後続車びっくり バス等で「左折時 一旦停止」相次ぎ導入 追突の危険性あっても必要な理由
バスやトラックで、左折中に横断歩道の手前で一旦停止を徹底し、車体のステッカーなどで注意喚起する会社が増えています。追突される危険性もあることから、現場でも意見が別れるようですが、背景には、道路環境の変化がありました。
「ちょくちょく止まる」路線バスで感じた違和感
2022年のある日、東京都内の路線バスに乗っていたところ、ちょっとした違和感に気づきました。「このバス、ちょくちょく停まるな」――交差点を左折するたびに、歩行者がいないであろう場合でも、横断歩道の前で一旦停止していたのです。
この動き、状況によっては、後続車に追突される可能性があります。しかしながら、実はこの「左折時の一旦停止」を徹底するケースが、いまバスやトラックの会社で増えているのです。
ジェイアールバス関東の車両。後方に「左折時 一旦停止します」ステッカーをつけるようになった(画像:ジェイアールバス関東)。
たとえば2022年12月から、ジェイアールバス関東が車体後部に「左折時 一旦停止します」との注意喚起ステッカーを取り付けました。なお、ジェイアールバス東北は前年から同様の取り組みを実施しており、ステッカーは同じものが採用されています。
「バス車両等の大型車は車両の特性上死角が発生しやすいため、左折時に一旦停止を行い、歩行車や自転車等の安全を確保・確認することを目的としています」
ジェイアールバス関東はウェブサイトでこう説明しています。確かにバスなどの大型車では、特に左後輪周辺の死角が大きく、最新のバスでは左側方の巻き込み防止に特化したカメラやセンサー技術も搭載されているほどです。
「これまでも指導上は、安全を担保するために歩行者がいたら一旦停止、いなくても最徐行で進めとしていました」と、ジェイアールバス関東の担当者は話します。また、「一時停止あるいは最徐行すれば、万一事故が発生した際の被害が軽減できる」とも。
前出した路線バスで感じた「ちょちょく停まる」という違和感を話すと、今後は同社のバスでも「そう感じるようになるかもしれない」とのことでした。
同様の取り組みは、全国的に行われてはいるものの、東京の路線バスでは、全ての会社、全てのバスが行っているわけではありません。だからこそ違和感を覚えたわけですが、「左折時の一旦停止」、なぜいま改めて徹底する必要があるのでしょうか。
いま、左折時の一旦停止をアピールする必要性
ジェイアールバス関東によると、やはり、一旦停止によって後続車が追突する危険性があることから、もちろん「絶対に止まれ」というわけではないといいます。たとえば、「歩道がない交差点や、左折矢印信号などでは8km/hの最徐行で進みます」とのこと。
そうした状況から、車体にステッカーを貼るなどのアピールはしていなかったそう。それを改めた理由として、「自転車が増え、危険運転も目立ってきた」という状況の変化を挙げました。
「たとえば左折矢印信号で進行しているときでも、自転車が膨らんできて、それを避けるために現実問題、停止せざるを得ない場合もあります」と話します。車体のステッカーは、同じ道路で並走する他の交通への「注意喚起の意味合いが大きい」ということです。
このようにステッカーを貼って車外にアピールし、左折時の一旦停止を徹底することには、社内でも議論があったといいます。また、別の路線バスの会社も、この動作に対して一般ドライバーから問い合わせをもらうことも確かにある、と話していました。
路線バスの例(乗りものニュース編集部撮影)。
地域によっては、ほとんどのバスが左折時に一旦停止しているため、この動作が広く知られているところもあるようですが、認識に差はありそうです。しかしながら、後日クルマを運転していると、前を走る一般車(コンパクトカー)がまさに、矢印信号で横断歩道を渡る人がいないにもかかわらず、ちょっと戸惑うくらいの徐行運転をしていました。大型車以外でも、実践している人はいるようです。