら、祖父が当日『何度も同じ話をしていた』と、認知症に気がついていたことをほぼ認めました。業者は完全に降参し、白紙解約することができました。この件をSNSで報告したら、同じような被害に遭い、泣き寝入りしているご家族がけっこういるようです。参考にしてもらうため、不動産業者との“対決”の一部始終を僕のYouTubeで公開する予定です」
消費者問題に詳しい、金田万作弁護士に話を聞いた。
「リースバックの被害相談は、何度も受けています。認知症の方だけでなく、経済的に困窮していたり、老後の生活に不安を持つ方が、目先のお金ほしさに口車に乗せられて、自宅を売ってしまうケースが多いです。一時的に現金が手に入り、賃料を払えば住み続けることができる、というメリットはあります。ただ、売却価格は相場より安いのに、支払う賃料は相場より高い場合が多く、いずれ賃料を払えなくなります。長い目で見れば絶対に損です」
だが、やはり久保の祖父が結んだ契約書自体には違法性はないという。
「手付解除期間が3日というのは確かに短いですが、これをもって違法とはいえません。宅建業法では、業者が売主となる自宅等での不動産売買について、買主側は8日間であればクーリングオフができる制度があります。しかし、これはあくまで“消費者(購入者)”を保護するもの。“売り手”は保護されづらく、非常に難しい問題なんです」
高齢の両親を持つ本誌読者にとっても、他人事ではないこのケース。どのような事前対策を取ればいいのだろうか。
「親に『知らない人は家に入れないよう』伝えることはもちろんですが、だいたいこの手の業者は、最初に電話営業をかけてきます。通話を録音できて、相手方に『この通話は録音しています』と伝えるものに自宅電話を切り替えましょう。これだけで、業者はかなり嫌がります。親の判断能力が著しく低下している場合は、成年後見制度の準備も視野に入れてください」(同前)
最悪の事態こそ免れたものの不安が残るため、久保の祖父は母と同居することにした。
「僕の肩書は“闘う投資家”なのですが、株式投資を教えてくれたのは祖父なんです。祖父は新卒から定年までずっと証券会社で働いていた人。それでも高齢になればこうして騙されてしまう…。どうか気をつけてください」
今すぐ実家の電話をチェックすべし!