北海道は広く、北に位置しているため、ほかの地域では見られない動物がたくさんいます。冬に見つけやすい「山啄木鳥」もそのひとつ。さて、どんな動物だと思いますか?

「山啄木鳥」なんて読む?

「山啄木鳥」は、日本では主に北海道に生息しています。名前にもあるように、山で暮らしている鳥です。繁殖期には鳴きますが、鳴き声が聞こえない時期もあるので、実際に見かけたことがある人は少ないかもしれません。木につかまり、つつく姿が特徴的です。さて、どの鳥かわかりましたか?

出典: momohana / PIXTA(ピクスタ)

正解は「ヤマゲラ」

「山啄木鳥」は「ヤマゲラ」と読みます。体長は30cmほど。全身は淡い緑色で、背面だけが濃いオリーブグリーンという見た目をしています。北海道のほぼ全域にいますが、生息しているのは山地の森林。冬はエサが減るので平地までやってくることもあります。住宅地にもいて、自然が多い公園などで見られることもあるようですよ。ごくまれに本州の北部でも確認されているのだとか。

「啄木鳥」っていう字は見たことがあるような…

出典: yasu / PIXTA(ピクスタ)

「山啄木鳥」という漢字を見て、「啄木鳥」という字の並びを見たことがあるような……と思った方もいませんか。そう、「キツツキ」を漢字で書くと「啄木鳥」となります。ヤマゲラはキツツキ目キツツキ科の鳥で、キツツキと同じように、木につかまってくちばしでつつく“ドラミング”を行うのが特徴です。ちなみにキツツキ類の鳥の尾は、ドラミング中に体を支えるためとてもかたくできています。

出典: momohana / PIXTA(ピクスタ)

なぜ「ヤマキツツキ」ではなく「ヤマゲラ」と読むのかというと、キツツキの古名が「ケラツツキ」ということからきているそう。“ケラ”は虫の一種で、オケラなどが有名です。つついてケラを捕るので「ケラツツキ」となり、略されて「ケラ」に。「啄木鳥」と書いて「ケラ」と読むようになり、「山啄木鳥」は「ヤマゲラ」と読むようになったと考えられています。

本州にいる「アオゲラ」にそっくり

出典: C7 / PIXTA(ピクスタ)

本州には「アオゲラ」という鳥がいて、ヤマゲラと色や体つきが似ています。アオゲラもヤマゲラと同じ、キツツキ目キツツキ科。違いは模様で、ヤマゲラも羽根の一部にまだら模様がありますが、アオゲラには体の下側に全体的にまだら模様があります。

また鳴き声も違いのひとつ。アオゲラは繁殖期に「ピョー」と強い声で鳴きます。一方、ヤマゲラは「ピョー」と鳴くものの尻下がり。似ていますが違う鳥なのです。

アイヌ文化に「ヤマゲラ」の逸話あり

出典: kata716 / PIXTA(ピクスタ)

ヤマゲラはアイヌ語で「ウェニウコキ」といいます。「アイヌ民族博物館」の採録資料には、ヤマゲラが出てくる逸話も。親のいうことを聞かない子どもが神様からの罰でヤマゲラにされてしまい、水場で水を飲むことを許されなくなったという内容です。ヤマゲラは古くから北海道で共生している動物だということがおわかりいただけるでしょう。

北海道の歴史とともに歩んできたヤマゲラ。真っ白な雪景色になる冬は緑色の姿を見つけやすいかもしれません。ドラミングしているところなどを見かけたら、ぜひ観察してみてくださいね。

【参考】大沼国定公園情報発信システム運営協議会、山階鳥学誌、西岡公園、国土交通省、北海道、日本野鳥の会、アイヌ民族博物館

【画像】momohana、yasu、C7、kata716 / PIXTA(ピクスタ)