〈狛江90歳強盗殺人〉「瞬時に“殺されてしまった”とわかりました」「生き返ってくれよ、悪かったな…」被害者の長男が明かした非道な犯罪現場…

「ルフィ」と名乗る首魁が、SNSで集めた「手駒」を駆使して、全国で押し込み強盗を繰り返してきた一連の事件。惨殺された被害者、東京都狛江市の大塩衣与さん(90)の長男が取材に応じ、非道な犯罪の詳細を語った。

「思い出したくはないが…」被害者長男が語る事件当日の様子

「おふくろだから、悲しいし、悔しいし、寂しいし、頭にくる……。無意識に涙が出てくる」

殺害された大塩衣与さん

事件で殺された大塩衣与さんの長男(60代)はそう声を絞り出し、「思い出したくはないが……」と、19日に起こった事件の詳細と衣与さんについて語った。

「守れなくてごめんごめんという気持ち」

――19日の事件当日の経緯について教えてください。

「調布署から携帯電話に『千葉県警に検挙された人間のスマホにお宅の住所があったので伺いました』という連絡がありました。午後5時ぐらいに自宅に着くと警察官が待機していたので一緒に家に入りました。

すると玄関からぐちゃぐちゃで、地下に降りるとおふくろが倒れているのが目に入った。警官に『もうこれ以上は』と制されたので、2メートルぐらいの距離から遠目だったけど、瞬時に『殺されてしまった』とわかりました。報道されているとおり、体の前で両手首を結束バンドで縛られ、右半身を下にして倒れていました。

入口から地下まで部屋中ボロボロに荒らされていた。おふくろは現金や宝飾品が家のどこにあるのか知らないから、『どこにあるんだ』とぶっ飛ばされて、やられてしまったんだと思う。家の中に掛けてあった絵画は全部剥がされて散乱して、タンスの引き出しもあちこち引っかき回されていた。時計を2本盗られていた。ダイヤモンドは妻が盗られたと勘違いしていたみたいだが、奥にしまったままであった。現金はこの家にはない。おふくろは生活保護を受けていたぐらいだし……」

――警察署で対面したときの衣与さんのご様子は?

「警察署で対面したおふくろは、苦しそうな顔で寝ているような感じで『生き返ってくれよ。悪かったな、ごめんな』と心の中で伝えました。もしこんな家の造りじゃなかったら、死なずに済んだかもしれない。だから、守れなくてごめんという気持ちです」

狛江で起きた強盗殺人の事件現場

――衣与さんについて教えてください。

「おふくろは静岡県沼津市の理髪店で8人きょうだいの長女として生まれ、同郷の父と一緒になり東京に出てきた。父は寿司職人として修行をし、金を貯めて独立、営業を軌道に乗せると4店舗を経営するまでになった。それを苦労して支えたのが母。

父が62歳で亡くなったころは沼津にいておふくろが面倒を見ていたので、『東京に来いよ、一緒に暮らそう』と声をかけたんだけど『あと2年ぐらいはこっちで頑張るよ』と断られた。

そのうち『寂しくなったから、そっち行くよ』と都内で賃貸を借りて住むようになり、4年半ぐらい前から現在の家で同居するようになった。おふくろもこの場所を気に入っていたし、幸せそうだった。孫である(私の)息子や娘が帰ってくると、とても喜んでいました。

年をとって足は引きずるようになっていたけど、元気で、バスに乗ってスーパーに買い物に行き、自分の食事も自分で作っていた。元気だけど90歳のおばあちゃんなら一発蹴られただけでも死んでしまう。痛かっただろうし、辛かっただろう……」

「ルフィ」を含む4名の日本人に対して逮捕状を取得

衣与さんが犠牲になった狛江の事件は、12日に千葉県大網白里市のリサイクルショップで起きた強盗傷害事件の容疑者(13日に自首)のスマホを千葉県警が解析した結果、計画が判明。事件当日の19日午後2時45分頃に千葉県警が警視庁調布署に連絡していた。

強盗被害にあった千葉県大網白里市のリサイクルショップ

同署員が衣与さんの長男の立ち会いで事件現場に踏み込んだのは午後5時過ぎ。その日、衣与さんは午前10時半頃に自宅前を歩いているのを近所の人が見ており、防犯カメラの映像などから同11時頃に帰宅していた。

司法解剖の結果、衣与さんの死亡推定時刻は正午頃とみられるが、現場付近の防犯カメラには午後1時頃、不審なレンタカーが走り去る様子が映っていた。これに加え、走り去るレンタカーと同じ名義で借りられていたもう1台のレンタカーが、事件後に近くのコインパーキングに停まっていたことがわかり、警視庁がこれを押収して詳しく調べている。

「千葉県警がスマホの解析に成功してから警視庁に連絡するまでのタイムラグも含めて、都県境をまたいだ情報伝達と現場出動が迅速に行われたかは定かでない。現場で緊急逮捕できた東京都中野区の強盗傷害事件の例もあるように、事件発生の一刻も早い認知が重要なのは言うまでもない。

また、一連の強盗事件は県をまたいでおり他県警との連携が必要だが、警察の体制は縦割り、しかも県警ごとに縄張り意識が強く、全ての情報共有は難しい」(社会部記者)

こうした指摘もあってか警察庁は27日、14都府県警の幹部を集めて大規模な捜査会議をおこない、警察庁の渡辺国佳刑事局長は「警察捜査の真価が問われると言っても過言ではない」「関係警察が一丸となって強力な捜査を推進してもらいたい」と語った。

警察庁

「警視庁はすでに『ルフィ』を含む4名の日本人に対して別件の容疑で逮捕状を取得しており、身柄の移送を求めているが、国と国をまたぐと時間もかかる。『ルフィ』は“ワタナベ ユウキ”という人物。同じ一味と思われる“イマムラ キヨト”という同世代の男も収容されており、どちらも北国育ちで過去に犯罪歴がある。暴力団や半グレとの関係が深いとみられている」(社会部記者)

悲しみがこれ以上連鎖しないためにも、一刻も早い首魁の逮捕を願う。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班